6日、上関原発をめぐり監査請求が出されたことについて、読売新聞は、7日、次のように報じました。
「中国電力と上関町で進める原子力発電所建設計画を巡り、県が予定地の公有水面埋め立て工事の完了期限の延長を許可したのは違法として、反原発団体の会員33人が6日、住民監査請求を行った。請求書では、福島第一原発事故後、上関原発の着工が見通せない中、県が延長を許可したのは適正かつ合理的な国土利用を求めた公有水面埋立法に違反すると主張。手続きに関わった職員の人件費を県に返還するよう求めた。」
6日に提出された請求書は次のようなものです。
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2023 年 6 月 6 日
山口県監査委員 御中
住民監査請求書
請求者 住 所 〒______________
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氏 名 ______________
山口県知事等の行為に対する措置を、地方自治法第 242 条第 1 項の規定により、別紙事実証明書を添えて下記のとおり請求します。
併せて、同法第 252 条の 43 第 1 項の規定により、当該請求に係る監査について、監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求めます。
記
1.請求の対象となる行為
中国電力(株)(以下「中電」)は、2022 年 10 月 5 日付で山口県知事に、上関原発建設用地埋立のための公有水面埋立免許の伸長許可を申請。
(1)村岡嗣政山口県知事(以下「知事」)は、2022 年 11 月 4 日、回答期限を同年 11 月18 日として、中電に補足説明書を送致した。
(2)中電は同年 11 月 11 日に補足説明書を提出、知事は同年 11 月 28 日付で中電に許可書を手交した。
(3)また知事は、同日付で中電に対して、「発電所本体の着工時期の見通しがつくまでは、埋立工事を施工しないこと」との要請書(以下「要請書」)を手交した。
(4)知事は、これらの行為のために職員に審査及び書類作成をさせた。
2.違法な行為の事実
(1)この度の公有水面埋立免許伸長許可は公有水面埋立法(以下「公水法」)第 4 条が定める免許適合要件を欠いた違法な行為である。従って、2022 年 11 月 28 日付の許可書、並びに付随する要請書の作成に係る費用は違法な支出である。
① 公水法は、第 13 条の 2 において、「都道府県知事正当の事由ありと認むるとき」は、埋立免許期間を伸長することができるとしているが、ここでいう「正当の事由」には、免許時における適合要件が引き続き有効であることが前提となる。逆に、伸長許可申請の事由に、免許適合要件の欠如が認められた場合、伸長を許可すべき正当な事由も欠いているというべきである。この点は、免許制度一般に照らしても明らかである。
② 知事は、この度も過去二回の伸長許可と同様に、伸長許可と同時に中電に対して要請書を手交している。知事はこの自らの矛盾した行為について、「別の立場」だと主張しているが詭弁でしかない。むしろ、要請書が表すのは、本埋立免許が既に公水法第 4 条第 1 項第 1 号「国土利用上適正且合理的なること」の適合要件を欠いているということに他ならない。
③ 要請書発出の理由は、要請書自体にも記されているとおり 2011 年 3 月に起きた福島原発事故以降、政府は新規原発建設を計画に組み込んでいないからである。この事は、直近の第 6 次エネルギー基本計画(2021 年 10 月 22 日閣議決定)にも継承されている。従って、政府はその審査会合も開催しておらず、またその前提となる新規制基準策定には未着手である。結果、中電も上関原発の本体建設着工の見通しを得られていない。こうした状況は、上関原発建設計画が、公水法第 4 条第 1 項第 3 号「埋立地の用途が土地利用又は環境保全に関する国又は地方公共団体(港務局を含む)の法律に基く計画に違背せざること」に抵触することを意味する。しかし、中電は、伸長許可申請の理由にこの事実を恣意的に報告していない。
なお、岸田首相の述べた新型原子炉は、上関原発とは全く無関係のものである。
④ 中電は、上関原発建設が政府の計画にあるかのように装うために、重要電源開発地点指定の継続の事実のみを伸長許可申請に盛り込み、知事もこれに便乗している。しかし、同指定はそうした主張の根拠足り得ないし、実際の効力もない。
「重要電源開発地点指定に関する規程」は閣議了解によるものであり、閣議決定である第 6 次エネルギー基本計画を超えるものではない。また、同指定の目的は、交付金により地元理解を促すことでしかない。従って、同指定は肝心の原子炉設置許可も要件とされておらず後回しにできる制度となっている。中電は 2016 年の埋立伸長許可申請以降ずっと重要電源開発地点指定を掲げてきたが、実際の埋立工事は全く進ちょくがないこと、そして知事も、埋立工期残余が明らかに不合理となっても中電に問い合わせすらしないのは、同指定のみでは埋立工事が進められないことは自明であ
