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結城真一郎著「救国ゲーム」を読みました

 先日、中国四国防衛省に行った際、広島駅周辺の書店で結城真一郎著「救国ゲーム」を購入し、年末・年始で読了しました。
 本の帯から本書の概要を引用します。
 「希代のカリスマは、なぜ殺されたのか。『奇跡』の限界集落で発見された惨殺体。その背後には、狂気のテロリストによる壮絶な陰謀が隠されていた。否応なく迫られる命の選別。そして国民の分断ー。最悪の結末を阻止すべく、集落の住民・陽菜子は、『死神』の異名を持つエリート官僚・雨宮とともに、日本の存亡を掛けた不可能犯罪の謎に挑む。」
 ミステリ評論家の千街晶之さんは、本書を「政治的テーマを扱った近年の本格ミステリとして出色の出来。まだどれだけの抽斗を持っているのだろうと、空恐ろしく感じた。」と評しています。
 被害者の神楽零士は、消滅寸前の過疎集落を復活させる希代のカリスマ。神楽は、「好きな場所で思うまま生きる。それはすべての国民に与えられた当然の権利」と主張します。
 狂気のテロリストの『パトリシア』は、「政府はすべての過疎対策関連予算・施策の撤廃を表明し、今後はそれらの政策資本を政令市および東京特別区のために投じると宣言」するよう求めました。
 更にパトリシアは、神楽零士の殺害を認め、政府が先の要求を呑まなかったら「無作為に選んだ地方都市に対してドローンが無差別攻撃を仕掛けることになるだろう。国民たちよ、命が惜しければ政令市または東京特別区へ移住せよ。」と政府と国民に求めます。
 神楽を殺害する方法に関する記述は難解なものであり、私が十分理解しているとは言い難いですが、小説のテーマが「東京一極集中と限界集落」という日本の重大課題に置いている点は、限界集落で生まれた私として、地方政治家の私として、深く考えさせられるものでした。この日本の重大課題をミステリー小説としてエンターテインメント小説として、国民に投げかけた点で本書の意義は大きいと感じます。
 12月25日スポーツ報知は、12月25日放送の日本テレビ系「真相報道バンキシャ!」で社会学者の古市憲寿氏が、全国を襲う大雪に対して次のように発言したと報じました。
 「中長期的に考えると、大雪が降るような地域にいつまで皆さん、住むのかどうかみたいなことをある種、突きつけられているのかなと思います」
 この古市氏の発言が年末・年始ネットで大きな議論を呼びました。
 古市氏が指摘した問題こそ、本作「救国ゲーム」のテーマそのものです。
 古市氏は、テレビでこうも発言したと報じられています。
 「国としてコンパクトシティにしてもらって、日本中に人が分散して住むんじゃなくて、エリア、エリアごとに住んでもらいましょうとか。」
 私の住む宇部市では、2019年に「立地的適正化計画」を立て、「居住誘導地域」を設定しています。今、全国の多くの自治体が、この計画を策定しています。
 古市氏が指摘した方向で、地方は動き始めていると言っても過言ではない状況です。
 その上で、私は、この本で神楽が言う「好きな場所で思うまま生きる。それはすべての国民に与えられた当然の権利」が尊重される日本であってほしいと願います。
 以前、本ブログで、私が敬愛する中山徹さんの「人口減少と大規模開発 コンパクトとインバウンドの暴走」という本を紹介しましたが、私は、この本に学びたいと思います。
 中山氏は、今日、地方財政で市民向け予算の削減と行政改革が強まっていると指摘します。中山氏は、そのような地方財政の中で「自治体消滅を大規模開発で乗り越えるという発想」があり、その発想が「想定以上の人口減少を引き起こす」と指摘しています。
 問題は、地域経済衰退の原因を正確にとらえるということだと思います。
 中山氏は地域経済衰退は個人消費の低迷にあり、「これらの問題が解決に向かわない状況で、都市部の開発を進めても、消費が回復しません。」と指摘します。
 その上で、中山氏は、地域経済活性化の3つの方向性は次の通りだと指摘します。
 ①所得向上と雇用の安定につながる取り組み
 ②社会保障や教育施策を充実させる取り組み
 ③雇用の大半を占める中小企業政策拡充の取り組み
 今のままの政治が続けば、古市氏や政府が進めるコンパクトシティを進めても、地方は豊かになれないと思います。
 国民一人ひとりの所得と雇用を安定させ、社会保障と教育を充実させることを最優先させることこそ、地方を豊かにし、神楽の言う「好きな場所で思うまま生きる」権利が保障されることになると思います。
 国民一人一人の所得と雇用の安定と社会保障と教育の充実を図るならば、東京一極集中が解消し、地方で豊かに生きる道が太くなると思います。
 結城真一郎著「救国ゲーム」で地方で暮らす私たちの生活を立て直すにはどうしたらいいのか真剣に考えさせられました。皆さんも是非お読みいただきたいと思います。
 結城真一郎さんにはまり、今、彼の大ベストセラー「#真相をお話しします」を読んでいます。
 短編小説集ですが、一つ一つの話の結末に必ず『あ~』とか『え~』とか声を出してしまう私です。
 結城真一郎さんのミステリーは本当に面白いと思えます。
 結城真一郎さんの「名もなき星たちの哀歌」も購入していますので、#真相の次は、この本を読みたいと思います。
 結城真一郎ファンの皆さん、おすすめの作品をお教えください。
 社会派ミステリー「救国ゲーム」を読まれた皆さん、感想をお聞かせください。

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