議員日誌

こぐま保育園の学習会で講師を務めました

 本日、こぐま保育園で行われた学習会の講師を務めました。

 演題は、「子どもの未来のために政治を考える~基地と原発と憲法~」でした。

 私のお話しした要旨は以下の通りです。

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 こぐま保育園の関係者の学習会にお招きいただきましてまことにありがとうございます。自己紹介をさせていただきます。私の長男は今年20才になりますから、彼が産まれた直後の19年前から、今年中学校に今年13歳の長女が卒園する7年前まで、合計12年間4人の子どもがこのこくま保育園でお世話になりました。丁度山の園舎の建て替え前後に、こぐま会の運営委員長を5~6年務めていました。園舎の建て替えに合わせて、保育園の認可を行政に求めていました。当時、私は、宇部市議会議員そして山口県議会議員を務めていましたが、認可は認められませんでした。

 この時の経験に照らしても「森友学園」の問題は許されないと感じます。

 今日は、私が長年、山口県政に関わってきたり、今、国会議員の候補などをやる中で感じた、子どもにとってよりよい政治とは何かを今日は皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

 今日の学習会に参加するにあたって、保育の問題に関する本の多数執筆されている立教大学の浅井春夫教授の「戦争する国・しない国」という本を参考にして話を進めていきたいと思います。

 浅井先生は、私の母校である日本福祉大学の大学院を卒業後、児童養護施設で、12年間児童指導員として勤務されてきた経験をお持ちです。福祉を学び、平和を求める私として、この本はバイブルだと感じています。

 1904年(明治37)年の「東京孤児院月報」の、東京孤児院監事の桂木頼千代さんが「戦争と慈善」という文章を書いておられます。

 「凡そ世に戦争程非慈善的の大なるものはあらず。多くの壮丁(成年男子)はこれが為に殺され、多くの廃者はこれが為に生じ、多くの老者はこれが為に扶養者を失ひ、多くの妻女はこれが為に寡婦となり、多くの児童はこれが為に孤児となり、あらゆる人生悲哀苦痛はこれが為に起り来る。」

 1904年とは、日露戦争が始まった年で、満州を主戦場に日本が戦争を起こし、日本の軍人・軍属108万人が戦争に参加し、8万4000人が戦死し、戦傷者は14万3千人を数えます。

 どのような戦争も「正義と平和」や「自衛」「国土防衛」の名のもとに遂行されますが、「戦争の後始末」を担ってきたのが社会福祉事業でした。

 戦争孤児や寡婦と子どものための施設が保育所のルーツと言えます。

 こぐま保育園も加盟している全国保育団体連絡会の目標の5を観ます。

「わたしたちは、この地球上に戦争の惨禍が二度と子どもたちに及ぶことがないよう、国際連帯のもと、平和と民主主義の発展をめざします。」とあります。子どもを守るとことと平和を守ることの統一性を考えます。

 浅井春夫さんは、「戦争する国・しない国」の中で、戦争をしない国・軍隊を持たない国であることの利点」が5つあると書いておられます。

 第一に、戦争することで、最も浪費的な兵器や燃料購入、兵士の徴用に財政を投入することがない分、福祉や教育、医療などに財政投入ができる。大きな枠組みであれば、『大砲かバターか』という課題設定は現在もその国の姿勢として問われるべき選択肢である。

 第二に、軍隊を持たないことで、軍隊の維持費分を人間の暮らしや教育分野にまわすことで、「人間の安全保障」のための施策を充実させていくことができている。安全保障政策において、国家の安全保障ではなく、人間の安全保障への転換をするかどうかが問われている(「人間の安全保障に関する国連総会決議」(2012年9月10日)。

