アダム・マッケイ監督の映画「バイス」を北九州市の映画館で観ました。
この映画は、アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞し、ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞などを受賞しました。
ディック・チェイニーを演じた主演のクリスチャン・ベールは、約半世紀に渡る彼を演じました。体重を20キロ増やして、副大統領時代のチェイニーを演じました。クリスチャンの演技は、チェイニーそのものでした。
映画は、まず、青年チェイニーを描きます。飲酒運転で逮捕されるなどすさんだ青年時代を過ごすチェイニーは、恋人リンの支えで立ち直り、政界への道を志します。当時、下院議員だったドナルド・ラムズフェルドのもとで政治の表と裏を学びます。
映画は、ジョージ・ブッシュが大統領になり、チェイニーが副大統領になってからを描きます。
2001年9月11日、同時多発テロがアメリカを襲います。
チェイニーは、ブッシュ大統領の耳元で「大統領はあなただ。戦争の決断はあなたが下す。権力を握っているのはあなたひとりです」とつぶやき、大統領は、イラク侵攻を決断します。
近現代のアメリカ政治の結節点をこのような映画につくり上げた、アダム・マッケイ監督を始め、スタッフの皆さんの力に敬意を表します。
今、ナオミ・クラインの「NOでは足りない トランプ・ショックに対処する方法」を読んでいます。
この本の冒頭に、「ディック・チェイニー」の名前が出てきます。
ナオミ・クラインは、トランプ政権とそれまでの政治を「むきだしの企業による政府乗っ取りであり、それには、何十年もの歳月がかかっている」と述べ、トランプ政権前のアメリカ政治は、仮面を着けていたとして次のように書いています。
「これまでのアメリカ政治においては、企業国家のホワイトハウスの代理人は何らかの仮面を着けていた。笑みを浮かべた俳優の顔をしたロナルド・レーガンしかり、似非カウボーイの顔をしたジョージ・W・ブッシュしかり(その後ろにしかめ面をして控えていたのはディック・チェイニー/ハリバートンだ)。だが、その仮面はもうない。それどころか誰も仮面を着けているフリすらしない。」
映画のパンフレットで政治学者の渡辺将人さんが「チェイニーは皮肉にも後継2代の政権の間接的な生みの親だ。『反動』の種を播いた主だ。」と書いています。
チェイニー副大統領が、今日に至るアメリカ政治の企業による乗っ取りを大きく加速させた張本人だという指摘は、この映画を観て大きく頷けます。
ナオミ・クラインは、トランプの首席戦略官で、第一線から外されたとみられるスティーヴ・バノンの言葉を次のように引用しています。
「トランプ政権がめざすのは『行政国家(国民とその権利を守ることを使命とする政府規制や政府機関という意味でバノンは使っている)を解体すること』である」
その上で、ナオミ・クラインは、「断固とした『ノー』には、大胆で前向きな『イエス』が伴わなければならない。」と述べています。
映画「バイス」は、トランプ政権に至るアメリカ政治を知る上で最良の素材を与えていると思います。
トランプ政治に「ノー」という根拠をこの映画は示していると思います。
その上で、大胆な前向きな「イエス」を考える材料をこの映画は示しているとも思いました。
アメリカ政治を知ることは日本政治を知ることに通じます。
トランプ政権に最も忠実な安倍政治を考える上でも最良の材料をこの映画は示していると思います。
映画「バイス」多くの方に観ていただきたい映画です。
そして、この映画を素材に大いに未来を語りたいと思います。
この映画を観られた感想をお聞かせ下さい。
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