議員日誌

美祢市美東町地蔵院の木喰仏

 シルバーウィークに島根県立石見美術館に出向き、山口県にある木喰仏を見学して以降、県内の木喰仏を巡ってみたいという気持ちにかられました。
 先日、美祢市美東町大田にある地蔵院の責任役員を務めておられる河村力さんと話す機会があり、昨日、地蔵院の木喰仏を見学してきました。
 県内の木喰仏に関しては、昭和46年に書かれた宇部市の新見亮助さんと片山徳五郎さんによる「山口県下の木喰仏」と昭和54年に書かれた山口市の内田伸さんによる「防長の微笑仏」に詳しく書かれてあります。
 木喰上人の足跡は、「御宿帳」に詳しく記録されています。先に引用した二つの本は、「御宿帳」に基づき、木喰上人の県内での足跡が書かれてあります。
 これによると、木喰上人は、寛政9年(1797年)6月24日に、九州から下関に入っています。御年80歳。
 同年7月7日に、現在の美祢市秋芳町秋吉の広谷の毘沙門堂に到着しています。そして、8月15日まで滞在しています。この年は閏月があったので、60日以上滞在していたことになります。
 この間に、現在の秋芳町の広谷の毘沙門堂に3体、福王田の観音堂に3体の像を作り、現在も残っています。(後日、見学に行く予定です。)
 そして、美祢市美東町大田地蔵院の木喰仏もこの秋芳町広谷で彫られた仏像ではないかと指摘されています。
 内田伸著「防長の頬笑仏」には、「寛永9年、地蔵院の住職が広谷に滞在して仏像を彫っていた木喰に依頼して、作ってもらったものと思われる。この像が広谷で作られたものでろう根拠は、梵字を周辺に散らして書かれたその背銘が、福王田の毘沙門天の背銘の書き方に、一番よく似ているということなどから考えられる。」とあります。
 木喰上人は、ここ広谷で、本格的に仏像に取り組みはじめたと言える事実が指摘されています。
 一つは、山口県に入った6月24日以降、広谷に入る7月7日まで、仏像が発見されていないことです。
 二つ目は、福王田の毘沙門天に初めて「日本千体の内」の記述がみられることです。
 内田伸さんは先述の著作の中で、「木喰が彫った仏像はいま、全国で五百余体残っているが、その内「日本千躰の内」という文字が記されているものは、この毘沙門天像が最初のものとなっている。これ以後の日付のある仏像には、ほとん7どみな「日本千躰の内」と書かれている。これにより木喰は秋吉にいた時、以後日本各地に千体の仏像をつくろうという考えをあらためてしたということがはっきりうかがえる。」と書いています。
 木喰上人にとって秋吉広谷の土地はは意義深いところだと言えます。
 さて、地蔵院の木喰仏についてです。

 地蔵院の正式名称は、臨済宗東福寺派日照山地蔵禅院。開創は、永禄11年1568年。400年を超える歴史のある古寺です。

 木喰仏は、本堂横の大師堂に安置されています。

KIMG1357

   一本の木に彫られた仏像です。

 10体以上の弘法大師像が安置されている中の一つが木喰仏です。

 木喰仏は、雲の上の亀跌の上に置かれていますが、木喰が作ったのは大師像だけです。

KIMG1358

 亀の像の上に弘法大師像は安置されています。

 大師像全体は40センチ、像高35センチの小仏です。

 左手には数珠。右手には五鈷杵を胸前で握っています。

 平成16年に発行された「美東町史 通史編」には、背面の墨書銘としてこうあります。

 心願日本千躰

 梵字 ノ内

 天下和順 日月清明 八宗一見

 永当南無大師遍照金剛 日本廻国

 国王国中 父母安楽 八十歳(花押)

 梵字     正作

          木喰五行

 この像に、「日本千躰ノ内」と書かれているのは、秋吉広谷で、木喰上人が、千躰仏の立願をした後の作品だということが分かります。

KIMG1356

「遍照金剛」や「父母安楽」などの文字が読めます。

 仏像の表情は穏やかで、木喰仏の特徴である微笑を感じさせます。

 80歳の木喰上人の熱が像から伝わってくるようでした。

 また、200余年前の秋芳や美東の人々が木喰上人を敬愛していたことを覗わせます。

 山口県内には、50体以上の木喰仏が確認されています。

 実際に安置してある場所で、木喰仏を見るのは1体目です。

 可能な限り、県内の木喰仏は見学し記録に残したいと思っています。

 当面は、山口県内での木喰上人の足跡を辿る意味からも、秋吉、美東地区の木喰仏を見学し、レポートを残したいと思っています。

 木喰仏の情報がありましたら引き続きお寄せ下さい。

 

トラックバック

コメントはまだありません

No comments yet.

コメント

コメント公開は承認制になっています。公開までに時間がかかることがあります。
内容によっては公開されないこともあります。

メールアドレスなどの個人情報は、お問い合せへの返信や、臨時のお知らせ・ご案内などにのみ使用いたします。また、ご意見・ご相談の内容は、HPや宣伝物において匿名でご紹介することがあります。あらかじめご了承ください。