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「力の正義」と「秘密主義」の拡大による「新しい戦前」を回避する道は歴史の教訓を顧みること

 15日付、中国新聞の山中和久論説主幹の「『力は正義』被爆地は認めぬ」という記事を紹介します。
 「戦後80年の節目に平和国家日本の歩みを振り返り、二度と戦争を起こさない、起こさせない、との決意を新たにしたい。何より見つめ直すべきは無謀な戦争に突き進み、国民を巻き込んだ国策の誤りだ。その帰結として広島・長崎への原爆が投下され、多くの命が奪われた。それゆえに被爆地は、核兵器廃絶とともに、不戦を訴えてきた。数年前から『新しい戦前』という言葉を耳にする。戦争体験者が激減し、悲劇が忘れ去られようとしているのではないか。戦後80年の世論調査で、先の戦争が『侵略戦争だった』と答えた人は70歳以上で半数を占めた一方、40代以下は30%台だった。アジアへの加害認識を巡る分断に驚くほかない。こうした状況と無縁ではなかろう。集団的自衛権の行使容認、敵基地攻撃能力の保有、防衛予算の大幅増、防衛装備品の輸出拡大・・・。敗戦で軍国主義と決別したはずの平和国家の変節が際立つ。中国などへの対応を念頭に、日本は米国の『核の傘』への依存を深めつつある。自衛や抑止の名の下に『力による正義』の危うさが垣間見える。ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃・・・。地球儀を回せば『力による正義』が横行する。その行き着く先は『核は正義』となる。絶対に認められない。非戦のために抑止力が必要だという主張は正論のようにも聞こえる。しかし、際限のない軍拡競争に陥りかねない。台湾有事を想定した日米拡大抑止協議では核兵器使用も視野に入れた議論が行われている。非核の国是が揺らぐ事態だ。何より国際ルールを踏みにじるトランプ米政権に安全保障を委ねる危うさを看過できない。戦後史の重みや、憲法の定める平和主義が抜け落ちているのではないか。しかも国民に十分な説明がないままに進められている。戦後日本は言論の自由を得たが、これでは戦前・戦時と変わらない秘密主義だ。自衛の名の下に戦争が始まった史実を忘れてはならない。北東アジアの緊張は日米同盟だけでは乗り越えられない。争いを防ぐ最大の抑止力は、官民を通じた外交力である。相手との対話を通じ、相互不信の解消に努めることが重要だと肝に銘じたい。日本の復興は、民主主義や法の支配を尊重する国際社会があり、日本が平和国家として歩んできたからこそ、成し遂げられたといえよう。国際秩序の再生に貢献する役割を日本は果たすべきだ。だからこそ私たちも、過ちを忘れず、平和への誓いを守り続けなければならない。歴史の教訓を顧みない動きには、被爆の惨禍を知るからこそ声を上げたい。それが80年続いた『戦後』を次世代につなぐ道になる。」
 私は、この盆休みに山口市のワイカムシネマで、山本薩男監督の映画「戦争と人間」の3部作を全て観ました。合計9時間を超える超大作です。日本が中国に侵略し、どのように戦線を拡大していったか、克明に描かれています。まさに、80年前までの日本は、「力が正義」だったことを実感しました。
 時同じく、NHKでは、昨夜までの2日間、NHKスペシャル「シミュレーション 昭和16年夏の敗戦」を放映しました。真珠湾攻撃の8ヶ月前に、時の政府内に「総力戦研究所」が編成され、軍官民から、若きエリートが招集され、日米開戦の戦局をまさにシミュレーションしました。研究所の結論は、日本の敗北となるーだったにも拘わらず、時の政府は、日米開戦を選択し、日中戦争からアジア太平洋戦争へ突入しました。時の政府は、「力は正義」を選択したのではないでしょうか。
 映画「戦争と人間」は、反戦を訴え、多くの若者が時の政府から拷問を受けるシーンが繰り返し映し出されます。映画で、吉永小百合が勤めていたのが、セツルメント診療所でした。私も、大学のサークルでセツルメントを行っていましたので、とても懐かしく感じました。このセツルメントにも特高警察が介入します。
 冒頭の記事にある反戦を訴える人々を弾圧する「秘密主義」が80年前の戦争を拡大する背景の一つであったことは間違いありません。スパイ防止法制定を訴える政党の台頭が、「新しい戦前」を想起させます。
 冒頭の記事を紹介しようと思ったのは、この言葉です。
 「歴史の教訓を顧みぬ動きには、被爆の惨禍を知るからこそ声を上げたい。」
 私は、今この、この言葉の重みを国民一人一人が感じる必要があると思います。
 私は、この夏、山本薩男監督の映画「戦争と人間」から、また、ブログに描いたように、笠原十九司著「南京事件 新版」から歴史の教訓を学びました。
 繰り返し、繰り返し、歴史の教訓を学んでいきたいと思います。
 そのことが「新しい戦前」にさせない道だと確信しています。

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