宇部市内への石炭火力発電所建設問題を考える上で、日本共産党の地球温暖化に対する見解を掲載したいと思います。
この政策は、2017年の総選挙時ものです。
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パリ協定の目的達成のために、地球温暖化対策の深刻な遅れを克服する
国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)は2015年12月に、工業化前(1850年ごろ)と比べて気温上昇を、今世紀末に2度を大きく下回るようにし、1.5度に抑える努力をするという新たな協定(パリ協定)を採択しました。今世紀後半にガス排出量を実質ゼロにすること(森林や海などの吸収分を上回る温室効果ガスの排出はしない)を決めた点も合わせて、「歴史的合意」と評価されています。パリ協定は昨年(2016年)11月、発効しました。
現在すでに世界の気温は約1度上昇し、対策がなければ5.4度も上がるとされます。185カ国がこれまでに出した対策を実行しても、約3度上昇するとされます。3度上昇すれば毎年45億人が熱波に苦しむなど、大きな影響が出るとされています。それを2度未満に抑え、さらに1.5度まで引き下げることを努力目標にするのが、パリ協定です。
先進国だけに削減数値目標を義務づけた京都議定書(1997年採択)と違い、途上国を含む世界のすべての国が温暖化対策に取り組むことで合意しているのが、パリ協定のもう一つの特徴です。とはいえ、先進国が引き続き指導性を発揮するよう求めていることに、変わりはありません。新協定の仕組みは「各国の自主努力の積み上げ」方式ですが、2度未満に抑え、さらに1.5度まで引き下げる努力をするという目標の下で、2023年以降5年ごとに自国の活動を見直し、取り組みを強化することとなっています。ことし7月、イギリスとフランスは、脱化石燃料時代に踏み出す取り組みとして、2040年を目途にガソリン・ディーゼル車の販売禁止を打ち出しました。
そういうなかで、アメリカのトランプ大統領は、ことし6月にパリ協定からの離脱を表明しました。中国に次ぐ世界第2位の二酸化炭素排出国であるアメリカ(2014年の世界の排出量の16%)が、「自国の利益」を口実に離脱したことに、各国の首脳や国際NGOから厳しい非難が寄せられました。
一方、安倍政権の温室効果ガス削減目標は、2030年までに「2013年比で26%削減」ですが、これを国際的な基準である1990年比に直すと、わずか18%削減にすぎません。日本の対応の抜本的見直しが求められます。政府は、2016年5月13日に閣議決定した「地球温暖化対策計画」で、「長期的目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」と明記していますが、政府の2030年削減目標のスピードでは到底、達成できません。NGOが、2030年までに日本が野心的に温室効果ガスを1990年比で「少なくとも40%~50%削減」すべきだと主張しているのは当然であり、日本共産党は、その実現に努めます。
パリ協定の目標に照らして、まったく逆行しているのが、日本政府が国内外で推進している石炭火力発電の建設です。
政府の長期エネルギー需給見通しにもとづく2030年度の電源構成に照らしても、すでに国内の石炭火力発電の発電量は目いっぱいとなっています。環境NGOの調査では、2012年以降、全国で49基(計2302万キロワット)が計画され、4基(231万キロワット)は事業リスクなどを理由に中止を決めましたが、すでに4基(50万キロワット)が稼働中で年間推計271万トンの二酸化炭素を排出しています。残りの41基(2021万キロワット)が建設・稼働されれば、年間推計1億1866万トンの二酸化炭素が排出されることになります。稼働中4基と合わせて1億2137万トン、温室効果ガスの排出増減の基準となる1990年排出量の9.5%に相当する量です。環境大臣のもとに設置された気候変動長期戦略懇談会が2015年2月にまとめた提言でも、「2050年には火力発電への依存度を極力減らす必要があり、…2050年までの残りの年数を踏まえると…特に初期投資額が大きく排出係数の高い石炭火力発電への投資には大きなリスクが伴う」と述べています。温暖化対策にとって致命的であり、こうした提言やNGOなどの批判のなかで、中部電力の「武豊火力発電所リプレース計画」に対し、環境大臣が「是認できない」「事業の再検討」という意見書を提出し、経産大臣も同様の「勧告」を出さざるを得なくなっています。
