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飯塚事件第二次再審査請求審の動向と映画「正義の行方」

 6日、しんぶん赤旗日刊紙は、飯塚事件の再審請求に対して次のように報じました。
 「1992年に福岡県飯塚市の小学1年の女児2人が殺害された『飯塚事件』で死刑が確定し、執行された元死刑囚=執行時(70)=の第二次再審査請求審で、福岡地裁(鈴嶋晋一裁判長)は5日、請求を棄却しました。弁護側は即日抗告する方針。死刑執行後に再審開始を認める決定が出れば初めてでした。2次請求審で弁護側は、元死刑囚の関与を否定する新たな目撃証言などが新証拠に当たると主張していましたが、地裁は『証言は信用できない』と結論付けました。弁護側は、事件の当日朝に登校中の女児2人が連れ去られたとされる飯塚市の現場で2人を見たと話した女性が『見たのは別の日』と証言を翻したと主張。女性は記憶と異なる調書を捜査機関に作成されたと訴えました。また、遺体の遺棄時間と近い時間帯に飯塚市内のバイパスで、車に女児2人を乗せて走る男を見たとの男性の証言も提出していました。鈴嶋裁判長は決定で、『女性の調書が作成されたのは事件の捜索が流動的な状況にあった時で、捜査機関が女性の記憶に反する調書を作成する動機、必要性は見いだせない』と指摘。男性の証言については、『面識のない女児2人の顔をはっきり覚えているという供述内容自体、不自然な感が否めない』などとして退けました。元死刑囚は無罪を主張しましたが、DNA型鑑定や目撃証言などに基づき死刑が確定。執行後の2009年に起こされた1次再審請求審では、鑑定が再審無罪となった『足利事件』と同じ時期、手法で行われたことから、信用性が主な争点となりました。福岡地裁は14年、『鑑定を除いた状況事実を総合した場合でも、元死刑囚が犯人であることに合理的な疑いはない』として請求を棄却。福岡高裁も地裁決定を支持し、21年に再審開始を認めない判断が最高裁で確定しました。
 5月30日のブログで、木寺一孝著「正義の行方」を読んだことを書きました。
 私は、今日までに、木寺一孝監督の映画「正義の行方」を観ました。
 映画のパンフレットで私の敬愛する森達也さんが指摘している通り「見ているあいだ、自分は今、とんでもない作品を観ているとの意識が、ずっと身体の内奥で駆動し続けていた。ここ数年、いや間違いなくもっと長いスパンにおいて、これほどに完成度が高く、そして強く問題を提起するドキュメンタリーは他にはない。」この実感を共有する作品でした。
 木寺監督が、映画のパンフレットに「インタビューの合間の映像は電動スライダーを使って絶えず動いており、さらに事件現場を俯瞰して動くドローンも多用し、事件が『動いている』ことを表現しました。」と述べているように、ドキュメンタリー映画を越えた芸術性を感じまた。
 映画後半に、飯塚事件を再検証する西日本新聞の特集を担当した記者のインタビューが出てきます。この辺りが小説「正義の行方」に克明に記されています。
 現在、西日本新聞の編集委員を務めている中島編集委員のコメントです。
 「裁判においてはですね、当たり前のことですけれども、証拠が不十分なら、無罪になるんですよ。無罪にならなければいけないんですよね。疑わしきは被告人の利益になるんですよ。それでいえば、その基準に照らせばですね、死刑にするだけの、十分な証拠があるとは思えない。」
 私は、小説と映画を通して、飯塚事件の問題点は、中島編集委員のコメントにつきると思いました。
 前のブログでも小説「正義の行方」から西日本新聞の宮崎元記者のコメントを引用しましたが、再度引用したいと思います。
 「ひとつの正義に寄りかかるんじゃなくて常に、いろんな人の正義を相対化して、という視点」
 私は、飯塚事件にこそ、この視点が必要だと思います。
 飯塚事件の判決には、検察の正義に寄りかかる判断となっています。
 弁護団が2度目の再審請求を行っている事実を高裁は十二分に検証していただきたいと思います。
 中島編集長の「疑わしきは被告人の利益になる」この原則を高裁は、十分に検証していただきたいと思います。
 80歳前後となられた弁護団の岩田弁護士、徳田弁護士の真実を解明しようとする姿勢に、映画でも小説でも感銘を受けたとこを最後に述べておきたいと思います。
 映画・小説「正義の行方」を多くの皆さんに観て、読んでいただきたいと思います。
 飯塚事件から、冤罪問題や死刑制度の問題を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
 そして、これからも動き続けている飯塚事件をしっかり見守っていきたいと思います。
 映画・小説「正義の行方」の感想をお聞かせください。

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