第16回「このミステリーがすごい!」大賞(2017年)の優秀賞を獲得した、くろきすがや著「感染領域」を読了しました。
文庫本の裏表紙から本書の概要を引用します。
「九州でトマトが枯死する病気が流行し、帝都大学の植物病理学者・安藤仁は農林水産省に請われ現地調査を開始した。安藤は、発見した謎のウイルスの分析を天才バイオハッカー『モモちゃん』の協力で進めるが、そんな折、トマト製品の製造販売会社の研究所に勤める旧友が変死。彼は熟さず腐りもしない新種のトマト『カグラ』を研究していたが・・・。弩級のバイオサスペンス、登場!」
トマト枯死の原因は、ウイルス感染です。トマトの枯死が全国に広がります。
この状況を作者は、こう述べています。
「その先に待っているのは、人類および陸上の全生命体への壊滅的な打撃だ。なぜなら、地球上で、植物だけが環境からエネルギーを取り出し、動物など他の生命体の育生に必要な有機化合物を合成することができるからだ。食物連鎖の下部構造を成している植物が、あらゆる生物の栄養源なのだ。」
本ブログでは、初めての公表ですが、コロナの自粛の頃から日本園芸協会「薬草コーディネーター」の資格を獲得するために「薬草ガーデン講座」を受講しています。5回、課題提出が必要ですが、現在、3回まで課題を提出し、現在までは300満点中295点を獲得しました。
明日は、台風のため自宅待機ですので、4回目の課題提出に挑もうと考えています。
薬草ガーデン講座のテキスト1に、引用した小説部分と同一の事を指摘している以下の記述がありました。
「動物は他の生物を食べて、他の生物の中にあった有機物を利用して生活していますが、植物は『光合成』によって有機物を合成しています。植物のように、無機物から有機物を合成し、その栄養物質で生活できる生物を『独立栄養植物』、動物のように、他の生物の有機物に頼っている生物を『従属栄養生物』といいます。『従属栄養生物』である動物は、『独立栄養生物』である植物が存在しなければ生存することができません。」
食物連鎖の上部にいる動物は、食物連座の下部構造を成している植物に従属して生きているのです。
植物だけが、「光合成」によって有機物を作る力を持っているのです。
この小説は、植物の種を守ることの人類的意義を説いていると感じました。
この小説の解説でコラムニストの香山二三郎さんはこう書いています。
「トマトで起きたことは人体に起きても不思議じゃない。本書で描かれている病変は人体に害をなすパンデミックともパラレルになっている。」
新型コロナウイルスのパンデミックの中で、この小説を読み、この小説の意義を再認識しています。
香山さんは、解説でこのようにも書いています。
「本書のラストにほっとひと息つく人もいれば、こんなことがあり得るのかと震撼される向きもおられるようだが、ここで描かれた事件はいつ起きても不思議ではないのだ。本書がSFサスペンスであると同時にリアルフィクションでもあることをゆめゆめ忘れてはなるまい。」
作家の「くろきすがや」さんは、シリーズ第二弾「感染領域 ラストスタンド」をこの度、上梓しました。
事件はトマトで終わりではなかったのです。
今度の植物は、イネです。今、「感染領域 ラストスタンド」を読んでいます。
イネと言わば、収穫の秋を迎え、トビイロウンカが大発生して、甚大な被害を県内農家に与えています。
我が家の田にも影響がありました。県内各地でウンカの被害で全滅した光景を目にします。
山口県の農業は水稲中心と言っていいと思います。その水稲がかつてない被害です。
明日から県内に影響を及ぼすであろう台風10号の水稲など農作物への被害も心配されます。
トビイロウンカの被害が甚大に広がる中で、バイオサスペンスを読む意義を感じています。
トビイロウンカの被害については、県議としてもしっかり取り組んでいきたいと思います。
この点についてご意見をお聞かせいただきたいと思います。
くろきすがやさんの「感染領域」シリーズについての感想もお待ちしています。
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