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深沢潮著「乳房のくにで」を読んで

 深沢潮さんの「乳房のくにで」を読みました。
 「海を抱いて月に眠る」は、「歴史」がテーマでしたが、「乳房のくにで」は「現代社会」がテーマです。それぞれ読み応えと共感のわく内容に大満足です。
 「乳房のくにで」について、深沢潮さんは、11月14日号のしんぶん赤旗日曜版のインタビューでこう語っています。
 「家父長制の押し付けや女性を母性に縛り付ける発想など、一部の政治家と一般の人とのギャップがすごすぎます。出生や性別など、属性によってスタートラインが違うことは私にとってもうっ屈の原因として積み重なってきたものでした」
 「乳房のくにで」に、「一部の政治家」の代表として、「徳田康男」が出てきます。
 徳田康男は、後援会のパーティーのスピーチでこう言い放ちます。
 「女は子どもを産めなくなったら終わりだから、姨捨て山が復活したらいいんじゃないか。」「働きたいなんて言うようになって、女が生意気になった。なまじ頭がよくなったから、女は子どもを産まなくなったんだ」
 11月21日号のしんぶん赤旗日曜版には、ライターの武田砂鉄さんのインタビューが掲載されています。
 武田さんは、新刊「マチズモを削り取れ」を刊行しました。マチズモとは、スペイン語のマッチョ(男らしい男)が変化した言葉で、「男性優位主義」のことです。
 武田さんは、インタビューの中で次のように語っています。
 「いま権力を持つ人は圧倒的に男性です。コロナ禍でも、非正規雇用の女性が最初に首を切られました。社会が困難に直面した時、真っ先に権利をはく奪されるのが女性だということは明らかです。『これまずくないですか』と問いかけるのは、『家が燃えていたら消火器で消す』くらいに当然です」
 「乳房のくにで」の主人公の奈江は、徳田家の末裔に対抗してたたかう候補を、次の理由で支援します。
 「さんざん苦しまされた男性中心のしくみを変えていくことで、生きづらさを減らされるのではないか、と希望が持てた。その希望を糧に、境遇の違うさまざまな女性たちと手を携えることができる、と実感できた。」
 「乳房のくにで」は、「男性優位主義」を乗り越える希望の書であると、私は実感しました。
 小説の最後に、選挙で政治を変えようというメッセージにも共感が持てました。
 これからも深沢潮さんの小説から多くのことを学んでいきたいと思います。

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