議員日誌

父と暮らせば

 井上ひさしさん原作の「父と暮らせば」を読み、黒木和雄監督の映画「父と暮らせば」を観ました。

 井上さんの戯曲「父と暮らせば」の冒頭には、「前口上」がありこう書かれています。

 「ヒロシマ、ナガサキの話をすると、『いつまでも被害者意識にとらわれていてはいけない。あのころの日本人はアジアにたいしては加害者でもあったのだから』と云う人たちがふえてきた。たしかに後半の意見は当たっている。アジア全域で日本人は加害者だった。しかし、前半の意見にたいしては、あくまで『否!』と言いつづける。あの二個の原子爆弾は、日本人の上に落されたばかりではなく、人間の存在全体に落されたものだと考えるからである。あのときの被爆者たちは、核の存在から逃げることのできない二十世紀後半の世界中の人間を代表して、地獄の火で焼かれたのだ。だから被害者意識からではなく、世界五十四億の人間の一人として、あの地獄を知っていながら、『知らないふり』をすることは、なににもまして罪深いことだと考えるから書くのである。」

 私がこの作品で一番印象に残ったのは、原爆で生き残った美津江が、友人の昭子の母から「なんであんたが生きとるん」「うちの子じゃのうて、あんた生きとるんはなんでですか」と怒鳴られたシーンです。

 そして、美津江は、父の竹蔵を救えなかったことを悔やみ続けます。

 「うちはおとったんを地獄よりひどい火の海に置き去りにして逃げた娘じゃ。そよな人間にしあわせになる資格はない。」

 昭子の母に言われた言葉や父を火の海の中に放置して逃げた自分を悔やみ続ける美津江。

 美津江は、そんな自分は幸せになる資格はないと木下さんの好意に背き続けます。

 心温まる井上やすしさんの戯曲。更に心温まる黒木和雄監督の映画でした。

 映画では、娘の宮沢りえの演技が素晴らしかった。

 父は、先日亡くなられた原田芳雄さん。はやり、いい俳優さんでした。

 井上さんのこの戯曲と黒木さんのこの映画は、後世に遺していくべき作品だと痛感しました。

 被爆者の苦しみを私たちに分かりやすく伝えてくれます。

 ヒロシマ、ナガサキを「知らないふり」をしないために、人間の存在全体に落された原子爆弾とは何かを伝えるために、これら作品を後世に遺していかなければならないと思いました。

 井上さん黒木さんすばらしい作品をありがとうございました。

 「父と暮らせば」に対する感想をお聞かせ下さい。

 

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