また安倍政権は日本再興戦略のなかで「インフラシステムの輸出」を掲げ、ODAと絡めて官民一体で石炭火力の輸出に力を入れています。インドネシア、ベトナム、インドなどで日本企業や邦銀が関わる石炭火力発電事業が、住民との間で人権侵害や環境破壊など深刻な事態を引き起こしています。それらの事業には、国際協力銀行(JBIC)が融資をしています。JBIC自身の環境社会配慮ガイドラインに照らしても明らかに反しており、計画の見直しと融資の中止を求めます。
日本の再生可能エネルギーの現状は、発電量の14%(2015年度、一般電気事業ベース。大型ダム水力を除けば5%)にとどまっており、2030年までに4割まで引き上げるよう目指します。一次エネルギーベースでは2030年に30%を再生可能エネルギーでまかなう「再生可能エネルギー開発・利用計画」を策定し、着実に実行していきます。
大型風力発電機、ヒートポンプや熱・電気併給システム(エコキュート)のコンプレッサーなどから発生した低周波音によって、不眠、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴りなど住民の健康被害が出ています。低周波振動の健康への影響についてただちに調査・研究を行い、環境アセスを義務づけた風力発電のように他の施設についても影響調査を義務づけ、環境基準や設置・建設のさいの距離条件の設定、累積的な・複合的な環境影響、低周波を発生しない製品の開発など、本格的な対応が必要です。個別の被害の調査への補助をおこないます。
また大型の太陽光発電に関しても、森林の伐採や、地滑り地域への建設、住環境への悪影響など、「乱開発」による住民との対立が起きています。環境規制の弱い日本では、事業化に当たってきちんとしたルールや規制を整備しないまま、利益追求を優先した乱開発が起き、環境保全や住民の健康・安全にかかわる問題を引き起こしています。事業者と地域住民の間で軋轢や紛争が生じることは、再生可能エネルギーの導入を、国民的な支持を得て進めていくのに、望ましい状況ではありません。事業の立案および計画の段階から情報を公開し、事業者、自治体、地域住民、自然保護関係者、専門家など広く利害関係者を交え、その地域の環境維持と地域経済への貢献にふさわしいものとなるようにします。一定規模以上の太陽光発電施設を建築物とし、土地の区画形質の変更とするなど、きちんとした法的な位置づけを明らかにし、環境基準を定めて、環境アセスメントの手続きの中に組み込んでいくことが必要です。十分に調査・検討した環境基準の早急に設定し、環境アセスメントの強化を図ります。
再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度を改善し、再生可能エネルギーの普及を進めます。(20、エネルギー を参照) 企業の目標達成のための補助的手段としての「国内排出量取引制度」は、原単位方式でなく、発電施設も含めた事業所の直接排出量の総量削減を定めます。
「地球温暖化対策の課税」として、石油石炭税の上乗せ措置が実施されましたが、不十分なものにとどまっており、さらに拡充をはかります。同時に、原油の国際価格急騰などの際には、課税がなくともエネルギー消費抑制効果が十分にあることを考慮し、税率を柔軟に変動できる制度を検討します。
HFC(代替フロン)は、オゾン層破壊効果はないが、高い温暖化効果があることからモントリオール議定書の規制対象物質に追加されました。冷凍冷蔵庫や食品製造工場などでのノンフロン化、低GWP化を推進します。また、HFCの生産メーカーの段階的削減を前倒しに進め、脱フロン社会の構築を目指します。
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地球温暖化を防止する努力に逆行する石炭火力発電所の建設は行うべきではありません。
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