三浦綾子さんの「国を愛する心」を読んでいます。
三浦さんは、1999年に逝去されましたが、没後も様々な著作が出版されています。
その一つが本著で、今年の4月6日に発行されたばかりです。
この本の最初に、監修した「三浦綾子記念文学館」からこのような主旨が書かれてありました。
「戦争や平和、人権、教育など社会問題に関するエッセイを、単行本未収録のものを中心に厳選。太平洋戦争での侵略行為を伝える意味を考え、思想・表現の自由を脅かす法律や自衛隊の海外派兵に異を唱える一方で、原子力発電所の危険性を示唆し、差別に憤り真の教育について心を寄せ続ける。取り上げられたテーマの多くが今も解決されていないからこそ、言葉の数々が私たちの胸に突き刺さる。キリスト者の視線で語られる愛ある提言が、生きるヒントを与えてくれる。」
私は、20代のころから三浦綾子作品に魅せられ、多くの作品を読んできました。
没後、15年を越えて、三浦さんから今日的に意義あるテーマで提言をいただくことはとても価値あることだと感じます。
本書を読みながら、線を引いていると、線だらけになるほど、三浦さんの意見に全面的に賛同する私です。
表題である「国を愛する心」の中から引用します。
三浦さんは、戦争を振り返りこう語ります。
「私たち庶民派、戦争がある種の人々の儲ける手段であるなどとは、夢にも思わなかったのです。あの時、戦争はいけないと言った人があれば、その人こそ真の意味で愛国者であったのです。そうした人もほんの僅かながらいました。でもその人たちは、国のすることはいけないと言ったために、獄にとらわれ、拷問され、獄死さえしたのでした。真の愛国者は彼らだったのです。国のすることだから、何でもよしとするのは、国が大事なのではなく、自分が大事な人間のすることです。」
「政治的立場をこえ戦争の道に反対を」と三浦さんは語ります。
「自衛隊の海外派兵は反対です。これはあまりに当然のことですよ。戦争を放棄した日本の憲法はこういうときのためにあるはずです。この機会に憲法を『改正』しようとするなどはもってのほかです。私は、戦争がどうして起こるのか分かりませんけらども、正しい理由なんてないと思いますよ。こういう問題では、たとえ一歩でもしりぞいたら、そこがアリの一穴となり、どっと崩されていきます。それが怖いのです。ですから今、どなたも政治的な立場をこえて、反対の意思を示すべいだと思います。とくに女性は命をうみだし育てるものとして、戦争への道を許すわけにはいかないのですから。」
この文章は、日本共産党中央委員会「女性のひろば1986年12月号に掲載された三浦綾子さんの文章です。
三浦さんがお元気だったら、戦争法廃止の国民的運動の先頭に立っておられたことと思います。
戦争法が施行されて最初であり69回目の憲法記念日を向けた今、三浦さんの30年前の想いを読めたことに心躍らせています。
この本の最初に「剣によって滅ぶ」という文章が掲載されています。
その最後に、某新聞花壇にあったという短歌が「全世界の人に贈りたい」との三浦さんのメッセージとともに紹介されています。
「徴兵は命を賭けても阻むべし 祖母母おみな牢に満つるとも」
三浦さんのキリスト者として研ぎ澄まされた平和観に胸を打たれました。
三浦さん作品を改めて読み返したい、三浦さんの言葉で平和を考えたいと思いました。
三浦綾子さんの作品などに関する感想をお聞かせ下さい。
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