15日、日本共産党創立98周年記念講演会が行われ、志位和夫委員長が講演を行いました。
この講演で、私が一番感動したのは、志位委員長が次のように語った部分でした。
「感染症のパンデミックは、時として、歴史を変える契機となりうる、歴史の進行を加速することがあるとのべましたが、私は、これはいま起こっている新型コロナ・パンデミックでもいえることではないかと思います。」
志位委員長は、米国で起こった警官によるジョージ・フロイド氏の暴行死事件への抗議行動が、世界に広がったことを取り上げ、その背景に、新型コロナ・パンデミックによる共通体験があったとして、次のように述べました。
「新型コロナ危機のもと、米国は、人類差別とともに、あらゆる差別・不公正・不正義が一挙に顕在化しました。その深刻さに、黒人以外の多くの人々も『人ごとではない』と感じる状況が広がり、抗議運動には、黒人だけでなく、白人、ヒスパニック、アジア系、先住民なども広く参加し、とくに20代、30代の若者が多数参加しています。同じ流れが欧州でも、世界でも、一挙に広がりました。」
アメリカで、南北戦争で奴隷制を推進する南部連合軍で司令官を務めたロバート・エドワード・リーの像が撤去されることになったことなどを挙げ、志位委員長は、こう述べています。
「植民地体制の崩壊という20世紀に起こった世界の構造変化が、今日、生きた力を発揮していることを示すものにほかなりません。そして、世界のこの激動的な姿は、新型コロナ・パンデミックが、歴史を変える大きな契機となり、その進歩を加速していることを明らかにするものではないでしょうか。」
私は、今、ハリエット・アン・ジェイコブズが書いた「ある奴隷少女に起こった出来事」を読んでいます。
この本の裏表紙にはこう書かれてあります。
「好色な医師フリントの奴隷となった美少女、リンダ。卑劣な虐待に苦しむ彼女は決意した。自由を掴むため、他の白人男性の子を身籠ることをー。奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに。人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遥かに凌ぐ(格差)の闇を打ち破った究極の魂の物語」
翻訳者の堀越ゆきさんは、コンサルティング会社に勤める会社員。偶然、この本に出会い、どうしても翻訳しなければならないと決意し、出版に至ります。
堀越さんは、この本について「正しい思想や、ひょっとしたら真実というものが、普通の人から生まれ、普通の人を介して伝播する社会-これは私のフィクションかもしれないが、そうであったら良いと思っている。そして、そして奴隷少女だったジェイコブスも、そう思っているに違いないと思う。」と書いています。
ジェイコブスは、この本の91ページでこう訴えています。
「良識ある読者よ、わたしを憐れみ、許してください!あなたは奴隷がどんなものか、おわかりにならない。法律にも習慣にもまったく守られることなく、法律はあなたを家財のひとつにおとしめ、他人の意思でのみ動かすのだ。あなたは、罠から逃れるため、憎い暴君の魔の手から逃げるために、疲れ果てたことはない。主人の足音におびえ、その声に震えたこともない。わたしは間違ったことをした。そのことをわたし以上に理解しているひとはいない。つらく恥ずかしい記憶は、死を迎えるその日まで、いつまでもわたしから離れないだろう。けれど、人生に起こった出来事を冷静に振り返ってみると、奴隷の女はほかの女と同じ基準で判断されるべきではないかとやはり思うのだ。」
「奴隷の女もほかの女も同じ基準で判断されるべき」ここに堀越さんのいう正しい思想や真実があると私は感じました。
堀越さんは、この小説を現代読む意義について次のように書いています。
「正直、奴隷少女が自分らしく生きるために感じなければならなかった心情が、現代の日本の少女にとってかけ離れたものであると私は思えない。少女たちには、奴隷制ならぬ現代グローバル資本主義的で、稚拙で雑多な情報に翻弄された現実が立ちはだかっている。それはガールズにとってのデフォルト、すなわち現代ガールズが無理矢理課せられた現代の『奴隷制』である。読者の誰にも、そのひと自身の『ドクター・フリント』が存在すると私は思う。それは性的強要で、あるかもしれない。あなたの心に正しいと思うものは、それが社会的にどうであれ、その代償がどうであれ、青春の最も楽しい時期7年間、立つスペースもトイレすらない屋根裏に閉じ込められることになったとしても、貫く価値があると、奴隷少女のジェイコブズは証明してみせたのである。新しい困難な時代を生きる少女たちには、新しい古典が必要なのではないだろうか-そう思ったことが、本作の出版を決意した理由である。」
私には、高校1年生の娘がいます。彼女を見ていると「稚拙で雑多な情報に翻弄された現実がたちはだかっている」ことを実感します。
同時に、私たち大人も例外ではないと思います。
現代グローバル資本主義の中で、現代の少女が現代の「奴隷制」に縛られていると指摘する堀越さん
この現代の潮流が、米国で起こった警官によるジョージ・ロフイド氏の暴行死事件を生んだ根底にあるのなら、米国で、南北戦争で奴隷制を推進する司令官の像が撤去される動きを歓迎したいと思います。
堀越さんは、奴隷を鞭打つフリント夫人に触れた後でこう書いています。
「本書執筆から150年を経ても、それは事実だと思う。でもいつか、人類の大多数が、そうではない勇気ある選択を、ジェイコブズのように選ぶ日が来るかもしれない-そんな夢かもしれない希望を、21世紀の現代人に与えてくれる人生をリアルに生き、書籍として残してくれた、文豪ならぬ奴隷少女ジェイコブズの心を本書でお伝えできればと思う。」
2012年2月15日現在、この本が、Kindleの世界古典名作のランキングで11位です。
この事が、奴隷制を推進する司令官の像の撤去の根底となったと思います。
志位委員長が記念講演で指摘した「新型コロナ・パンデミックが歴史を変える大きな契機となり、その進歩を加速している」ことを、コロナ禍で、この本を読みながら実感しています。
歴史を変える一人の主体者として、歴史を学び、日々を生きていきたいと思います。
「ある奴隷少女に起こった出来事」をコロナ禍の今、多くの皆さんに読んでいただきたいと思います。
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