10月2日の山口新聞は、新設時に環境アセスメントを義務付ける風力発電所の出力規模を改訂する閣議決定を行ったと次のように報じました。
「政府は、1日、新設時の環境影響評価(アセスメント)を義務付ける風力発電所の出力規模を『5万キロワット以上」に改正する政令を閣議決定した。現行の『1万キロワット以上』から緩和し、2050年までの脱炭素社会の実現に向けて風力発電の整備を促進するのが狙い。アセスが必要かどうか国の審査を義務付ける対象も『7500kW以上1万キロワット未満』から『3万7500キロワットから5万キロワット未満』とする。施行日は10月31日だが、経過措置として、着工が来年9月末までの事業で、出力が7500キロワット以上5万キロワット未満の場合、国の審査を義務付ける。要件緩和は、河野太郎規制改革担当相が主宰する特別チームが昨年、事業者側の要望を踏まえて求めていた。ただ現状では、騒音や景観悪化、生態系への影響を懸念し、国よりも厳しい要件で独自にアセスを課している自治体も少なくない。政令改正を受け、トラブルを避けようと独自アセスを課す自治体もあり、整備促進につながるかどうかは不透明だ。」
秋田魁新聞は、この問題について秋田県の状況を次のように報じました。
「本件では、政令の施行により、アセスの対象外となる出力1万キロワット以上5万キロワット未満の風力発電施設について、独自にアセスを義務付けることを検討している。県環境影響評価条例の施行規則を改正してアセスができるようにする予定。佐竹敬久知事は9月県議会の一般質問で『計画から事業開始までのすべての段階において、県民の不安や疑問に答えるように事業者に丁寧な説明を求めていく』と答弁した。」
山口県は現在、0.5万キロワット以上、1万キロワット未満の風力発電所に対して、アセスが必要かどうかの審査を義務付けています。
私は、環境生活部環境政策課に対し、国の政令改訂を受けて、山口県は風力発電所について、独自にどのようなアセスを義務付けようとしているのか照会しています。
回答が届き次第、本ブログで紹介したいと思います。
日本共産党は、森林破壊などを起こしている巨大な風力や太陽光発電所などは乱開発を規制し、環境アセスなどの法体系を強化すべきだと考えています。
先日、終了した総選挙時に掲げた、この問題での政策を紹介します。
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乱開発を規制するため、環境アセスメントなど法体系の強化と住民合意の義務化を
「気候危機打開のための2030戦略」でも強調したように、再生可能エネルギーの普及の大きな障害になっているのが、メガソーラーや大型風力発電のための乱開発が、森林破壊や土砂崩れ、住環境の悪化や健康被害の危険を広げていることです。目先の利益追求での乱開発・環境破壊を放置するなら、再生可能エネルギーへの大胆な転換を阻害し、気候危機も打開できなくなってしまいます。
それを打開するには、①環境を守る規制を強化し、乱開発をなくす②「新たな開発」ではなく、既存の施設・建築物・未利用地などの活用を推進する――という二つの方向での解決が必要です。
全国知事会の「21年度国の施策並びに予算に関する提案・要望」でも、「再生可能エネルギーの地域との共生」のために、「発電設備の設置に当たって、防災・環境上の懸念等をめぐり地域住民との関係が悪化するなど問題が全国的に生じていることから、事業計画の認定に際し、一定規模以上の発電設備を設置する事業者に対し、地域住民への事前説明とその結果の国への報告を義務付けるなどの法整備を図るとともに、地元自治体の意見を反映させる仕組みを早期に構築する」ように要求しています。
2016年のFIT法改正を受け、17年から条例を含む関係法令遵守をFIT事業認定の基準として規定し、違反した場合は認定を取り消すことも可能になりました。また、「事業計画策定ガイドライン」(以下、ガイドラインと表記)において、住民との適切なコミュニケーションを努力義務化しています。ところが、ガイドラインを遵守していない事業者も多く、「住民合意の義務化」が必要です。FIT事業の認定要件は省令で規定しており、ガイドラインを省令に格上げすれば、住民合意をはじめとした努力義務規定が「義務化」されることになります。
