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「バイヤード・ラスティンの生涯」を読んで

 ジャックリーン・ハウトマン、ウォルター・ネーグル、マイケル・G・ロング著、渋谷弘子訳「バイヤード・ラスティンの生涯」を一気に読みました。
 裏表紙にあるこの本のストーリーを紹介します。
 「バイヤードは、暴力に頼らずにトラブルを起こす達人でした。第二次大戦中、非暴力が正しいと信じて刑務所に入ることを厭わない勇気を持っていましたし、1963年の『雇用と自由を求めるワシントン大行進』を成功させた、頭脳明晰な人でもありました。キング牧師のような当時はまだ若い指導者たちに非暴力の闘い方を教え、そうした人たちを公民権運動で強い影響力を持つ人物に育て上げた謙虚な人でした。」
 バイヤードが語った次の言葉が有名です。
 「どんな社会にも、天使の心を持ちながらトラブルメーカーになれる組織が必要だ」
 この本の中で、この言葉の意味がこう書かれています。
 「バイヤードがいうトラブルメーカーとは、紛争解決の手段として、人種差別や性差別、貧困、暴力を武器として持ち出す人たちに、けっして妥協しない人びとのことです。また、天使の心とは、暴力を使わない優しい心のことです。」
 バイヤードは性的マイノリティであることをカミングアウトして性的マイノリティの人権を擁護する活動に取り組んできました。
 この活動について、この本にこう書かれています。
 (バイヤードが)「しばしば言っていたのは、ゲイやレズビアンに対する差別や偏見をなくすことは、合衆国における人権問題を前進させるためになすべき、もっとも重要なことではないかということでした。『今が民主主主義の世の中であると確信をもって言えるかどうか、また、人権活動家と呼ばれる人たちがほんとうに人権活動家であるかどうか知りたければ、(ゲイのひとたちについてはどう考えますか?)と聞いてみるといい。この問いこそ、今の民主主義がどのようなものであるか判断するためのリトマス試験紙であるからだ』とバイヤードは述べています。」
 「バイヤードはインタビューに答えてこう述べています。『もしゲイの差別をなくしたいのであれば、ゲイへの差別をなくしただけでは十分ではありません。だれに対する差別もなくす運動を前進させて初めて、ゲイへの差別もなくすことができるのです。すべての人のために闘い続けることで、ゲイや黒人、ヒスパニックの権利も、女性の権利も勝ち取ることができるのです』」
 バイヤードは、オバマ大統領から大統領自由勲章を受けました。
 授与式で、オバマ大統領は、バイヤードについて、次のように述べました。
 「バイヤードは確固たる楽観主義者で、鋼鉄の神経の持ち主でした。そして、重要なのは、バイヤードが、正しい大義のもとで、人々がまとまって行動すれば、わたしたちの行く手をはばむものはないと強く信じていたことです。この偉大な指導者は、キング牧師と長い時間、歩みをともにしたにもかかわらず、何十年と正しく評価されてきませんでした。ゲイであることを隠さなかったからです。どんな勲章も、彼がゲイである事実をかえるものではありません。しかし、わたしたちがどんな人間であれ、だれを愛しているかに関係なく、わたしたちに代わって真の平等への歩みを進めてくれたバイヤード・ラスティンの業績を、きょう、ここにたたえます」
 訳者の渋谷弘子さんが「訳者あとがき」でこう書いています。
 「バイヤードはいかなる場面でもクエーカーの教えに支えられ、愚痴ることなく、いつも前を向いて闘い抜きました。ゲイであるがゆえに、歴史の中に葬り去られようしとしていたバイヤードが、今、日の目を見られるようになったのは、社会が一歩前進したことの証かもしれません。それでも『まだまだ』です。昨今のBlack Lives Matter の運動を見たら、バイヤードはなんと言うでしょう。バイヤードは黒人差別やゲイ差別だけでなく、戦争や原爆にも強く反対し広く平和運動をしてきました。わたしたちの生きる世界は『まだまだ』なのです。やるべきことは山とあります。」
 私は、総選挙が終わった今、わたしたちの生きる世界は「まだまだ」やるべきことが山ほどあることを痛感しています。
 この時に、「バイヤード・ラスティンの生涯」を読んで、とても励まされました。
 楽観主義者で、鋼鉄の神経を持つバイヤードが今の時代をどう考えるだろうと想像します。
 この本を契機に、バイヤードのことをもっと知りたいと思います。
 多くの書籍や映画もあると聞きました。
 これからも、バイヤードとの対話を深め、「まだまだ」やるべき問題に対峙していきたいと思います。天使の心を持ちながら。
 「バイヤード・ラスティンの生涯」を一人でも多くの皆さんに読んでいただきたいと思います。

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