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なぜ過労死はなくならないのか 資本論から学ぶ

 NHKEテレ「100分de名著」で経済思想家の斎藤幸平さんを講師に、カールマルクス「資本論」を学んでいます。全4回シリーズが先日終了しました。
 今日は、第二回「なぜ過労死はなくならないのか」について私の感想を述べてみたいと思います。
 齋藤さんは「マルクスは、資本を絶えず価値を増やしながら自己増殖していく運動と捉えた。」と説明します。
 この運動を、マルクスは、「G-W-G`」という式で表しました。Gは貨幣。Wは商品です。G`は、最初のGに儲けが上乗せされたものです。
 G`が剰余価値であり、この剰余価値を生み出だしているのが、労働者の「労働」です。
 資本家は剰余価値を増やすために労働者の労働時間を延ばします。
 マルクスは、資本論の中で、女工メアリー・アン・ウォーリーの死亡を取り上げています。メアリーは、26時間休みなく働いて亡くなりました。
 齋藤さんは、今日の過労死を生む労働者の状況について次のように述べています。
 「労災の申請および認定件数をみると、今世紀に入って以降、鬱など精神疾患が、脳・心臓疾患を超えて増え続けています。マルクスが生きた時代より、労働者の権利に対する認識や労働環境は改善されているはずなのに、労働者に長時間労働を強いる圧力が萎えることはなく、今なお労働力という『富』の破壊が続いているのです。」
 1866年に開催された「国際労働者協会」のマルクスが起草した宣言に次の文書があります。
 「労働日の制限は、それなしには一切の解放の試みが失敗に終わらざるをえない先決条件であると、我々は宣言する。」
 齋藤さんは、マルクスが労働日の短縮を強調したことの意味を次のように解説しています。
 「マルクスが労働日の短縮を重視したのは、それが『富』を取り戻すことに直結するからです。日々の豊かな暮らしという『富』を守るには、自分たちの労働力を『商品』にしない、あるいは自分が持っている労働力のうち『商品』として売る領域を制限していかなければいけない。そのために一番手っ取り早く、かつ効果的なのが、賃上げではなく『労働日の制限』だというわけです(もちろん、労働日を短縮して給料が下がったら意味がないので、時給でみれば、賃上げを伴う時短になるわけすが)。」
 齋藤さんは、世界で労働時間を短縮しようとする動きとしてフィンランドを例に次のように述べています。
 「今、最も注目されているのが、フィンランドのサンナ・マリン首相が打ち出した、大胆な労働時短目標です。2019年、史上最少年で首相に就任したマリン氏は、以前から掲げていた『週休3日、1日6時間勤務』を、自身の任期中の目標とすることを表明しています。」
 斎藤さんは、第二回の講座の最後にこう指摘しています。
 「深刻化するブラック企業の問題を解決するには、それを個々の事件としてみるのではなく、その背景にある構造的な問題に踏み込んで、別の働き方の可能性を探求する必要があります。今回紹介した『労働日』をめぐるマルクスの洞察は、その大きなヒントになるはずです。」
 日本共産党が発行している「議会と自治体」1月号に、未来のためのエネルギー転換研究グループが作成した「原発ゼロ・エネルギー転換戦略」の概要が紹介されていました。
 この戦略は、2030年に石炭火力ゼロ、原発ゼロ、再生エネ電力44%を実現することなどを目標にしています。この政策を実現する中でCO²の排出量を2030年に1990年比55%減にし、雇用創出数を2030年までに約2千5百44万人、経済波及効果を2030年までに489兆円にすることを試算しています。
 別の働き方の可能性を求める動きは、別の社会を求める動きに直結します。
 日本での新しい社会と働き方の可能性を求めるこのような動きがあることに勇気が湧いてきます。この戦略をしっかり学んでいきたいと思います。
 引き続き、斎藤さんを講師とした「資本論」の第3回、第4回の感想も紹介していきたいと思います。

 斎藤さんを講師とした「資本論」の感想をお聞かせ下さい。

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