28日、中国新聞は、日米机上演習で、自衛隊が米軍に「核の脅し」をするよう迫ったと「表層深層」で次のように報じました。
「台湾有事を想定した日米の机上演習で、自衛隊は米軍に『核の脅し』をするように迫り、米中間は一時高い緊張状態に陥ったー。『核なき世界』という理想からは程遠い、究極の事態を見据えたシミュレーションだ。中国が核戦力の増強を加速させ、米ロによる相互抑止の均衡が揺らぎつつある。日本は『拡大抑止』戦略への依存を強めるが、ある政府関係者は『核使用の責任を米とともに負えるのか』と指摘する。『中国の核の脅しには米国も核の脅しで対抗を!』。昨年2月、東京・市谷の防衛省地下にある中央指揮所。同省制服組のトップ吉田圭秀統合幕僚長が強い口調で、米インド太平洋軍のアキリーノ司令官(当時)に何度も迫った。アキリーノ氏は抵抗したが、最後には諦めたように一言『分かった』と発した。日米はこれまでも台湾有事をテーマに演習をしてきた。部隊の配置場所や指揮系統の確認が主目的だったが、今回初めて中国による核の脅しがシナリオに加わった。ある関係者は『日米演習もここまで来たのかと防衛省・自衛隊内に衝撃が走った』と打ち明けた。米国防総省の推計では、中国の核弾頭数は2030年までに千発を越える。内陸の砂漠地帯で大陸間弾道ミサイル(ICBM)のサイロ(地下発射施設)を多数建設していることも判明。急ピッチの核軍拡に米国は危機感を強め、米ロの均衡を前提としてきた核戦略の見直しを迫られている。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)などは国防総省の助成金を受け、台湾有事を想定した机上演習を実施した。24年発表の報告書によると、15回の演習のうち多くのケースで中国が核を先制使用し、うち3回は民間人多数が犠牲になる『大惨事』に発展した。米側が先に使うケースもあった。日米演習はこうした想定を念頭に置いている可能性がある。中国は核の先制不使用を掲げ、非核国に核兵器を使ったり、核で脅したりすることもしないと宣言している。では、米国の『核の傘』の下にいる同盟国はどうかー。中国軍関係者は決まってこう答える。『日本は非核国だ。ただし、中国への核攻撃や核兵器運用に在日米軍基地が使われたり、自衛隊が支援したりすれば話は別だ』。核の脅しに通じるけん制だ。中国が台湾進攻を決断した場合、日本の介入を阻止するために核で脅すとのシナリオは現実味をもって語られている。日本は戦争被爆国として核廃絶を訴え、保有国と非保有国の橋渡し役を自負する。だが現実には米の核の傘に守られているという矛盾を抱える。政府は、ノーベル平和賞を昨年度受賞した日本被団協などが求める核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加に応じていない。さらには昨年7月に『拡大抑止に関する日米閣僚会合を初開催。同12月には初のガイドライン(指針)を作成するなど、日米は核を介した結びつきをより強めている。今回の演習で、日本が核の脅威を盾に戦況の好転を促す可能性が明らかになった。ある政府関係者は『核を落とせば多数の市民が犠牲になる』と指摘。『拡大抑止は突き詰めると、核の使用を命じる米大統領と一緒に審判を受ける覚悟がわれわれ日本国民にあるのかという話だ』と警告した。」
今朝のしんぶん赤旗日刊紙に、この報道を受け、党国会議員団と政府に事実関係を質した内容を次のように報じています。
「日米が『有事』で米軍の核兵器を使用する協議を行い、共同演習で自衛隊が米軍に『核の脅し』を求めたとされる共同通信の一連の報道をめぐり、「日本共産党国会議員団は30日、政府に事実関係をただしました。日米当局者による『日米拡大抑止協議(EDD)で、『有事』を想定した机上演習を複数回実施し、米軍が核兵器を使用するシナリオを議論していたとの報道(27日付)について、外務省の担当者は2023年12月に開催されたEDDに基づいて『机上演習』を定期的に実施していることを認めた上で、『具体的な内容については事柄の性質上、お答えできない』と回答。『米軍が核兵器を使用する』というシナリオの存在について、否定しませんでした。昨年2月の日米共同統合指揮所演習『キーン・エッジ』で『台湾有事』の机上演習が行われ中国が核兵器の使用を示唆した発言をしたとの想定で、自衛隊が『核の脅し』で対抗するよう再三求め、米側が渋々応じたという報道(28日付)をめぐっても聞き取りが行われました。この報道に関して中谷元・防衛相は29日の記者会見で『事実無根だ』と否定。防衛省担当者もこの見解をあらためて繰り返しましたが、『核の脅し』を求めたというやりとりについては否定したものの、米軍の核使用を想定したシナリオの存在については『答えを差し控える』と否定しませんでした。日米両政府は昨年12月、『拡大抑止に関するガイドライン(指針)』を作成したと発表。内容は非公表で、核兵器の使用基準や日米間の手続きなどが盛り込まれているとみられます。聞き取りには日本共産党の山添拓、仁比聡平、白川容子の各参院議員と、大平よしのぶ衆院中国比例候補が出席しました。大平氏は、広島県被団協(佐久間邦彦理事長)や県原水協が主催した核使用協議に抗議する緊急アクションのアピールを手渡し、『核兵器の使用の議論を(事柄の性質上明らかにできない)ということは許されない。(核抑止)という立場を乗り越え、核兵器は絶対に使ってはならない絶対悪の兵器だという立場で、唯一の戦争被爆国の政府として核廃絶に向けて世界をリードすべきだ』と求めました。」
