来月4日、医療生協健文会 平和まちづくり学校(2021年度)が行われます。
私は、「社会保障・平和」問題でのコーディネーターを務めます。
第66回日本母親大会で行われた沖縄県の仲山忠克弁護士の記念講演を視聴した後、参加者の皆さんと一緒に、憲法9条について考えます。
そのような流れの中で、先日、仲山弁護士の記念講演を視聴し、仲山弁護士が取り上げられた問題を深める書籍を再読しているところです。 その一つが、先日、本ブログで紹介した笠原十九司著「憲法9条と幣原喜重郎 日本国憲法の原点の解明」です。
今日、紹介するのは、伊藤千尋著「凛とした小国」です。伊藤さんは、山口県下関市出身、大学卒業後、朝日新聞の記者を務められた後、現在は、フリーの国際ジャーナリストとして活躍されています。
この本は、表題のように、様々な小国が紹介されていますが、第一章の「平和憲法を活用するコスタリカ」の部分を紹介したいと思います。
コスタリカの概要について伊藤さんはこう書いています。
「この国は、1949年、日本に次いで世界で2番目に平和憲法を持った。日本と違って完全に自ら創り、しかも本当に軍隊をなくした。軍艦も戦闘機も戦車もない。周囲の中南米の国々が内戦で明け暮れた時代も、この国だけは平和を維持した。さらにかつてのコスタリカの大統領は内戦をしていた周辺の3つの国を回って戦争を終わらせ、1987年度ノーベル平和賞を受賞した。彼が行ったのは『平和の輸出』だ。自らの平和と中立を保ち世界の平和を広め平和国家としての地位を確立することが、この国の平和外交だ。」
伊藤さんは、コスタリカは「積極的平和を実践している」としてその内容を次のように紹介しています。
「北欧や米国で発展した平和学では、ただ戦争がないだけの状態を消極的平和と呼ぶ。しかし、一見平和に見えても飢餓や貧困、虐めや差別、社会格差など、構造的な暴力はある。国家間の摩擦や他国の争乱を放置すれば戦争の拡大につながる。社会をおかしくする障害を取り除き社会主義が実現された世界を構築することを積極的平和と呼ぶ。」
積極的平和を英訳すれば、Positive Peaceだと伊藤さんは書いています。
積極的平和と聞くと、安倍元首相が提唱した積極的平和主義を想起します。積極的平和と積極的平和主義は真逆なものだと伊藤さんは次のように書いています。
「日本では安倍首相が積極的平和主義を唱えるが、安倍首相が米国の保守派シンクタンクで語った言葉は、Proactive Contrribution to Peaceだった。Proactiveという言葉は先制攻撃を指す軍事用語で、『やられる前にやれ』という意味だ。邪魔な相手がいればやられるより前に武力で制圧しようとか、武力を強化して相手を威圧しようという発想である。平和の対局にある発想だ。日本語にするとき国民に受けやすい言葉に訳したのだが、意図的な誤訳である。むろん、国際的な平和学とは相いれない考え方だ。」
安倍元首相の言う積極的平和主義とは、まさに、岸田首相が言う「敵基地攻撃能力」も持つ力という意味であることが分かります。
同じ平和憲法を持つ国で、コスタリカは、まさに積極的平和の立場で「平和の輸出」を行い、一方の日本は、武力で海外に攻め入ることもやぶさかではないないという「敵基地攻撃能力」を保有しようとする選択を取ろうとしています。
コスタリカの平和憲法の元での教育について学ぶところ大です。伊藤さんはコスタリカの教育についてこう紹介しています。
コスタリカでは平和憲法をつくって軍事費を教育費に回そうと決めた1949年から、国家予算の20~30%が教育費に充てられてきた。2014年度は29・1%だ。実際に支出された数字をみると、発表された最新の統計の2009年で35・63%だ。憲法では『国の教育費は国内総生産(GDP)の6%を下回らないこと』と定め、その後は8%に増やした。」
自民党は昨年の総選挙向け政策集に軍事費をGDP比2%以上を念頭に総額を目指すと明記しました。
2021年度当初予算の軍事費は5兆3422億円でGDP比0・96%でした。仮に21年度の軍事費をGDP比2%まで増額すると11兆1900億円に膨張します。ちなみに2021年度当初予算の文教・科学関係予算は5兆3969億円です。軍事費をGDP比2%にすると文教・科学予算の2倍以上となります。
平和憲法を持つコスタリカは、軍隊をなくし、教育費をGDP比の8%にしています。一方の日本は、軍事費のGDP比を増加させ、教育費との格差が拡大しようとしています。
日本は、今、立ちどまって、平和憲法を持つコスタリカから大いに学ぶ時だと思います。一人一人の国民の幸せのために。
引き続き、今月は、憲法9条に関する書籍をしっかり学んでいきたいと思っています。
その内容を本ブログで紹介していきます。
憲法9条に対する皆さんの想いをお教え下さい。
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