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山口県の図書館員・非常勤比率は72.7%で全国ワースト8位

 一昨日から、NHK Eテレ「100分de名著」カールマルクス「資本論」が始まりました。
 講師は、経済思想家の斎藤幸平さんです。
 マルクスは資本論で「資本主義的生産様式が支配的な社会の富は『商品の巨大な集まり』として現れ、個々の商品は、その富の要素形態として現れる。」と述べています。
 斎藤さんは、「富」について次のように説明しています。
 「例えば、きれいな空気や水が潤沢にあること。これも社会の『富』です。緑豊かな森、誰もが思い思いに憩える公園、地域の図書館や公民館などがたくさんあることも、社会にとって大切な『富』でしょう。知識や文化・芸術も、コミュニケーション能力や職人技もそうです。貨幣では必ずしも計測できないけれども、一人ひとりが豊かに生きるために必要なものがリッチな状態、それが社会の『富』なのです。」
 この「富」が資本主義社会では次々と「商品」に姿を変えていくのです。
 この点について斎藤さんはこう説明しています。
 「例えば、都市部の公園を更地にして、そこに高層マンションやショッピングモールを建てたり、森を切り拓いてゴルフ場を造ったり、一番わかりやすいのは『水』でしょう。私が子どもの頃、飲料水は『商品』ではなく、水道からタダで飲める物でした。ペットボトルに入った水が『商品』として定着したのは、ここ20年くらいのことです。このように、ありとあらゆる物を『商品』にしようとするのが、資本主義の大きなと特徴の一つです。」
 マルクスは「商品」には二つの顔があることを指摘しています。
 一つは「使用価値」という顔です。
 齋藤さんは、こう説明しています。
 「『使用価値』とは、人間にとって役に立つこと(有用性)、人間の様々な欲求を満たす力です。水には喉の渇きを潤す力があり、食料品には空腹を満たす力があります。マスクにも、感染症の拡大を予防するという『使用価値』があります。」
 「商品」の二つ目の顔は、「価値」です・
 斎藤さんはこう説明します。
 「『商品』になるためには、別の何かと交換されなければなりません。交換されない椅子は、座るという『使用価値』を持った、ただの椅子です。これに対し、『商品』としての椅子は、市場で1万円の値札がつき、100個の卵や20枚のシーツなど別の同じ価値で交換されるわけです。」
 次に斎藤さんは、「物象化」について次のように説明しています。
 「『価値』のためにモノを作る資本主義のもとでは立場が逆転し、人間がモノに振り回され、支配されるようになる。この現象をマルクスは『物象化』と呼びます。」
 斎藤さんは、「物象化」を象徴的に教えてくれるのが「Go toキャンペーン」だと次にように述べています。
 「旅行や外食による感染拡大のリスクがあっても、経済を回していかなければ社会として存続できない。だから、何としてでも経済を『回していく』-といっていますが、本当は『回させられている』というほうが正しい。人間のために経済を回すのではなく、経済を回すこと自体が一種の自己目的になって、人間は、資本主義経済という自動装置の歯車としてしか生きられなくなっている。」
 斎藤さんは、物象化の強まりが公共事業の民営化や規制緩和による市場の自由化を進めてきたとして、これが「新自由主義」政策だと述べています。
 その現れとして、全国の公立図書館で非常勤職員が増えている問題を指摘しています。
 都道府県別の図書館員の非常勤職員の割合を示した表が、テキストに掲載されています。
 全国平均は、64.2%、最低の福島県は、40.6%です。
 一方、最高の長野は79.0%、山口県は、全国ワースト8位で72.7%になっています。
 斎藤さんは、この点を次のように述べています。
 「公立図書館という場やその蔵書は、まさに社会の『富』、大事なコモンです。しかし、『商品』ではないので、儲けは生みません。『使用価値』より『価値』を優先する資本主義の論理で図書館運営が『改革』されれば、社会の富は痩せ細ってしまうのです。」
 ついに、「資本論」が私たちの暮らしの矛盾を解明してくれました。
 この章の最後に斎藤さんは、「資本論」の一文を引用しています。
 「本書の最終的な目的は、近代社会の経済的運動法則の暴露である。近代社会は、自然的な発展諸段階を飛び越えることも、法令で取り除くこともできない。だが、近代社会は、生みの苦しみを短縮し、緩和することはできる。」
 齋藤さんはこの文章を引用した後にこう書いています。
 「マルクスは、資本主義社会に内在する矛盾を明らかにすることで、資本主義とは別の、よりよい社会を生み出す近道を示そうとしていたのです。」
 残り3回、斎藤幸平さんによる「資本論」の解説をテキストとともにしっかり学んでいきたいと思います。

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