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赤旗の記事の中で、大平氏が取り上げた緊急アピールは以下の通りです。
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<緊急アピール>
日米両政府の、 核兵器使用議論と 「核の脅し」 を求める発言についての情報公開を行うとともに、「拡大抑止」政策を否定し、
核兵器廃絶を求める被爆者の願いを世界に発信することを求める
報道によると、日米両政府が米国の核兵器と通常戦力による日本防衛を話し合う定例協議で、有事を想定した机上演習を複数回実施していることが明らかになりました。そこでは外務・防衛当局間で、「米軍が核兵器を使用するシナリオが議論されている」とされています。これは、通常兵器にとどまらず、核使用にかかわる協議に踏み込み、日米が共同で「核の傘」強化にすすむものです。
さらに、自衛隊と米軍が昨年実施した「机上演習」で「自衛隊が米軍に核の脅しで対抗するよう繰り返し求めた」と報じられています。これは、唯一の戦争被爆国として核廃絶を訴える日本が有事に核による威嚇もいとわず、米中の緊張激化を助長させるものです。表では「核兵器のない世界を目ざす」としながら、裏で「核使用を想定していた」など被爆地ヒロシマは決して容認することはできません。
被爆80年を迎えるにあたって、被爆地ヒロシマ・ナガサキでは2025年原水爆禁止世界大会の成功にむけてあらゆる努力が続けられています。
また、7月26日から広島に入った国民平和行進は炎天下の中、核兵器廃絶を訴えて歩みをすすめています。今回の日米両政府の核使用議論は、核兵器廃絶を願う被爆者や市民の願いに背くものであり、即時協議の中止と撤回を求めるものです。
今世界は、核兵器使用の危険と「核抑止」への依存が強まるなど、「瀬戸際」とも言われる危機的な状況にあります。ウクライナ侵攻に際してロシアの核兵器使用の威嚇、パレスチナ・ガザ地区へのイスラエルのジェノサイド、さらに、イスラエルとアメリカによるイランの核関連施設への先制攻撃など、核保有国による国連憲章を踏みにじる、許しがたい蛮行が行われています。
このような情勢だからこそ、日本政府はアメリカいいなりに大軍拡と「戦争国家」づくりを進めるのではなく、唯一の戦争被爆国として「核のタブー」を守りぬき、被爆者のメッセージを世界に伝える先頭に立つべきです。私たちは、以下のこと緊急に要請します。
1,日本政府は日米有事の際の核使用議論にかかわる情報を公開するとともに、「拡大抑止」政策を否定し、核兵器廃絶を求める被爆者の願いを世界に発信すること。
2,「日本の自衛隊が米軍に対して『核の脅し』で対抗するように再三求めていた」ことは「核戦争の準備を勝手に進める」ことであり、容認できない。このことについても情報を公開し、なぜ、このような事態になったか明らかにすること。
3,日本政府は早急に核兵器禁止条約に参加すること。
2025年7月29日
日米両政府の有事の際の核兵器使用議論に抗議するヒロシマ緊急アクション
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参議院選挙で、参政党の候補者が核使用を容認する趣旨の発言を行ったことが大きな話題となりましたが、今度は、米軍と自衛隊の合同演習で、自衛隊が「核の脅し」を求めたという報道です。
赤旗の記事の中で、大平氏が指摘している通り、政府は、今、核兵器は絶対使ってはならない絶対悪の兵器だという立場で、唯一の戦争被爆国の政府として、核廃絶に向けて世界をリードすべき時です。
緊急アピールにあるように、日本政府は早急に核兵器禁止条約に参加すべき時です。
私は、この立場で、政府が核使用を容認する立場に立つことがないよう、核兵器廃絶の運動を継続していきたいと決意を新たにしました。
この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせください。
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