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五ノ井里奈著「声をあげて」を読みました。

 しんぶん赤旗の書評に、ジャーナリストの三宅勝久さんが、五ノ井里奈著「声をあげて」について次のように書いています。
 「好きな柔道をきわめたいー。そんな夢を抱いて自衛隊に入った若者の、本書は手記である。自衛隊候補生として陸上自衛隊に入隊し、半年間の教育隊を終えて配属された先は、セクシャル・ハラスメントが日曜的にあるいわく付きの部隊だった。はたして、配属後ほどなくして複数の男性先輩隊員らから強制わいせつ被害に遭う。さらに、隠蔽、黙殺をはじめとする数々の理不尽な仕打ちを受ける。深く傷つき、絶望しかけた著者に勇気を与えたのは、ふとよみがえった自身の東日本大震災の被災経験だ。『生きたくても生きれなかった人がたくさんいたのに、わたしは何をしているんだ!生きなきゃ!』被災した当時11歳。自衛官に助けられ、自衛隊に入ろうと思ったきっかけともなった出来事だ。立ちはだかる壁に向かって、尊厳を取り戻す闘いを挑む。武器はただひとつ『声』だ。インターネットを駆使し、実名を出して被害を世に告発した。反響があった。支援の署名が1カ月間で10万筆を超した。国会議員も動き出した。自衛隊内からセクハラやパワハラを告発する多数の声が届いた。世論の高まりを防衛省は無視できなくなり、調査を実施。加害者と隠蔽にかかわった幹部隊員らを処分、謝罪する。精強を誇示する巨大省庁が、物静かな『声」にたじたじとなる。著者の戦いぶりは、まさに『柔よく剛を制す』であり痛快である。自衛隊の不人気が著しい。22年度の『士』の採用は、9000人の予定に対して約半数だった。著者の事件の影響もあるだろうが、それだけではあるまい。災害救助をアピールして入隊希望者を募っているが、じつは自衛隊法3条の任務に『災害派遣』はない。その欺瞞を若者が見抜きはじめたのではないか。」
 7月31日、舞西新聞は、五ノ井さんが提訴している裁判について次のように報じました。
 「陸上自衛隊郡山駐屯地(福島県郡山市)に所属していた元自衛隊員3被告の第2回公判が31日、福島地裁(三浦隆昭裁判長)で開かれた。事件現場にいた元上司の男性の証人喚問が行われたが、被害者参加人として法廷にいた五ノ井さんが体調不良を訴えて倒れた。五ノ井さんは救急車で病院に搬送されたが、代理弁護士によると、体調は回復したという。開廷から約1時間が経過した午後2次半ごろ、それまで硬い表情で証人や被告を見つめていた五ノ井さんが崩れるようにして倒れた。荒い呼吸音が響き、五ノ井さんは車いすに乗って法廷を出て、救急車で病院に向かった。後半は一時休廷した。」「起訴状によると、3被告は、2021年8月3日夜、北海道の演習場で、格闘技の技で五ノ井さんをあおむけに倒して体に覆いかぶさり、わいせつな行為をしたなどとされている。6月の初公判で3被告は起訴内容を否認し、無罪を主張している。この日は、元2等陸曹で、3被告と五ノ井さんの元上司だった男性が証言台に立った。22年10月に3被告とともに性暴力について五ノ井さんに直接謝罪し、同12月に懲戒免職となった。検察側の質問で、元上司は、当初の自衛隊の内部調査について『事実を言わず、(わいせつ行為は見ていない)と答えた』と話し、その理由として『3被告を守りたかったという気持ちと、上司である自分が注意できなかったことに責任を感じた』と述べた。証言を翻した理由について元上司は『渋谷被告に(全部言いました)と言われ、(自分も全て言うよ)と伝えた。誹謗中傷もある中で五ノ井さんが実名を出して訴えかけている姿に、(なんで自分はうそをついているんだろう)と説明。一部のわいせつ行為については目撃していないとしつつ、3被告に対し、『しっかり最後まで責任をとってほしい』などと訴えた。休廷から約1時間後、再開された証人尋問の中で、元上皮は五ノ井さんに提出した謝罪文について『自衛隊による事前チェックを受けて内容を直した』と明かし、『謝罪の際に自衛隊から(Q&A)を見せられたが、マニュアルの謝罪だと本当の反省は伝わらないと思いその場で自分の言葉で謝罪した』などと述べた。」
 私は、五ノ井里奈著 岩下明日香構成 「声をあげて」を読みました。
 実名を上げて強制わいせつ事件に関する調査を求める署名を集めている中で、「自衛官にはハラスメントがない。嘘の情報を流すのはやめてください。止めないなら、殺すぞ」との脅迫めいたメールが届いたこともあったとあります。
 被害を受けた五ノ井さんも退職に追い込まれ、加害行為に関与した5人の自衛官も懲戒免職となり計6人の自衛隊員が職を失いました。
 この事態に対して五ノ井さんは「新隊員を募集する前に、いまいる隊員をもっと大切にしてほしい。被害に遭った隊員が退職に追い込まれることがないように、助けて、守ってほしい。すぐに注意して問題視できる上官を育て、ハラスメント防止に対する意識を高めること。そして、ハラスメントはあってはならないものだという認識のもと、厳罰化することで再発防止につなげてほしい。」と語っています。
 この本を構成した岩下さんは、五ノ井さんの体調について次のように書いています。
 「五ノ井さんは、時おり『耳鳴りがひどい』と漏らし、沈黙することがある。『キーン』と耳の億で鳴っている音がうるさくて眠れないことがあるという。訓練による後遺症なのか、性暴力による後遺症なのか、被害を明かしてから『嘘をついているのではないか』などの否定的反応を受けた二次被害(セカンド・レイプ)が影響しているのかは、わからい。五ノ井が『心の傷は一生』というように、公務中に被った身体的・精神的な後遺症は、記憶と精神に深く刻まれている。その傷口を開き、痛みを他人に見せることは、当事者にとっては苦痛なはずである。」
 心の傷口を開き、痛みを他人に見せる苦しみを感じながら、法廷で、闘い続けている五ノ井さんを私は、これからも応援していきたいと思います。
 防衛省・自衛隊には、五ノ井さんの「声」に真摯に向き合い改善を進めてほしいと思います。
 巨大省庁に「声」で挑んだ五ノ井さんの手記「声をあげて」を是非、一人でも多くの皆さんに読んでいただきたいと思います。

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