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王谷晶著「ババヤガの夜」を読んでいます。

 8月1日、しんぶん赤旗日刊紙の「話題作を読み解く」というコーナーで、津田塾大学の木村朗子さんが、王谷晶著「ババヤガの夜」を取り上げ、次のようなコメントが掲載されました。
 「王谷晶『ババヤガの夜』が日本作品で初めてダガー賞を受賞した(英語版『The Night of BabaYaga』サム・ベット訳)。『赤旗』の読者は連載小説でおなじみの『他人やのゆうれい』の作者である。身のうちに燃えるような暴力への欲求がくすぶっている最強の女、新道依子はひょんなことからヤクザの令嬢のボディーガードとなった。そんな不釣り合いな二人が手をとりあって生き抜く物語。一般にイメージされる推理小説とはだいぶ趣が違うが、ダガー賞を選出する英国推理作家協会は、英語ではThe Crime Writers’Associationといって犯罪小説の作家協会なのである。『ババヤガの夜』はもともと河出書房新社の季刊文芸誌『文芸』2020年秋号の特集『覚醒するシスターフッド』の目玉小説として出された。シスターフッドとは女同士の連帯を意味する。2019年秋号から坂上陽子編集長のもと『再起動』した『文芸』は、リニュアル第2号となる秋号の特集『韓国・フェミニズム・日本』で反響を呼び、異例の増刷となった。読者の熱い要望で単行本として再出版し、さらに翌20年には小説版を刊行するなど好評を得た。この背景には、2017年にハリウッド女優が大物プロデューサーの性暴力を告発し、女性たちがSNSで連帯を表明した#MeToo運動が世界的に広がっていたことがある。韓国フェミニズムの火付け役となったのチョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』が2018年に斉藤真理子訳で出版され、日本でもベストセラーになった。2019年にはフェミニズムに特化したムック本『エトセトラ』『シモーヌ』が続々と創刊した。王谷晶は受賞のスピーチで自らの作家としてのテーマを『あいまいであること』とし、『自分のあいまいさを受け入れ、他人のあいまいさを受け入れることが世の中をよりよくすると私は信じている』と述べた。『あいまい』ということばは1994年にノーベル文学賞を受賞した大江健三郎の『あいまいな日本の私』と題したスピーチを思い起させる。大江のスピーチでは両義性を意味するambiguousという語が用いられた。翻訳者のサム・ベットによる通訳では王谷晶の『あいまい』はカテゴリー化しにくいもの(hard to categorize)と訳された。主人公の女二人の関係や人生についてラベリングしないこと、具体的にはレズピアンと名付けマイノリティーの物語に囲い込んでしまわないこと。それはまさしくカテゴリー化を拒絶することである。読者はここに『女の敵は女』などという思い込みを超えた連帯の可能性をみるだろう。タイトルにあるババヤガはスラヴ民話に出てくる魔女だが実は小説中には出てこない。主人公たちはただ『鬼婆になりたい』と言うのである。英語役ではここにババヤガという言葉をあて、物語の骨子がクリアになった。小説中に『暴力は自由な人間のためのもの』という言葉がある。暴力をふるうことに震えるほどの喜びを感じている主人公像は、男女の立場を入れ替えてしまえば成り立つまい。フェミニズムがいまだ道半ばにあることを世界中が感じている今だからこそ喝采をあびる小説なのである。」 
 今、河出文庫の「ババヤガの夜」を半分読み終えました。私が今まで読んだ小説の中には登場しなかった主人公の新道依子です。しかし、一気に、新道の一挙手一投足に引き付けられていきます。
 作家の深町秋生さんは、解説「クラッシュ&フリーダム」の最後に、「読み手の固定観念を破壊し、新たな価値観を打ち立ててみせる。本作で見事にやってのけた王谷晶のクラッシャーで、同時に自由で解き放たれたクリエイターでもあると思う。」と書いています。まさに、「新しい価値観を打ち立ててみせる」部分が世界で高い評価を受けたのだと思います。
 深町さんは、「この魔窟というべき場で、新道と尚子が果たしてどんな道を進むのか。(中略)読者をあっと言わせる展開になっていくのだが、これも自由な考えを持つ著者にしか思いつけない仕掛けだろう。苦難の道を潜り抜けてたどりつくふたりの姿は涙が出るほど輝かしい。」と書いています。
 新道と尚子が小説の後半で、どのような道を進むのか、読み進めるのが楽しみでたまりません。
 王谷晶著「ババヤガの夜」を読まれた方の感想をお聞かせください。また、他の王谷作品に関する皆さんの感想をお聞かせ下さい。

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