議員日誌

黒い牡牛

 「ローマの休日」の脚本家として有名なダルトン・トランボが同じく脚本と務めた「黒い牡牛」を観ました。

 ジェニファー・ワーナー著、梓澤登訳「ダルトン・トランボ ハリウッドのブラックリストに挙げられた男」から、トランボが、「黒い牡牛」を撮影した頃の様子を概観してみたいと思います。

 1947年米国下院非米活動委員会は、9日間の公聴会を開き、共産主義の影響を受けた人物の特定を行おうとします。

 下院は連邦議会侮辱罪の容疑による出廷通告を公聴会で発言を拒否した脚本家10名に下します。

 トランボら「ハリウッド・テン」と言われた10名が、議会侮辱罪で有罪判決を受け、連邦刑務所で懲役1年の刑を宣告されます。

 トランボは、この頃から、多額の裁判費用を捻出するために、名前を隠しながら、脚本家として多くの作品を生み出していきます。

 トランボは、1950年ケンタッキー州アッシュランドにある連邦矯正施設に入所します。

 1951年、下院非米活動委員会は、第二次尋問を開始します。

 トランボは、アメリカ国内での生活を断念し、メキシコに逃亡します。

 メキシコ在住中にトランボが書いた脚本の一つが「ローマの休日」です。

 1952年に「黒い牡牛」の原案をトランボは書き上げます。

 「ダルトン・トランボ ハリウッドのブラックリストに挙げられた男」には、次のエピソードが書かれてあります。

 「メキシコ市に滞在中、ヒューゴ・バトラー(脚本家)はメキシコの国技である闘牛にすっかり魅了された。日曜日にはかならず地元の競技場に通い、この公開競技の伝承と意義に関する資料を読むことに没頭した。トランボにはさっぱり理解できないことで、見物に行った最初の試合で不手際によって生じた残酷な殺害を目撃してからは問題にもしなかった。食用に牛を殺しているのだから闘牛をことさら問題にするのはおかしい、とバトラーは反論したが、自分の牧場で数頭の乳牛と牡牛を飼育していたトランボは、バトラーの考えに同調できなかった。闘う牡牛は畜殺を待つだけの食用牛とは違い、闘牛士に反撃できるし、勇猛さをつくして闘えば観衆から『インダルト(許しを)!』の大合唱が起きて、殺されずにすむ、とバトラーが主張しても意見を変えなかった。トランボは実際にふたりで観戦した試合で、一頭の牡牛が殺されずに開放される情景に立ちあった。」

 吉村英夫著「ハリウッド『赤狩り』との闘い」で吉村さんは、トランボが脚本を書いた「黒い牡牛」についてこう書いています。

 「何よりもクライマックスの闘牛場のシーンは盛り上がる。名闘牛士と闘牛イタノは、いつまでたっても勝負がつかない。すなわち闘牛士は牛にトドメを刺そうにも刺せないのである。熱狂している七万人の観客からイタノの勇猛さを讃えて『恩赦を!』(インダルト=釈放)との声があがり、それが天にも届く合唱となって、ついに主催者は、インダルトを受け入れ、『中止』を宣告する。助かったイタノにかけよって抱きつくレオナルド少年。観衆=民衆の大合唱が、事態を切り開くという筋立てのなかにトランボの願いが込められている。あるいは民衆への愛着のなかにトランボの意図が読み取れる。ある意味で、この作品にはトランボの思想性が、もっともストレートに出ているのではないかと思われる。」

 30日は、沖縄県知事選選挙の投票日です。

 22日の「うまんちゅ大集会」で翁長岳志知事の妻・翁長樹子さんは、こう訴えました。

 「今度の選挙は静かに結果を待とうと思っていたけれども、日本政府のあまりのひどさ―権力を総動員して沖縄の民意を押しつぶそうとする日本政府のやり方に『何なんですかこれは』という気持ちでこの場に立った」

 「黒い牡牛」のラストで、闘牛場を埋め尽くした民衆の『インダルト』の叫び。 

 沖縄では、日本政府のやり方に「何ですかこれは」との叫びが広がっています。

 「普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること」とする「建白書」を実行できる「デニー候補」を何としても知事の座に押し上げなければなりません。

 「黒い牡牛」は、牡牛を愛するレオナルド少年の愚直な心打たれました。

 レオナルド少年の愚直な心が民衆に伝わって黒い牡牛「イタノ」の命が守られました。

 「命どう宝」(命こそ宝)の沖縄の心と通じるテーマが「黒い牡牛」にありました。

 「黒い牡牛」を観ながら、「オール沖縄」デニー候補の勝利を願いました。

 沖縄に知人の方がおられたら「デニー候補」をよろしくと声をかけて下さい。

 トランボ脚本作品を観ることが出来て幸せでした。

 トランボ脚本作品をご存知の皆さん。お勧めの作品をお教え下さい。

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1件のコメント

  1. 感動しました。「黒い牡牛」映画ファンとして見過ごしていました。YouTubeでは字幕がスペイン語ですが学習歴60年の英語力で頑張って観てみます。ありがとうございました。

    by 宮城正時 — 2019年2月10日 11:48 AM

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