NHKラジオの「著者に聞きたい本のつぼ」に芥川賞作家柳美里さんが登場し自著「ファミリー・シークレット」が紹介していました。
今日までに「ファミリー・シークレット」をほぼ読み終えました。
彼女には一人息子がいますが、息子さんへの虐待を通じて、自身が両親から受けた虐待の経験などを赤裸々につづった作品です。
彼女の作品の中では初めてのルポルタージュの形態の作品です。
彼女の息子さんへの虐待経験は言うに及ばず、彼女の友だちから受けたいじめや両親から受けた虐待を綴った部分は、私の胸に突き刺さりました。
後半では、柳さんが、10数年会ってお父さんが登場して、お父さんも幼少時代からの経験を語ります。
お父さんは韓国から日本に来られた方で、彼も苦労の連続です。
貧困と虐待の連鎖が柳さんを襲っている状況がリアルに描かれています。
この物語は、柳さん自身が、長谷川博一さんという臨床心理士さんのカウンセリングを受け、その内容が報告されてもいます。
親ならば、子どもに多少なりともキツイ対応をして反省した経験はあるものです。
長谷川さんと柳さんのやり取りから親として「ありのままの子どもを受け止める」大切さを痛感しました。
ありのままの子どもを受け止めるということは、まず、ありのままの自分を受け止めるということにもつながるのでしょうか。
そのにつまずくと、子どもとの距離が上手く取れないことになるのでしょうか。
この本を読んで、虐待を起こす親の生い立ちからじっくり聞いてくれて支えてくれる回りの人々の存在がいかに大切なのかも分かりました。
これほどまでに、自らの赤裸々な内容を表現した文章に久しぶりに出会い、私自身ショックを受けています。
柳さんの物語ではない魂の叫びのようなものを感じました。私には到底全て受け入れることが出来ない彼女の渾身の文章に圧倒されました。
柳さんの代表作「命」の文庫版の解説でイラストレーターのリリー・フランキーさんが柳さんから聞いた次の言葉を引用しています。
「一生、爪先きだちで重いものを背負って歩いていきたい。踵がついちゃったら、表現者としておしまいだと思っています」
この言葉は、私の心にもずしりときました。柳さんが背負ったものがいかに重いか、柳さんの表現者としての覚悟を感じました。
「ファミリー・シークレット」は彼女の先程引用した言葉そのものが表された重い作品でした。
柳さんがこれまでに経験したことは、私には経験できないことばかりですが、この作品を通じて、私なりに 家族とは何かを考えなおしてみようと思いました。
上手く整理は出来ていないけれど、この作品に出会えたことに感謝しています。
少しづつ彼女の別の作品を読んでいこうと思いました。
親として人間として彼女から少しでも学んでいこうと思いました。
柳美里ファンの皆さん、「ファミリー・シークレット」を始め、彼女の作品の感想をお聞かせください。
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