議員日誌

コンパクトとインバウンドの暴走

 奈良女子大学教授の中山徹さんの「人口減少と大規模開発 コンパクトとインバウンドの暴走」を読みました。

 議会から離れて3年。直接、行政の方々から説明を受ける機会が少なくなっているから見えてくる点もあるのかも知れません。

 最近、コンパクトとインバウンドという言葉が溢れ違和感を持っていた時に、しんぶん赤旗の本の宣伝文を見て、この本を注文し、ここ数日で一気に読みました。

 この本に今の自治体が置かれている構造が詳らかにされていました。

 この本の「はじめに」に本書に意図が書かれています。

 「普通に考えますと、人口減少が進めば、大規模な開発計画は下火になりそうです。ところが人口減少が本格化しているのと反比例する形で、大規模開発計画があちこちで立案されており、まだまだ増えそうな勢いです。なぜこのような奇妙なことが起こっているのでしょうか。」「自治体が大規模あ開発にのめり込む一つの動機はインバウンドを増大させるためです。」「自治体が大規模開発にのめり込むもう一つの動機はコンパクトです。」

 山口県の人口は、2015年140万人だったものが、2030年は123万人、2045年は2045万人と大幅に減少しています。しかし、あちこちで、大規模開発計画が立案されています。県内では、下関北九州道路に建設や山陰道などの高速道路網の整備や宇部港などの大型港湾整備などが目白押しです。そして今年は「山口ゆめ花博」などが開かれます。

 山口県で巨大開発にのめりこむ一つの動機が「インバウンド」を増大させることだということが分かります。

 中山さんは、「地域経済が衰退している最大の理由は個人消費の低迷です。日本経済全体で個人消費の占める割合は約6割です。この個人消費が上向かない限り、地域経済はもちろんですが、日本経済そのものが回復しません。」と述べています。

 外から人が来るからと言って大型開発を行う大きなイベントばかりを行っても、中国四国九州と周辺の人口も減少し、そもそも個人消費が冷え込んでいる最中に、採算はとれるのか言わなければなりません。
 コンパクトシティという点では、私が住む宇部市を始め、県内の多くの自治体で「立地適正化計画」を策定しています。
 中山さんは、「コンパクトとは、中心部に商業施設や公共施設を集約することです。」とコンパクトも大型開発と結びつくことを指摘しています。

 更に中山さんは、これら財源について「今回は、起債に求めることが困難です。1990年代とは異なり、国も自治体も財政状況が悪いからです。そのため、最初から市民向け予算の削減、行政改革(アウトソーシング)で開発に係わる予算を確保しようとしています。」と指摘しています。 
 山口県は22年度までの5年間で定員を657人削減しようとしています。教育職員は470人削減です。県が行ってきた177事業を削減し、県有施設の廃止も進めようとしています。
 行革により生まれた財源は、高速道路網の整備や大型港湾開発やイベントなど「インバウンド」を行う費用や「コンパクトシティ」を進めるための中心部の開発に回そうとしているのであれば大問題です。

 中山さんは、「人口減少を的確に受け止め、市民と行政が一体となって、そのような事態を乗り切ろうとしている自治体もあります。それら自治体は大規模開発に頼らず、少子化対策を進め、農林漁業や再生可能エネルギー、福祉で雇用を確保しようとしています。このような自治体を市民共同自治体とします。」と述べ、開発型自治体と市民共同自治体の中間に、保留型自治体があると述べています。

 中山さんは「開発型自治体には暴走ともいえる政策の転換を求めなければなりません。そうしなければ自治体消滅が現実化しかねません。保留型自治体には、迷わず、自信を持って市民共同自治体の方向をとるおうに働きかけなければなりません。市民共同自治体には、基本的な方向性を堅持しつつ、政策の充実を求めるべきです。自治体が地域の実態を踏まえた施策を追求すると同時に、その可能性を高めるため、自治体が連携して国に政策転換を求めるべきです。この両方を追求することで自治体は、今の時代にふさわしい自治体になります。」と述べています。

 山口県は「開発型自治体」と言えるのではないでしょうか。政策の転換を求めていかなければなりません。

 同時に、「インバウンド」「コンパクト」を強制するローカルアベノミクス政策の転換を国に求めていかなければならないと思います。

 来年の県議選挙まで約1年。明日は、故郷荒滝で私を囲む会を行います。

 中山間地域がこれからも存続するためには、「インバウンド」「コンパクト」の暴走を食い止めていかなければならないと感じています。

 中山徹著「人口減少と大規模開発 コンパクトとインバウンドの暴走」は、これから1年間、自治体政策を考える私のバイブルの一冊となるでしょう。

 明日もこの本の内容を分かりやすくお話したいと思っています。

 「インバウンド」と「コンパクト」の暴走をあなたはどう感じておられますか。

 ご意見をお聞かせ下さい。

 

トラックバック

コメントはまだありません

No comments yet.

コメント

コメント公開は承認制になっています。公開までに時間がかかることがあります。
内容によっては公開されないこともあります。

メールアドレスなどの個人情報は、お問い合せへの返信や、臨時のお知らせ・ご案内などにのみ使用いたします。また、ご意見・ご相談の内容は、HPや宣伝物において匿名でご紹介することがあります。あらかじめご了承ください。