 第三に、戦争すれば、建物の被害とともに戦争孤児や戦争による障がい児などを生み出すことになる。その現実は福祉や医療の対象を増大させることになり、結果として戦争の『後始末的な施策』に財政を投入せざるをえなくなる。戦後の応急的な施策ではその福祉・教育・医療などの質は低劣にならざるを得ないのである。北欧の高福祉水準は、二度の世界大戦に加わらなかったことで福祉の発展を中断し阻害しなかったことが大きい。

 第四に、軍隊によるクーデターという実態を未熟に防ぐことがあげられる。軍隊が政治権力を踏みにじってしまう機能を持っていることも厳然たる事実であり、国内における武力行使・戦争状態をつくることを防ぐことにもなる。

 第五として、軍事力に頼らない平和の確保のためには、いかなる外交が必要であるかを議論することで国民的合意を形成し、生活レベルでの平和を実現していくことが重要になっている。そうしたプロセスが立憲主義に基づいて平和主義と民主主義を具体化する民意を形成することにつながっていく可能性が大きいといえよう。

 ここで、原子力発電について考えてみたいと思います。私は、先日、立命館大学名誉教授の安斎育郎さんのお話しをお聞きしました。安斎さんは、東大に原子力発電を研究するコースが出来た時の第一期生。原発の当初から疑問を持ち、一貫して脱原発の発言をされてきました。安斎さんが、1972年に日本学術会議で基調講演を行われた時の原子力発電の6つの点検基準は今こそ検証すべき問題であるので紹介します。

 第一の点検基準は、自国に根ざした自主的なエネルギー開発であるのか否かという点であります。

 第二の点検基準は、経済優先の開発か、安全確保優先の開発かという点であります。

 第三の点検基準は、自主的・民主的な地域開発計画とどう抵触するかという点であります。

 第四の点検基準は、軍事的利用への歯止めが保障されているか否かという点であります。

 第五の点検基準は、安全性の確保、すなわち発電所労働者と地域住民の生活と生命の安全を保障し、環境を保全する十分な歯止めが、どれほどの実証性をもって裏付けられているかという点であります。

 第六の点検基準は、原発に対して民主的な行政が実体として保障されているのか否かという点であります。

 第四の軍事的利用への歯止め点で、先日、児童文学者の那須正幹さんのお話しをお聞きし、驚愕しました。那須さんは、広島で3歳の時に被ばくされました。福島原発事故後に福島で講演して、ある児童から「私たちは、30歳になるまでに死ぬと思っていましたが、先生は3歳のときにいっぱい放射能を浴びたのにお元気なのを見て、すごく安心しました。」との感想を聞いて、放射能は、人体だけでなく心もむしばむことを知り、上関原発を建てさせない県民集会の共同代表を務めておられます。

 2016年6月に「原子力基本法」の2条2項に「我が国の安全保障に資することを目的に行うものである」という文言が張ったこと、我が国が保有するプルトニュームは48トンに達し、核兵器6000発に相当する莫大な量であることを話されました。原発も非福祉的行為と言えます。

 それでは、日本の軍事的現状と岩国基地をめぐる状況を見ていきます。

 資料1が日本の軍事費の推移です。昨年度から5兆円を超え、今年度は、5兆1300億円です。辺野古新基地建設を含む米軍関連経費は、3985億円で過去最高額を大きく更新しました。岩国基地への米空母艦載機移転は前年度比190億円増の902億円です。V22オスプレイ391億円(4機)、F35戦闘機880億円(6機)なども購入します。

 さて、岩国基地についてです。米海兵隊岩国基地に、最新鋭のF35B戦闘機部隊が10機配備されました。8月にも残りの6機が岩国基地に配備されようとしています。米海兵隊がF35Bを海外の基地に配備するのは初めてです。今年後半から、米海軍厚木基地から空母艦載機部隊の移駐が始まります。岩国基地の所属機が130機規模となり東アジア最大の航空基地になろうとしています。岩国基地が、米海兵隊と米空母打撃群の海外出撃=殴り込みの一大拠点となろうとしています。

