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自治体のデジタルガバメント移行で歳出が増加し、住民サービス削減にならないか

 地方議会議員政策セミナー二日目は、自治体行政のデジタル化政策について、稲葉一将名古屋大学教授などから講演を受けました。
 山口県は、この間、山口県デジタル・ガバメント構築連携会議を開催してきました。
 この会議の議題でもある二つの問題を通じて、自治体行政のデジタル化政策の課題を考えてみたいと思います。
 一つは、ガバメントクラウド移行問題です。
 東京自治労連の稲葉多喜生さんのこの部分での講演内容を紹介します。
 昨年、12月4日、読売新聞は、121自治体の内、3割が、政府クラウドの移行は困難と報じました。主な理由は、人件費などが賄えないことが理由です。
 東京自治労連が、東京都内の区市町村において、ガバメントクラウドへ移行するための統一標準化にかかる費用について聞き取り調査を行った結果、移行にかかるコストは区で60億円程度、市で数十億円の費用負担がかかることが分かりました。それを補う補助金は不足しているとの回答が多かったとのことです。
 基幹業務システムのガバメントクラウドへの移行のため、国は、財源の19%を補うといい、7000億円の財源を確保したというが、内容が不透明で利用しづらい状況だということです。
 稲葉さんは、「国庫負担に上限があるので自治体負担がある。全額国庫補助で行うべき。」と話します。
 また、稲葉さんは、「ガバメントクラウドを運用開始した後のランニングコストが自治体財政を圧迫させるのではないか。」と指摘します。
 22年9月デジタル庁「ガバメントクラウド先行事業における投資対効果の費用実証」の結果、財政規模が、大きい自治体は、盛岡市 マイナス8%となっている一方、財政規模が小さい自治体は増加している結果だと言います。
 稲葉さんは、この問題で最後に、「ガバメントクラウドへの移行でランニングコストが増加し、本来行われるべき福祉への支出などが削減される心配がある。」と指摘します。
 山口県でも県・市町の業務がガバメントクラウドへ移行させられようとしています。移行へ向けての現状を調査し、必要な発言を行っていきたいと思います。
 次に、アナログ規制の点検・見直しについて
 山口県は、この点に関し次の対応方針をガバメント連携構築会議で示しています。
● 「地方公共団体におけるアナログ規制の点検・見直しマニュアル」や国の見直し状況等を参考に見直しを進めることとして洗い出し作業を実施。
● 先般、アナログ規制見直し等の庁内の推進体制としてワーキンググループを設置。調査結果を精査の上、国の動向を踏まえ、書面掲示規制とFD等の記録媒体規制から、見直し方針を検討し、条例改正等を行う予定。
● その他の規制については、今後改訂が予定されている地方自治体向けのマニュアルや国の見直し状況などを踏まえ、年度内を目途に見直し方針を整理の上、随時、条例改正等を行う予定。
 アナログ規制の点検・見直しに関し、稲葉名古屋大学教授は、次の点を指摘しました。
 第一は、公務員の専門性をデジタルに代替できるのかという点です。
 例えば、保育現場に、監視カメラが設置され、保育士の目視を補えるのでアナログ規制を見直すとの議論があります。
 これまで培ってきた保育士の専門性はどうなるのかという問題が問われます。
 第二は、監視社会に突き進む危険性です。
 埼玉県戸田市で、教育現場において、子どもに、リストバンドを付けて、監視カメラを増やして、アナログ規制を見直す動きがあるそうです。
 教育や福祉現場で、対象者にリストバンドを付け、監視カメラで管理することが、教育や処遇の面で、本当に良いものと言えるのかとの疑問が指摘されました。
 山口県でも上記の方針の元、今年度末に方針が示され、2025年6月を目途にアナログ規制の見直しが進められようとしています。そのことで、住民へのサービスが向上することになるのか十分な検討を行いながら進めていく必要があることを実感しました。この点についても調査を行い、必要な発言を行っていきたいと思います。
 自治体行政のデジタル化政策に関する皆さんのご意見をお聞かせください。

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