本日、西宇部校区敬老会に参加して、来賓あいさつを済ませた後、宮内萩市議の案内で、阿武北2期と、阿武東2期広域農道の建設現場を視察しました。
まず、阿武北2期広域農道の建設現場の内、伊良尾火山の活動痕跡をのこす地層を訪ねました。地層は、阿武町福田上の伊良尾山東部に位置する広域農道の工事により法面に現れたものです。H18年12月に、山口大学の永尾准教授が地層を調査され、明らかになりました。地層には火山弾や火山礫が谷状の地形に降り積もっったもので、地面に平行にたまったため、まるで地層がしゅう曲しているように見える地層です。私も現地で、火山弾を拾って帰りました。来週、 永尾先生にもお会いしてお話しを聞くことにしています。
H19年12月に永尾先生も加わった「イラオ火山灰層法面保護工検討協議会」が設置され、これまで現場の工法が検討されてきました。
私は、今回の視察前に、県農林部の担当者に状況を聞いたところ、「工事の実施及び安全上の制約はあるが、関係機関の調査及び地層の保護等には可能な限り協力する方針である。」「第2回の協議会は、10月中に開催予定である。」と言う説明でした。
今日、現場に行ってみると、路面から5メートルほどブロックを積み上げる工事が一部行われていました。現地に立ってみて、この5メートルの部分をブロックで隠すと、岩盤に火山灰がしゅう曲して堆積している様子が見えなくなることがよく分かりました。協議会で、路面から5メートルブロックを積み上げることが了承されたのでしょうか。私は、ブロック積み上げ工事を当面、中止し、10月の「協議会」で再度協議されるべきだと率直に感じました。宮内市議は、この地域を含む阿武火山群をジオパーク地質世界遺産に登録すべく取り組むべきだと萩市議会で質問しています。宮内議員は質問で、「地元では、この道路に価値があるとすれば、この地層だけ。一番価値のあるところを潰して、意味のない道路だけが作られるような愚は犯すなよといわれています。」と発言しています。私も現地に立ってこのことを実感しました。
褐色の土が火山灰。立て掛けられた梯子の高さまで、
ブロックが積まれようとしています。手前は施行済みのブロック。
次に、私たちは、阿武北2期広域農道での落石事故現場を訪ねました。今年7月9日、午前11時45分頃、萩市弥富下の、広域農道工事現場で、重機により掘削作業中に、崩れた岩塊(直径1.5メートル)が現場から約60メートル下の市道及谷線に転げ落ちました。被害としては、市道の陥没、用水路の破損、立木の損傷などがありました。幸い、人的被害が出ませんでしたが、正午前の時間でしたから、不幸中の幸いと言えます。
現在、掘削方法の見直しが行われ、市道には交通見張員が配置され広域農道の工事は再開されています。
私たちが、現場を訪れた時も、市道の60メートル上では、農道工事の重機が唸っていました。貼り直されたばかりの市道と傷の残った立木が事故の凄まじさを私たちに伝えてくれました。
宮内議員も参加した事故後の地元説明会では、「自分は工事の再開は納得していない。」との声も出されたようです。
市道は、センターラインもなく、普通車の離合がギリギリという道路でした。それに平行して豪華農道が建設されている風景は、私には異様に思えました。
農道から転落した岩塊で市道が陥没しました。
張り直された跡がよく分かります。水路には土嚢が。
このように様々な問題が露見している阿武北広域農道ですが、3.2キロの延長で、63億4千万円の事業費が使われようとしています。今年度だけで4億円の事業費です。
最後に、阿武東2期広域農道の橋脚建設現場を視察しました。一般道として考えても大変豪華な橋脚が建設されていました。この広域農道は、2.8キロの延長で、41億6千万円の事業費が使われようとしています。今年度だけで5億円の事業費です。
阿武東広域農道で建設されている橋脚。豪華です。
現在、県内で、このような広域農道事業が、8ヶ所で実施されています。総延長39キロ、総事業費はなんと533億8千万円。今年度の事業費だけで、36億1千万円です。
山口県内で道路が狭いから収益が上がらないという農家がいるでしょうか。農業予算の過半は土木費です。農家の窮状を考えるならば、その予算を農家への直接助成に充てるべきことは当然です。視察した道路は、はっきり申し上げて無駄だと実感しました。言葉を控えて言ったとしても、不急の工事であることは確かだと断言できます。
533億のお金を農家の直接助成に充てれば、どれだけ農家が潤うでしょう。私も農業に携わるものの一人としてそのことを痛感しました。
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遠くまでご苦労様でした。広域農道の実態が良くお分かりいただけたと思います。阿武東ではトンネルも掘っています。これだけのお金が農業生産に直接投入されたらどんなに助かるだろうかと思います。まったく必要性を感じない道路です。伊良尾山火山のこの姿を残すほうがどれだけ価値があるか道路を作ればいいという人にはわからないかもしれませんね。写真がうまく取れていますね。私のほうはいまいちでしたが、載せてみました。機会があったらまたどうぞ。
by 宮内 欣二 — 2008年9月16日 22:00 PM