議員日誌

「死ぬほど読書」読書ノート

 元駐中国大使の丹羽宇一郎さんの「死ぬほど読書」を読みました。

 「わが意を得たり」の感を抱きました。

 読書の醍醐味について、丹羽さんは、「無知の知」を知ることだと次のように語っています。

 「人間にとって一番大事なのは、『自分は何も知らない』と自覚することだと私は思います。『無知の知』を知る。読書はそのことを、身をもって教えてくれます。本を読めば知識が増え、この世界のことを幾分でも知ったような気になりますが、同時にまだまだ知らないこともたくさんあると、それとなく気づかせてくれます。」

 「人間がこの世界についてわかっていることなど1%もないのかもしれません。われわれが生きている世界は、ほとんど『知らないこと』でできている。そのことを考慮すれば、『知っている』という驕りは生まれようがない。『何も知らない』という前提があるから読書はできるのだし、いくら読書を重ねても、その前提が消えることは永遠にありません。『何も知らない』ことを知る。人が成長する上で、これほど大事なことはないのです。」

 「ツイッターで毎日のように世界に要らぬ波紋を呼んでいる、あのアメリカの新大統領」をイメージして、丹羽さんはこう語ります。

 「反対に自分は何でも知っている。何でもわかっていると思っている人ほど、質の悪いものはないのかもしれません。こういう人は傲慢で、なんでも人より優位に立って、自分の思い通りに事を進めようとしたりします。」

 私たち親たちにも、丹羽さんは、こう語ります。

 「一生懸命勉強をしてきた高学歴の母親が、『この子はバカでどうしようもない』と自分の子どもの前でいっているのを見たことがありますが、この母親は無教養です。その言葉が子どもの心にグサリと刺さることを想像できない。子どもは親にどう思われたいのか、何を求めているのかがまったくわかっていません。」

 丹羽さんは、教養につて、次のように語っています。

 「教養というと、大前提として知識の量が関係すると思われるのではないでしょうか。しかし、私は知識というものは、その必要条件ではないと考えます。私が考える教養の条件は、『自分が知らないということを知っている』ことと、『相手の立場に立ってものごとが考えられる』ことの二つです。」

 実に教訓深い指摘です。

 丹羽さんの「スランプ」についての指摘にも納得です。

 「たまに『最近スランプなんですが、どうしたらいいでしょうか?』と聞かれることがありますが、そういう人は、やはり自分に対する評価が高いんだと思います。元々の実力がたいしたことないのに、自己採点が甘いゆえに、ちょっとしたことで調子が悪いと気になる。調子が悪くてだめなときが、自分の本来の実力だと思えば、スランプになど陥りようがありません。」

 本を読んで知識を得るとは、謙虚になれるということなのですね。

 丹羽さんは、最近の日本の政治についても厳しく指摘しています。

 「最近の日本の政治は、権力を握った人間が自分たちの好きなようなシステムや国の行方を次々とつくりかえていこうとする動きが目立ちます。しかし、そんな危うい空気にもかかわらず、深くものごとを考えることをせず、何となく現状に流されて生きている人のほうが多いのではないでしょうか。何も疑問を異議も唱えず、周囲の空気を読んで現状に満足しているようでは、それは、まさにスペインの哲学者、オルテガ・イ・ガゼット(1883~1955年)が『大衆の反逆』で述べたように、野蛮性と原始性に富んだ衆愚になるだけです。ドイツの政治学者E・ノエル=ノイマン(1916~2010年)は著書『沈黙の螺旋理論』のなかで、多数派におされて少数派が意見をいいにくくなり、世論が形成されていくという過程を示しています。日本人は軸をしっかり持たず、空気を目ざとく読んで多数派につくという『沈黙の螺旋』を常に描いているように思います。」

 最近、知人と話をしていて、このようなことを感じました。

 丹羽さんは、読書は心を自由にしてくれると言います。

 「読書は心を自由にしてくれます。読書によって自分の考えが鍛えられ、軸ができれば、空気を中心に思考したり、行動したりすることはなくなるはずです。世間の常識や空気に囚われない、真に自由を読書はもたらすのです。」

 実に深い言葉です。

 丹羽さんのこんな言葉もいいですね。

 「たくさんの経験を積んで、たくさんの本を読む。時間をかけてシワをたくさんつくってきた人は、シワの数だけ、より深い人生を生きられる。そうやって心のシワを増やすことは何物にも代えがたい喜びだと思います。」

 私も「自分は何も知らない」存在だということを自覚しつつ、少しでも「自由」を得るために、心のシワを増やすように、毎日の読書に励みたいと思います。

 私の今の趣味の第一は読書となっています。一人の読書人として大いに励まされる一冊でした。

 皆さんもぜひ一読下さい。

 さて、今読んでいるのは、長江俊和さんの「出版禁止」です。傑作ミステリーです。

 読書は心のシワを増やしてくれますね。皆さんの最近の読書体験をお教え下さい。

 

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