4日、日本共産党山口県議団は、愛媛県教育委員会を訪ね「愛媛県立学校振興計画策定の背景及び流れ」について視察しました。視察の内容について報告します。
愛媛県教委の担当者から、高校再編計画の説明を受ける日本共産党県議団
愛媛県は、平成16年度から25年度までの県立高等学校再編整備計画を発表しました。
前期計画は、平成16年度から20年度までのもので、1校の募集停止と1校の分校化を進めました。
後期計画は、平成21年度から25年度までのもので、4校の募集停止と4校の分校化を進めようとしましたが、学校やOBや住民等の理解を得ることができずに、1校の募集停止のみを実施し、それ以外は見送りました。
愛媛県教委はその反省の上に立って、地域一体となった取組を次のように強化しました。
①地元地域住民、市町、中学校、高校などを構成員とする取組組織を結成
②学校の存続と活性化に向けた具体的な計画を策定
③計画に基づき取組を実施
そして、新しい県立高校振興計画の策定に向けて検討委員会と地域協議会を設置しました。
検討委員会は、計画策定過程における県教委への指導、助言をおこなうものです。
委員は、学識経験者、県外有識者、経済界、市長会、町村長会、高P連、小中学校長会、高等学校長会からの代表者で構成しました。
地域協議会は、県内8地区に設置をして、地域の意見を聴取しました。
会員は、各市町長及び教育長、地域住民、小学校校長代表、中学校校長代表、全県立高校・中等教育学校校長で構成しました。
それら組織は、令和2年度に発足し、令和4年度までの2年間審議を重ね、愛媛県教委は、令和4年度に計画案を公表しました。
この計画案を基に、県内8地区で説明会を開き、パブリックコメントを実施し、計画案に反対する団体との協議を行い、更に、教育委員による意見聴取会を開催して、令和5年3月に計画を決定・公表しました。
当初は計画決定時期を令和5年1月としていましたが、関係団体との協議や意見聴取会を実施したため、令和5年3月に延期しました、
計画案から変更されたものは、次の通りです。
①設置学級の変更②募集停止の延期③統合の1年延期です。
募集停止の延期を行った一つが、松山南高校砥部分校です。定員40名のデザイン科の募集停止を提案しましたが、砥部町から、ゲームクリエーション学科新設の提案があり、愛媛県教委がそれを受け入れ、令和7年度にゲームクリエーション学科が新設されました。
令和7年度から、40名の定員が、80名になり、砥部分校は募集停止から一転して、定員倍加を実現しました。
愛媛県教委は、計画案を提出する2年前に、県内有識者、県外有識者を含めた客観的な検討委員会を設けて計画を立案しています。更に、全ての市町長、教育長、県立学校長、地元の小中学校長の代表、地域住民が参画した地域協議会を設置して計画案を立案する前に意見を聴取する組織を作っています。
山口県教委のここ数年の高校再編の手続きを私なりに検証すると、計画素案を出す前に、愛媛県教委のような、県内外の有識者の意見を聞いていたのか、市町の代表の意見を十分聞いて、立案したのか甚だ疑問です。
更に、愛媛県教委は、計画案を出した後も、計画案に反対する団体と協議を行ったり、教育委員がそれら団体の意見を聞く意見聴取会を開催しています。
そして、出された意見を反映して、計画案を一部修正し、計画決定・公表を行っています。
山口県においては、宇部西高、高森みどり中学、熊毛北高の廃校の提案に対して、同窓会や地域住民などから反対陳情や請願が県や県教委に届きました。
山口県教委は、これら団体に、愛媛県教委のような、協議の場を持ったり、教育委員による意見聴取会を開催するなどの体制を取ってはいなかったと私は、感じます。
また、山口県教委の素案と成案を比べると、ほとんど何も変更されていないことが常であったと私は、感じます。
そして、愛媛県教委は、再編整備基準について、適正規模を以前の1学年4~8学級から3学級から8学級と緩和しました。
更に、今回の計画で地域への配慮を明確化しました。
学校が適正規模を下回っていても、1市町につき1校に限り、次の特別の統廃合基準を適用する「魅力化推進校」を認定することを明らかにしました。
①同一市町内にある県立高校等が1校で、その1校が適正規模を下回る。
②同一市町内にある県立高校等が複数で、そのうち1校以上が適正規模を下回り、その県立高校等が次のいずれかに該当する。
・島しょ部にある県立学校等
・教育委員会が特に認める県立高校等
愛媛県教委は、2学級以下の学校も1市町につき1校の「魅力化推進校」を認定し、学校を存続できるルールを作り、同一市町で複数ある高校の内1校が2学級以下であっても島しょ部にある県立高校などは存続できるルールを作っているのです。
愛媛県教委は、統廃合基準に合致した場合でも、関係市町から、市町立への移管の申し出があった場合は協議するとも規定しています。
山口県教委は、望ましい学級規模を1学年4~8学級とし、再編統合の基準を1学年3学級以下としている点は、地域への配慮を欠くものだと言わなけれなりません。
山口県教委は、「地理的条件、交通事情による生徒の教育への影響等を総合的に勘案」するとしていますが、愛媛県教委のような、どのようにすれば、地域への配慮が行えるのか、細かなルールを明確に策定すべきです。
私は、熊毛北高校を廃校にしたら、この地域の生徒が、柳井地域へ通学することは困難になることを重ねて指摘しましたが、山口県教委が、交通事情による生徒への配慮を行い、計画の見直しなどを行わなかったことを改めて指摘したいと思います。
愛媛県の県立高校は、全国募集を12校で行っていることが特徴です。
全国募集を行っている高校には、寮や交通費などの補助制度があることが特徴です。
これら補助制度は、市町事業として行われています。
鬼北町にある北宇和高校には、第一寮につづいて、第二寮を鬼北町が建設しました。全生徒の約1割が寮生活を送っています。
全国募集を行っている12校の内、9校が、全国的なプラットホーム「地域みらい留学」に登録されています。
愛媛県は、地域みらい留学登録校を対象に、当該地から愛媛県までの交通費宿泊費の半額(上限4万円)を補助しています。また、JR松山駅または松山空港から、対象校までの見学ツアー経費の全国を愛媛県が負担しています。
山口県内で、地域みらい留学に登録されているのは、山口県立大学付属周防大島高校(令和8年4月開校予定)のみです。
愛媛県では、県と市町が連携して、地域の学校の存続させていこうといういう姿勢に満ち溢れていると感じました。
その背景には、高校再編を検討するにあたって、地域協議会に全ての市町長や教育長が参加するなど、県と市町が協議する仕組み構築があると思います。
山口県の場合、県立高校再編に、市町の意見が反映できる仕組みが十分でないことに問題があると思います。
県立高校を子どもたちが地域で学び続ける、親たちが地域で生活していけるための大切な公共財として、県と市町が知恵と財政を出し合い、様々な制度を創設していることに感動しました。
総じて、愛媛県教委の高校再編は、ボトムアップによるものであり、山口県教委の高校再編は、トップダウンによるものだと痛感しました。
山口県教委は、県立高校を地域の大切な公共財として再認識し、高校再編素案について、当該高校の関係者はもとより、市町長や教育長、小中学校関係者、地域住民の声で、高校再編案を練り上げる体制を今からでも構築し、再検討することが大切だと感じました。
山口県教委は、くれぐれも、9月県議会文教警察委員会で示した素案を示し、2月県議会文教警察委員会では、成案を示し、今年度内には、計画決定・公表とのスケジュールありきで、形式的に、地域説明会とパブリックコメントをこなすような手続きを踏襲しないよう求めたいと思います。
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