2月21日、山口大学教授20名の方々が村岡知事と柳居議長に「秋吉台国際芸術村の存続と文化事業の充実を求める要望書」を提出されました。
私は、先日、要望を出された教授のお一人である中野良寿山口大学教育学部教授にお会いしてお話をお聞きしました。
その際に、中野教授が中心になってまとめられた「コレクテイヴ:EAS_Y Vol.01」をいただき読みました。
文化庁主催の新進芸術家育成事業の一環として、山口県で取り組まれた様々な取組をまとめた冊子です。
この冊子には、2014年11月に行われた「カルスト地域の再活性化と芸術シンポジウム」の概要が紹介されています。
このシンポジウムで基調報告をされた元秋芳町職員の吉村徹さんの発言が紹介されています。
吉村さんは、文化芸術による町づくりを目指し、国内外芸術家招聘事業「交流の館」を企画運営された方です。
「交流の館」が発展して秋吉台国際芸術村と結実しました。
吉村さんは、シンポジウムで「カルスト地域の歴史と文化遺産」と題して話しておられます。
吉村さんは、秋吉台の戦前の歴史を次のように語っています。
「こののどかな秋吉台も戦前は、旧日本陸軍の演習場でありました。狭い日本では近代的な銃火器と多人数の部隊が軍事演習をする土地はなかなかありません。その点秋吉台は軍隊の演習地として最適でした。」
吉村さんは、戦後の秋吉台の歴史を次のように語っています。
「昭和20年にやっと平和な時代を迎えるわけですが、昭和21年10月、山口駐在のニュージーランド陸軍部隊が、大田演習場を強制接収して実弾演習をします。その後米軍に変わります。昭和26年9月8日、対日平和条約、いわゆるサンフランシスコ平和条約の調印とともに演習場は接収解除になるわけですが、その後の日米安全保障条約によって引き続き演習場として使用されることになります。(中略)県は農家の採草、ドリーネ耕作、観光ルートの関係から使用条件の改定は困難であると回答しましたが、再び公文書で、県知事、美東、秋芳町長宛に申し入れがありました。これに対して、美東秋芳両町議会は使用条件改定反対の決議を行い、昭和31年5月1日、第1回総決起集会を開催、同時に『大田演習場接収解除促進期成同盟』を結成して、地域住民総参加の運動は県民運動へ拡大して行きました。しかし、戦後まだ10年アメリカ軍と言えば恐ろしい存在で、まして戦勝国、その権力は絶大です。当時の小沢太郎県知事は、どうすればこれを平和的に解決することができるか悩み、次の事に重点に置きました。この運動は一部の考えではなく、全ての住民の生活と、秋吉台の自然を守る純粋な住民総意の運動であること、その為秋吉台の学術価値を全面に出して訴えることとしました。山口大学では6月1日に秋吉台学術調査団が編成され調査を開始しました。山口県、美東、秋芳の各教育委員会は関係大臣、在日米軍にも陳情して、日本地理学会、地質学会、日本学術会議にも協力を頼みました。こうした動きにアメリカの地質学者も学術的立場から秋吉台における爆撃演習地反対を表明しました。第二回美東・秋芳町民総決起集会には両町民1500人、応援の各種団体500人が参加しました、時のアメリカ大統領アイゼンハワーにも書簡を送りました。衆議院内閣委員会は秋吉台での調査から、秋吉台大田演習場は文化財保護の立場から、不適当とする答申を提出したのです。当時の調査団長は若き日本の大平正芳、後の総理大臣でした。このカルスト台地を爆撃演習場の破壊から守ろうとする地域住民、山口県民の願いは多くの人々の支援のもとに演習場撤回を手にしたのです。」
中野教授らが提出された要望書には、秋吉台の戦中・戦後の歴史を踏まえ次のように書かれています。
「かつて戦争に協力せざるを得なかった地域住民の精神的・文化的な恢復への想いもあり、美祢市、秋芳町において文化的な活動をしてより人間的な地域にしていきたいという動きがでてきました。」
それが、「秋吉台国際21世紀音楽セミナー」であり「ラピエの森」であり、「国内外芸術家招聘事業・交流の館」です。
その流れが、後の秋吉台国際芸術村の設置につながります。
秋吉台には昭和32年に「平和と観光の塔」が建てられました。この歴史の重みと素晴らしさを県民の一人として感じています。
私たちたちは、いまいちど、悠久の歴史を持つ秋吉台の科学的・芸術的価値を考えなおしたいと思います。
その象徴である「秋吉台科学博物館」「秋吉台国際芸術村」の価値を見直したいと思います。
皆さんの秋吉台への想いをお教え下さい。
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