議員日誌

「わたしで最後にして」読書ノート①

 きょうされん専務理事の藤井克徳さんの「わたしを最後にして ナチスの障害者虐殺と優生思想」を読んでいます。

 私にとって、この本は、今年読んだ本の中で一番印象に残った本と言いきれる本です。

 私は、日本福祉大学で障害者福祉を学び、当時全国に広がり始めた障害者共同作業所で実習を行いました。

 将来は、障害者共同作業所に関わる仕事がしたいという時期がありました。

 その頃から藤井克徳さんの名前は存じておりました。

 藤井さんの自著を読むのは初めてでしたが、出会えて本当よかったと思える本でした。

 私は今、西宇部校区人権教育推進委員協議会の会長を務めていますが、様々な人権問題を考えるベースに出来る本だとも思えました。

 この本の冒頭で藤井さんは優生思想と日本の現代ついてこう書いています。

 「遺伝の領域と結びつく優生思想ですが、その基本は『強い人だけが残り、劣る人や弱い人はいなくてもいい』という考え方です。この優生思想、けっして過去の話ではありません。私たちの日本社会にも深く潜み、いまもときどき頭をもたげるのです。たとえば『重度障害者は生きていても仕方がない。安楽死させたほうがいい』とした2016年7月の『やまゆり園事件』も、この優生思想と深く関係があります。また、被害者の勇気ある訴訟で一気に浮上した、日本の優生保護法の下での強制赴任手術の問題や、後を絶たない為政者による障害のある人やセクシャルマイノリティの人たちを傷つける発言も優生思想が生きている証拠です。大規模な自然災害や経済不況などで社会がバランスを崩したとき、決まって障害のある人に被害や影響が集中します。障害のある人とない人との暮らしぶりの格差は、いっこうに埋まりません。これからも優生思想と無縁ではなさそうです。障害のある人だけでなく、弱い立場にある人の大半が生きづらさを感じたり、目にあまる格差社会や不寛容社会が進行していること、聞くにたえないヘイトスピーチなども優生思想が影響しているのです。」

 私は、「やまゆり園事件」や為政者の人権侵害発言が後を絶たない問題の背景に優生思想があることを知り、優生思想とは何かを知るたかったのですが、そのことが叶う最良の書が本書だと言えます。

 その上で、ヒトラー政権下で行われた「T4作戦」は、凄まじいものです。

 藤井さんは、この作戦を「障害者の殺害作戦」「価値なき者の抹殺を容認する作戦」と書いています。

 障害者・病人専門の殺害施設がドイツ全土に6カ所ありました。

 藤井さんは、T4作戦の首謀者は、ヒトラー率いるナチスと精神科医のエルンスト・リューディンを頂点とする医療関係者だったと書き、次のようにまとめています。

 「T4作戦は、政治と科学の結託が生み出した最大級の悪事です。ここでの政治とは、ナチスの『戦争を推し進めるうえで、障害者は邪魔な存在』とする考え方で、科学とは、多数の障害のある人の殺害を通して大量の医学的な資料を得たいとする医療界の欲望です。そして、もう一つ見逃してはならないのは、両者の間には共通のベースがあったことです。それは、優生学に基づいた協力な優生思想です。」

 T4作戦は、1940年1月から1941年8月24日です。

 しかし、「T4作戦の野生化」と言われる状況が続きました。

 「T4作戦の野生化」とは、地方自治体が命令を出し、「闇の中のT4作戦」として広がりました。

 「T4作戦」による犠牲者が7万273人でした。1941年8月下旬以降、「野生化」した後の犠牲者は13万人以上と推計されています。

 第二次世界大戦中のドイツで虐殺された障害のある人の数は20万人以上となり、ドイツ占領下の欧州各国を含めると30マン人を下回らないと藤井さんは書いています。

 ドイツは、障害者の方々を殺害した施設を残しています。

 2010年11月26日ドイツ精神医学精神療法神経学会の年次総会で、フランク・シュナイダー会長は。「ナチス時代の精神医学-回想と責任」と題する特別講談話を発表しました。

 談話は「みなさん、われわれ精神科医は、ナチスの時代に人間を侮蔑し、自分たちに信頼を寄せてきた患者の信頼を裏切り、だまし、家族を誘導し、患者を強制断種し、死に至らせ、自らも殺しました。患者を用いて不当な研究を行いました。患者を傷つけ、それどころか死亡させるような研修でした。この事実に直面するのに、そしてわれわれの歴史のこの部分と率直に向き合うまでに、どうしてこんなに長い時間がかかったのでしょうか」で始まっています。

 ドイツは、「T4作戦」を含めた戦争の実情を後世に残す活動がこの10年行われるようになりました。

 これらの事実は、2015年にHNKで放送されたようですが、私は、この本で、ナチスの障害者大虐殺の事実の詳細を知りました。

 「生産性がない人は生きる価値がない」との言論が繰り返される日本で、今、この本が一人でも多くの方に読まれるべきだと思います。

 この本には、日本の優生保護法の問題や「やまゆり園事件」についても詳しく書かれてあります。

 また、優生思想に対峙する障害者権利条約についても詳しく書かれてあります。

 この本は学ぶところ満載です。「T4作戦」以外の問題については、明日以降のブログで取り上げていこうと思います。

 藤井さん、素晴らしい本をありがとうございました。最後までしっかり学びたいと思います。

 優生思想について皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

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