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暉峻淑子著「承認をひらく」を読んでいます。

 暉峻淑子著「承認をひらく」について、11日、毎日新聞は、伊藤亜紗東京工業大学教授の書評を次のように報じました。
 「承認がやんでいる。一方には『いいね』など共感を可視化して承認欲求をかきたてるSNSの仕組み。他方には『モリ・カケ・サクラ』事件や日本学術会議任命拒否など政治権力による恣意的な承認/不承認。言うまでもなく、社会的な生き物である人間にとって、承認はなくてはならないものだ。他者という鏡に映すことで自分を知り、生きていることの意味を自覚できる。承認の病は鏡の歪みであり、鏡の歪みは社会の歪みである。承認の本質は相互承認である、と著者は言う。これは『先生が生徒を褒める』ような承認とは違う。褒めることは確かに生徒のやる気を引き出すかもしれないが、それは教師が求める生徒を成型することになりかねないからだ。承認にとって重要なのはむしろ、生徒が出来てもまつり上げないし、出来なかったとしても不満な顔をしないような先生だ。暴力や不登校などの課題を抱えている生徒に対しても、決めつけずに『何かあったの?』と声をかけるような先生。つまり相互承認を支えているのは、承認基準の変更可能性である。自分がいることによって相手の承認基準が更新されたと感じるとき、人は初めてひとりの人間として承認されたという実感を持つことができる。それゆえ、人間らしい暮らしのためには再分配だけでは足りない、と著者は言う。資本主義は弱者を貧困に突き落とすだけでなく社会的に排除する。貧困の改善については、特に第二次世界大戦以降、放置すべきではないという社会的合意が高まり、再分配は民主主義福祉国家の正義だと認識されるようになった(といっても日本の低所得世帯に対する生活保護の捕捉率は二割前後にすぎず、近年では再配分も衰退しつつあるが)。しかし社会的排除についてはどうだろう。既存の承認基準に合致しないために、孤立している人や差別されている人が存在するが、彼らを包摂しようとする公的な議論はあまりにも弱い。人権の概念は人と人の関係性を軽視している、と著者は言う。他者から承認されず、社会参加の機会が与えられないならば、もはや我々の社会は民主主義国家と言えない。戦争を経験した世代である著者の議論は、このように要約してしまうと、現実味のない高らかな理想と映るかもしれない。しかし著者には、地元の東京・練馬で10年以上、関心のあるテーマについて市民が話し合う対話型研究会を継続してきた手応えがある。地域の課題や政治、子育てや生き方などについて話すなかで、承認基準が更新される瞬間を目にしてきたのだろう。承認は、自分の判断が独断ではないか、他方で付和雷同ではないか、自分と社会に問いながら判断していく行為である。その価値判断は、人間と人間の関係に媒介されることによってしか構築されない、と著者は言う。社会参加を通じて対話や学習の経験が積み上げられ、連帯が生まれ、普遍的なものになっていく発展の過程。重要なのは、人間関係とは関係ない『世論』を変えることではなく、それに根差した『承認基準』を変えていくことである。足元から立ち上がる力強い宣言に、身が引き締まる思いがした。」
 今、暉峻淑子著「承認をひらく」を読んでいます。
 私は、この本を読みながら「戦争と平和」の事を考えました。
 一つは、ベトナム帰還兵のアレル・ネルソンさんのことです。
 ネルソンさんは、著書「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?」の中で、海兵隊の訓練で、「おまえたちのしたいことはなんだ?」と教官に問われ、「殺す!」と答える訓練を受けたと述べています。
 アメリカ兵は、ベトナム人のことを「グークス」と呼び差別します。ネルソンさんは、ベトナム人を殺した後「彼らは、グークスであり、人間ではない」と考えたと書いています。
 アジア太平洋戦争中の日本も、朝鮮・中国人を差別し、アメリカに対しても「鬼畜」と呼び差別します。
 敵兵を人間ではないものと捉え、戦争を遂行したのは、当時の日本もベトナムでのアメリカも同じだと感じました。
 そこに、人間同士の「承認」はないのが戦争だとこの本を読みながら思いました。
 二つは、日本共産党の志位議長が行った「東アジアの平和構築への提言――ASEANと協力して」の講演です。
 ASEANは、紛争を戦争にさせないように、何度も何度も協議を行うことが書かれてあります。
 ここに、国同士相互の「承認」の関係があると思います。
 人間同士相互の「承認」を築く関係を構築していくことが、人権尊重の人間関係を生む未来がある。
 国同士相互の「承認」を築く関係を構築していくことが、平和構築の世界をつくる未来がある。
 この本を読んで、「承認」という言葉を通して、平和と人権が尊重される明るい未来への展望を感じることができました。
 引き続き、暉峻淑子さんの本から学んでいきたいと思います。
 この本を読まれた方は、感想をお聞かせください。

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