るからであり、重要電源開発地点の効力が脆弱な証左である。
加えて、同指定の継続は違法性が高いものでもある。すなわち、「重要電源開発地点の指定に関する規程」は指定の要件として、「電源開発の計画の具体化が確実な電源であること」(第 4 条第 5 項第 4 号)と規定しているが、前述したとおり国は福島原発事故以降、エネルギー基本計画に新規原発建設を入れていない。本来ならば、同規程第七条第一項に依れば経産大臣は指定を解除できるところ、同大臣の不作為により放置されているだけのことである。
よって、重要電源開発地点指定の継続を以て、公水法第 4 条第 1 項第 3 号の適合
要件を満たしているとは言えず、知事の伸長許可は違法である。
⑤ また、この度の伸長許可により免許期間は 17 年 8 ヶ月となったが、公水法第 4 条第 1 項第 2 号により前置されている環境影響評価調査結果の、これほどの長期に亘る有効性は根拠がないに等しく、環境影響評価法違反の可能性が高い。この事は、政府としても認識しており、調査結果期限について同法の再検討のための中央環境審議会総合政策部会環境影響評価制度小委員会を設置し検討を継続している。またこの疑義については、重要電源開発地点指定についてもいえることである(同規程第 4 条第 5項第 2 号「環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)に基づく対象事業となってい
る場合は,その手続きが終了していること。」)。
(2) この度の公有水面埋立免許伸長許可は、地方自治法第 1 条の 2 第 1 項、及び憲法第 14 条、第 92 条に違反する地方自治の本旨を逸脱した行為である。従って、2022 年11 月 28 日付の許可書、並びに付随する要請書の作成に係る費用は違法な支出である。
① 前述したとおり中電は、この度の伸長許可申請の理由から、最大の理由である国の計画に上関原発建設が組み込まれていないことを恣意的に除外し、次の二点を理由とした。すなわち、「海上ボーリング調査の必要」「海上ボーリング調査に対する妨害行為」である。そしてこの二点も、本埋立免許が違法であることを示している。
地質調査である海上ボーリング調査は、中電自身が述べているとおり「埋立工事に先立って実施しなければならないもの」(2019 年 6 月 10 日付、伸長許可申請書)であり、埋立免許期間に含められるものではない。本調査は本来、公水法ではなく「一般海域の利用に関する条例」に基づくものであり、事実、中電自身も同条例に基づき、別途、一般海域占用許可申請を為し、知事もこれを許可している。
一方、本調査の必要性は、福島原発事故を経て政府が策定した原発再稼働のための新規制基準から、中電が独自に推察したに過ぎないものである。
以上の理由から、本調査の必要性に一定程度の合理性が認められるとしても、それはすなわち、埋立免許の適合要件を最早欠いていることを意味するのであり、知事は本埋立免許を失効とすべきであった。そして中電は、本調査を終了した上で、改めて埋立免許許可申請をするべきである。
しかるに知事は、海上ボーリング調査の必要を認めながら、公正な審査を怠り、本来公有水面埋立免許に含められない海上ボーリング調査工事を、中電の要望のまま無理矢理に同免許期間に組み込み免許伸長を許可した。この行為は、地方自治法第 1 条の 2 第 1 項が規定する「住民の福祉の増進を図ることを基本として」に違反すると共に、憲法第 14 条(法の下の平等原則)、憲法第 92 条(地方自治の本旨)に違反する行為である。
② 知事の為した、事前調査を埋立免許に組み込めるという公水法の解釈は、敷衍すれば前述した環境影響評価調査をはじめ、あらゆる事前調査を埋立免許に組み込み可能とすることに門戸を開くものであり、公水法第 4 条第 1 項第 1 号、第 2 号に抵触するだけでなく、公水法の立法趣旨にも反するものであるといわざるを得ない。
その結果生じるのは混乱である。事実、知事が、海上ボーリング調査期間を違法に公有水面埋立免許期間に含めたことは、当該海域を巡る権利問題について混乱を生じさせた。
海上ボーリング調査が本来の「一般海域の利用に関する条例」のみに基づいて審査されていれば、当該海域における自由漁業権者に対しても、中電は権利擁護義務があることは明白である(「一般海域占用許可基準」2-(4))。また、同基準によれば占用を許可できる場合は「社会経済上必要やむを得ない場合」(「一般海域占用許可基準」2)のみであり、既に述べたとおり、上関原発建設計画は国の計画にあるとは言えず、財界・政界からの諸要請に反して、未だエネルギー基本計画に政府が新規原発を盛り込めないのは、それを許さない世情があるからであり、これらに照らしても「社会経済上必要やむを得ない場合」には該当しないことは明白である。
