山崎雅弘さんの「日本会議 戦前回帰への情念」(集英社新書)を読みました。
山崎さんは本書の趣旨について「日本会議とは、一体どんな団体なのか。彼らと安倍政権の関係は、どのようなものなのか。そして、安倍政権と日本会議は、この国をどこに導こうとしているのか。」を明らかにすることだと書いています。
私が本書で一番印象に残ったのは、第5章「日本会議はなぜ『日本国憲法』を憎むのか-改憲への情念」の内、「日本国憲法を『神道指令の恒久化』とみなす日本会議」という項です。
山崎さんは、日本会議の憲法観を理解するには「『神道指令』というキーワードを通して読み解けば、すべて氷解します。」と書いています。
1945年12月にGHQが発した「神道指令」について、神社新報社が1971年に出版した「神道指令と戦後の神道」にこう書かれています。
「この指令は、日本の神社制度の変革を命じただけでなく、制度とともに日本人の神道的国民意識そのものを決定的に変質させ、革命することを目的とするものであった。(中略)神道指令は、世界史上比類なき大戦と、その戦勝の威力によって強制されたものであって、その重圧の力は大きかった。この指令のために、洗脳された日本人の存在は、無視しがたい」
「占領軍が神道と国家を切り離すことによって、一方では神道をきびしく弾圧し、他方ではさらに天皇制を破壊もしくは骨抜きにして、日本をふたたび立ち上がれぬ弱小国に改造しようとしていることは明らかである」
この本では、日本国憲法をこのように批判しています。
「占領軍は、神道指令ののち、日本国憲法の制定を日本政府に強制したが、その第20条および第89条に『信教自由・政教分離』を柱とする宗教規定を揚げさせた。その条文には神道の語はないが、この規定によって神道指令の趣旨が完全に制度化され、国家神道の復活を抑制できる、と占領軍が考えていたことはまちがいない。この認識は、日本の憲法学者一般も同様で、すでに美濃部達吉『新憲法概論』や法学協会『註解日本国憲法』等々によって、第20条、第89条の宗教規定が神道指令を基礎に、その再認識として立法されたことが指摘されている」
山崎さんは「日本国憲法の条文に込められた『政教分離』の原則は、GHQの占領統治が終了した後も、先の神道指令の効果を永続的に日本社会に及ぼし、国家神道の復活を阻止しようとするアメリカ政府の『政治的策謀』であると、神社本庁は理解しています。言い換えれば、神社本庁やその流れを汲む日本会議などの政治勢力にとって、日本国憲法とは、日本を再び戦前・戦中と同様の価値観を持つ国家神道体制の国に戻せないよう頑強に巻き付けられた鎖とそれを留める『錠前』のような存在です。それを叩き壊さない限り、戦前・戦中の国家体制への回帰は、実現することができません。」と指摘しています。
安倍政権の閣僚の半数以上が日本会議と直接的に繋がる議員団体に属する政治状況の中、日本会議の主張を知ることは重要です。
日本会議の歴史観や憲法観を「神道指令」をキーワードに理解をするとの山崎さんの指摘は重要な意味を持つものだと感じました。
仏教を学ぶもののひとりとして「国家神道」についても引き続き学びたいと思いました。
山崎雅弘さんの著作は初めて読みましたが、俯瞰的な視点で現代社会を鋭く分析する点に感銘を受けました。
山崎さんの他の著作を読み、日本の進むべき道をこの夏考えたいと思っています。
皆さんは、安倍政治をどうお考えですか。お教え下さい。
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