しんぶん赤旗日刊紙に、「中小企業と賃上げ」と題する小澤薫新潟県立大学准教授の小論文が掲載されてきました。11月9日の最終回は、自治体が独自に支援を行っているという次のような内容でした。
「事業場内の最低賃金の引き上げと、設備投資による生産性向上を一体で実施した中小企業を支援する業務改善助成金について、厚生労働省はホームページなどでモデル事例を紹介しています。ある食品製造業では、手作業でやっていたときは製品の出来ぐあいにばらつきが生じていたが、新たな調理器具を導入したことでばらつきがなくなったうえ、人員も他の業務に回すことが可能となり作業効率が向上したといいます。また、施術ベットや医療ベッドを導入したある通所介護事業所では、導入前は利用者の移乗や起き上がり補助を複数名で行う場合が多く、効率的で作業を進めることが困難だったが、導入後はベッドの高さ調節機能などによって一人えスムーズに作業を行うことが可能となり、作業効率が向上したとしています。しかし、設備投資による省力化や作業効率の向上が、本質的な経営の向上につながるのかは疑問が残ります。むしろ人件費の削減につながり、最賃境界での労働を生み出すことになるのではないかと危惧します。連載7回目で紹介したように、業務改善助成金は最賃引き上げと設備投資をセットで実施しなければならないため、多くの中小企業にとって使い勝手が悪い問題もあります。こうしたなか、都道府県ごとに支援策を設けたり、補助金を上乗せしたりする動きが出ています。石川県には、業務改善補助金ではカバーされない会社負担の半分を県が負担する仕組みがあります。岩手県には、物価高騰対策賃上げ支援金として、50円以上(1時間あたり)の賃上げを行った企業を対象に、従業員一人あたり5万円(最大20人分)を支給する仕組みがあります。国の重点支援地方創生交付金を活用した「もので、予算規模も業務改善助成金をはるかに上回ります。私たちはが中小企業経営者を対象に2023年2月に実施した調査(経営者調査)には、物価高騰などを価格転嫁することのむつかしさが示されています。石川県や岩手県のような具体的、直接的な対策は中小企業経営にとって重要です。公正取引を実現するうえで公的部門は大きな役割を担っています。中小企業が物価などの高騰部分を価格に転嫁できる仕組みづくりに向けた行政指導が不可欠です。ところが、経営者調査の自由記述には、行政自身が入札で暗に価格引き下げを求めてくるなど、公正取引を阻害する存在になっているとの指摘が多く上がっています。中小企業の抜本的な賃上げを実現するには、国や地方自治体が行う公契約の在り方を見直すことも重要な課題になっています。」
今年の4月時点で、山口県が実施してきた県の賃上げ対策について、産業労働部から次のような説明を受けています。
山口県は、2023年度には、賃金環境整備応援事業を創設しました。県が指定する働きやすい環境づくりの制度等を新たに導入した場合に、一つの取組に10万円、最大4つの取組に40万円の奨励金を支給するものです。更に、1時間あたり30円以上の賃上げを実施した事業者に一人あたり6万円(上限60万円)合計最大で100万円支給するものです。交付決定件数は444件となりました。
今年度は、賃金見直しによる人材確保・定着支援事業(初任給等引上げ応援奨励金)を行っています。34歳以下の正社員について、定期昇給相当分を除き3%以上の賃金引上げを実施した中小企業等に一人あたり10万円、1社あたり100万円を上限に支給しています。
制度融資として2022年12月から賃金引上げ・価格転嫁支援資金をスタートさせています。この資金は、雇い入れ後6月を経過した労働者の最も低い時間当たりの賃金を3%以上引き上げることなどを融資対象としています。2022年度の融資実績はなく、2023年度(2024年2月末時点)で6件に融資を行っており、2024年度も融資制度が継続されています。
山口県がこのような賃金引上げを行う中小企業に奨励金を支出し融資制度を創設していることを評価した上で、今年度の両制度の実績はどうなのか産業労働部に照会したいと思います。
更に、県内の中小企業で国の業務改善補助金の支給を受けている事業所の数などについても産業労働部に照会したと思います。
新年度予算においても、県が、中小企業の賃上げを支援する制度を拡充させて継続するよう求めていきたいと思います。
更に、小沢准教授の論文にあるように①公正取引を実現する上で、中小企業が物価などの高騰部分を価格に転嫁できる仕組みづくりに向けた行政指導をどのように行うのか②地方自治体が行う公契約で、中小企業が物価などの高騰部分を価格に転嫁できるものにするーことなども重要です。この当たりの対策についても県の姿勢を質していきたいと思います。
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