従って、中電が伸長許可申請書で述べる「海上ボーリング調査に対する妨害行為」「権利能力なき社団および個人が調査地点付近に船舶を停泊させるなどの妨害行為を繰り返した」は、中電の独善的解釈というべきものである。まして、自ら混乱を生じさせている知事自身が、それを伸長許可の正当な理由と認める事は、「マッチ・ポンプ」とでもいうべき偽善であり、憲法第 92 条、及び地方自治法第一条の二第一項に違反する行為である。
(3) (1)と(2)については、前回 2019 年 7 月 26 日の埋立免許伸長許可についても該当する。従って、(1)と(2)の違法行為は、中電による 2022 年 10 月 5 日付申請書受理乃至は遅くとも審査開始時点から発生する。また、2022 年 11 月 4 日付補足説明請求書の作成及び送致に要した支出も違法な支出となる。
(4)知事の違法行為は、政府及び国会の違法行為に便乗しているだけでなく、憲法第 99条に違反している。従って、上記(1)〜(3)の支出は違法である。
知事が、公正を欠いた違法行為に及ぶ最大の要因は、山口県と中電の利益相反関係である。つまり、山口県は免許時に中電の筆頭株主であり、現在も第二位株主であり、山口県知事は中電の公有水面埋立免許の免許権者足り得るかについては甚だ疑義がある。
この問題は、国会でも議論されており、1973 年の公水法改正にあたり参議院建設委員会で、建設省河川局次長(当時)は、こうした場合は「建設、運輸両省で十分に指導通達等も出しまして、(まずそのような無願埋め立てがないようにいたしますとともに、)また工事中の監督等につきましても、適正化の指導を十分やっていきたいと思います」(丸括弧は筆者挿入。会議録第 23 号)と答弁している。
当然、「建設、運輸両省」による指導とは、地方自治制度上、単に上級庁であることのみが根拠ではなく、公有水面が国有財産であること、すなわち国有財産法により本来の監督権が大臣(現 国土交通大臣)にあることにその法的根拠がある。そして国有財産法はこの点について、次のように述べている。第 9 条の 5「各省各庁の長は、その所管に属する国有財産について、良好な状態での維持及び保存、用途又は目的に応じた効率的な運用その他の適正な方法による管理及び処分を行わなければならない。」ところが、13 年に及ぶ公有水面埋立免許を得ながら、全く進ちょくがない事実に対して、またそれを放置してる知事に対して、重要電源開発地点指定を違法に放置している当該大臣に
して、指導するどころか状況の調査も照会もしていないことは、明らかに前条に違反する不作為である。また、法定受託者である知事にも当該財産管理者として、同内容を保持する義務は当然ある。
また、公水法自体が、指摘され今後の課題ともしながらも、未だこうした利益相反を想定していないことは、国会の不作為であり憲法第 41 条に抵触する疑いが高い。
これらの結果、山口県は、中電と知事を介して、この度の住民監査請求内容の損害を被ったのであるが、知事はそれに便乗しているに留まらない。知事自身も、憲法を尊重するのみならず、擁護する義務を負っているのであり(憲法第 99 条)、従って、知事自身の責任として問われるべきことでもある。
3.請求する措置
知事は、対象となる知事の行為に際して県会計から支出した送料、及びその行為のために職員をして業務に従事させた月給から換算される当該時間給全額を、県会計に返還する、という措置を求める。
4.監査委員の監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求める理由
(1) 上岡康彦委員と平岡望委員は、山口県議会議員として、これまでに一度も上記の違法性について質したことがないため、監査委員としては不適任である。
(2) 小田正幸委員と河村邦彦委員は 2023 年 2 月 7 日付監査通知(令 4 山監査第 98 号)の監査において、監査対象となる「違法又は不当な財務会計行為」を、「支出金額の算定誤りや、二重支払、 架空請求、 補助金の交付要件に適合しない者に対する補助金の交付など」といたずらに矮小化し、すなわち住民監査制度そのものを軽視し、自らの職務に不忠実であることを露呈したため不適任である。
以上
・・・
私は、住民監査請求書を支持します。
県監査委員は、手続きに関わった職員の人件費を県に返還するよう求める住民監査請求を重く受け止め、適切に対処すべきです。
この問題に関する皆さんのご意見をお聞かせください。
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