今年4月に成立した改正地球温暖化対策推進法の施行に向けて、改定マニュアルを策定し、周知を図ることになっています。改定法案の審議のなかで、日本共産党は、法案にある促進エリアに加えて、自然環境や生活環境を「保全するエリア」を指定する必要があると求めていました。また再エネ設備の設置によって、土砂災害や生活環境への影響が懸念されている各地域の実態をふまえ、地方議会でも国会でも、危険な地域や生活環境に影響がある地域などには再エネ設備は建設出来ないように規制するよう要求してきました。
再エネ設備の設置場所について、土砂災害の危険地域など除外している自治体の条例や、「地域の状況に応じた防災、環境保全、景観保全の観点から適切な土地の選定、開発計画策定に努める」という文言がガイドラインにあります。しかし、実際には、土砂災害防止法における開発規制では太陽光発電施設等の再エネ設備を対象に入れていないことや、保安林内で計画される場合も「再エネ事業としての手続のなかで検討される」として林野庁が規制する仕組みになっていません。住民の安全にかかわる問題として、関係する省庁が責任を明確に負うよう法制度を整備します。
規模が大きく環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業は環境影響評価(アセスメント)手続が義務付けられています。しかし、事業を分割して制度の対象外としてアセスメント手続を逃れる事業者もいます。政府は9月末、太陽光発電、風力発電所の環境アセスメント逃れに対応する「事業の一連性の考え方」について公表し、都道府県・政令指定都市と太陽光発電、風力発電の関係事業者に対し正式通知しました。事業者がアセス対象規模の事業を分割してアセス逃れしている実態を国会質問で取り上げた結果、梶山弘志経産相(当時)が「環境影響評価法の趣旨が十分に踏まえられるよう環境省と連携して議論を進めたい」と答弁したことを受けたものです(岩渕友参議院議員の5月31日の決算委員会質問)。同通知は広い敷地内の川で隔てられている場合や、風力発電など設備の距離がかなり離れていても事業が一体の場合があるなど管理の一体性を中心にみるとしています。
他方で風力発電の法対象規模要件が政令改正によって10月31日から、現行1万㎾以上から5万㎾以上へ引き上げられます。また環境省は、洋上風力発電の導入促進に向けて「導入が見込まれる海域において環境調査を実施し、取りまとめた情報をデータベースから事業者や地方公共団体に提供することで、現在設置が検討されている着床式洋上風力発電における環境影響評価の合理化・迅速化を図る」(4~6年程度かかる環境アセスの期間を1~2年短縮する)取り組みに着手するとしています。
太陽光発電施設の建築物や土地の区画形質の変更として扱うなど、きちんとした法的な位置づけを明らかにします。関連法令の整備や環境基準を制定で、環境アセスメントの手続きの中に組み込んでいくことが必要です。
森林法などの現行法は、森林を伐採してメガソーラー発電所をつくるなどの事態を想定していません。環境保全のための森林法改正、土砂崩れの危険性も評価事項に加えるなどアセスメントの改善が必要です。発電開始後も点検を行い、環境破壊や人体への悪影響がある場合には必要な是正措置をとらせます。
事業の立案および計画の段階から情報を公開し、事業者、自治体、地域住民、自然保護関係者、専門家など広く利害関係者を交え、その地域の環境保全と地域経済への貢献にふさわしいものとなるようにします。
風力発電も大規模化・集中化によって、騒音、低周波、シャドーフリッカー、基礎工事の巨大化による安全面や周辺環境への影響など、住民の不安・不満は高まっています。環境省は2017年に「風力発電施設から発生する騒音に関する指針」を作成しましたが、1基あたり出力2,000kWの風車を想定した調査をもとにしており、最近では1基4,000kW以上の出力の風力発電計画が増えているもとで、「指針」の見直しが必要です。とくに集中立地にともなう累積的影響を検討すべきです。
地域での乱開発を防ぐ手法として、環境保全を優先するエリア、風力発電の導入促進が可能なエリアに区分けするゾーニングの導入も有効であり、環境省はマニュアルを作成していますが、国として住民の健康・安全や環境保全を脅かす恐れがある地域への立地を規制することが、必要です。
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県内でも巨大な風力発電施設や太陽光発電施設の建設が目白押しです。
これらの問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
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