3日のしんぶん赤旗日刊紙「本と話題」のコーナーで川柳が取り上げられてました。
この中で、黒川孤遊著「流花 女性川柳家伝」が次のように取り上げられていました。
「近藤十四子は17歳で治安維持法によって逮捕され特高の拷問を受け、<踏ん張った手足が錠の中にある>を詠みました。飢餓に耐え二人の子を育てながら夫の復員を待った河村露村女の<船還れ母子の手足動く間に>。瀬戸内のハンセン病療養所で暮らす全盲の辻村みつ子が聞いた<小島には孤島に似合う浪の音>。日露戦争でロシア軍に捕らえられ処刑された父を悼む戸川幽子の<栄光の断頭台にゆきし父>。<反核の署名簿がある花の寺>と詠んだ島村美津子は女性版鶴彬とも評され、<もう二度と殺してはならぬ鶴彬>の句も。」
私は、この本を先日、書店に注文しました。今から楽しみです。
記事で紹介された女性川柳家の中で、島村美津子さんとは親交を深めました。
私と島村さんは、当時、時実新子さんが主宰する「川柳大学」で同じ同人でした。「川柳大学 2002年7月号に、島村さんは、私が、上梓した句集について次のような文章を寄せておられます。
「藤本一規句集『ぶらんこ』を読む 島村美津子 一規さんのことを、私はずっと、いかめしいじいさまだとばかり思っていた。何故なら県議会議員という肩書と、現在私が川柳を担当している『しんぶん赤旗』で、ずーっと以前からお名前を拝見していたように思うから。手のひらにすっぽりはまるサイズ、萌黄色の草原の広がりのような表紙。藤本一規句集『ぶらんこ』をめくると、微笑ましい写真がとびこんでくる。背負い紐にしっかりと子どもをおんぶした一規さん、ベビーカーにもう一人、さらにその横にも一人、ただいま子育て真っ最中、まさに『看護婦の父ちゃん頑張る』といった風景の、どう見ても三十歳そこそこの童顔の一規さんの姿に、想像とあまりの落差に『あれえ』と思わず声を出してしまった。市議会議員時代に一緒だった詩人の花田克己さんが、『多忙を極める県議会議員の活動の中で、忙しさに負けないで言葉を磨きつづけたものだと感銘した』と温かい序文を寄せられている。さらに一規さんが憧れの時実新子に弟子入りし小躍りして喜んだこと、その師の『伸びる芽』と題する愛情あふれる一文、ネーミングの天才である先生からいきなり『イッキさん』と呼ばれていたこと。エピソードも楽しい。そして、地元の川柳会や、『よーし、おれがやったろう』と、句集の発行を快く引き受けてくださった文芸誌のお仲間に恵まれて『ぶらんこ』は誕生した。自選百句は、十のテーマ別にそれぞれ十句、一気に読んでしまった。読後ほのぼのとした思いに浸れる、何ともホットな句集である。各テーマの中から私の好きな句を挙げさせていただく。家・喧嘩する父の存在ありがたい 私・春夏秋冬冬が最後は寂しいな 子・結び目のほつれを直す子の笑顔 旅・湯気昇る魂だけは引き留める 里・コメ輸入コスモス植える休閑地 悪・政治家の指に集まる蟻の群れ 和・戦争へ大きく舵を切る日本 世・お茶の水博士も未来わからない 技・脇役がよくて舞台が引き締まる 人・大地から離れ花瓶の中に居る『百句見せてもらったが、世にいうところのサラリーマン川柳に毛が生えた程度だ。けれども、その毛がところどころ光っている』時実新子の評にあるように、イッキさんの句は大いなる可能性をはらんだ骨太の芽であるように思える。藤本一規の人間性、正義感、人類愛が内包されている。やがて国会にも進出されて、ますます多忙な日を送られることになるかもしれないけれど、情熱と若いパワーで、川柳を書きつづけられて第二、第三の『ぶらんこ』が生まれることを期待させられる。いまどき、頒価百円というのもありがたい。誰にでも読んでほしい小句集。」
国会議員にはなっていないけれど、未だに、川柳の世界で人生を謳歌できているのは、島村さんらのおかげだと感じています。22年前の島村さんの文章に改めて感謝するばかりです。
私の本棚に、島村美津子さんの句集が二冊あります。
一冊は、2000年に発行された「花ばさみ」。
もう一冊は、2012年に発行された絵手紙川柳集「桜の咲く頃に』(改訂版)です。
1930年生まれの島村美津子さんは、「花ばさみ」の中で「少女時代を戦争という悪夢の中で過ごした私には、平和憲法も犯さない今の世の中が不安でなりません。」と書いています。
「花ばさみ」から島村さんの反戦に関する句をセレクトしてみます。
あなたの彼も連れていかれる戦場へ
防空頭巾の少女にもどり戦争展
今なら間に合う殺しはしない殺させぬ
皮膚垂れた八月の手を知っている
私も、島村さんと一緒にこれからも戦争のない日本と世界を願って川柳づくりを続けていこうと決意を新たにしています。
島村さんお元気ですか。また、お会いしたいです。
黒川孤遊著「流花 女性川柳家伝」を楽しみに待つ日々です。
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