 F35Bは、敵のレーダーから捕捉させにくい隠密性に優れ、垂直離着陸できる最新鋭戦闘機です。F35Bは昨年10月、米国内を飛行中に、兵器を格納する場所から出火するとう重大事故が起きました。日本政府は事故原因の最終的な調査が終わらないうちに、「機体に構造上の問題はない」とする米側の説明をうのみにして、岩国基地配備を予定通り受け入れました。

 米国防総省運用試験・評価局が1月に米議会に提出した最新の年次報告書で、F36戦闘機に「重大な276項目の欠陥が特定した」と明記していることが分かりました。岩国基地への配備は撤回することが必要です。

 岩国基地はオスプレイの拠点施設でもあります。オスプレイは、現在24機が普天間基地に配備されていますが、2012年7月に12機、2013年7月に12機、陸揚げされたのは、岩国基地でした。

 そして、オスプレイ運用の資料に、「岩国基地に1個分遣隊(2~6機)を月2~3日、給油を目的として派遣」するとあります。

 オスプレイが普天間に配備が完了した14年は、37回。15年は19回、16年に22回。今年は、6回も飛来しています。オスプレイは昨年12月に沖縄本島沖で墜落事故を起こしました。国民の命と安全よりも、日米軍事同盟を優先させる政治を転換しなければなりません。

 次に、日本の原発をめぐる状況と上関原発をめぐる状況を見ていきます。

 東京電力福島第一原発事故は、事故後から6年近くが経過しましたが「収束」はほど遠く、8万1千人もの人々が避難生活を強いられています。

 資料2は、3月25日の毎日新聞。作家の柳田邦夫さんのコラムです。

 安倍首相は、震災追悼式で、昨年まで「原発事故のために住み慣れた土地に戻れない方々」と言って発言を削除したのです。柳田さんは「大震災による被害の特異性は、巨大津波と原発事故の2本立てになっていることころにある。原発事故は、広大な地域を放射能によって汚染し、高濃度の汚染地域の住民の帰還をほとんど不可能にした。避難指示の解除が可能になりつつある地域でも、生活再建が困難なところから、すぐに帰還する住民は10%にも満たない。福島では、長期の避難によるストレスなどで亡くなった『災害関連死』と認定された人は2000人を越えるとしている。このような状況にも関わらず、首相式辞は原発事故については『復興は着実に進展』という文脈の中で、次のように軽く触れられているだけなのだ。〈インフラの復旧がほぼ終了し、住まいの再建や産業・なりわいの再生も一歩づつ進展するとともに、福島においても準備避難指示の解除が行われるなど、復興は新たな段階に入りつつあることを感じます〉」と批判しています。安倍政権は、原発事故を忘れ、原発の再稼働に躍起になっています。

 このような中、上関原発は、昨年、推進に大きく梶が切られました。一つは、村岡山口県知事が、昨年8月3日、上関原発を事実上容認する公有水面埋立延長許可を中国電力に交付しました。また、10月7日、自民・公明会派を中心に、県議会は、原発推進を国に要請する意見書を賛成多数で強行可決しました。

 原子力産業協会の今井会長は、今年策定予定の第5次エネルギー基本計画の中に原発の「新増設の必要性についてもしっかり明記していただきたい」と求めました。仮に国のエネルギー政策に原発の新設が書き込まれれば原発が一気に進められる危険性が高まっています。

 東芝のアメリカ原発子会社「ウエスティングハウス社」がアメリカの連邦破産法の適用を申請しました。これによる東芝の連結純損益は1兆100億円になる見通しです。原発に未来がないことは明確です。

 最後に、まとめとして日本国憲法の今日的意義について述べます。

 まず、憲法の前文についてです。憲法前文に「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原則であり、この憲法は、かかる原理に基づくものである。われわれは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」とあります。

 憲法制定の時に文部省が作成した解説本「あたらしい憲法のはなし」には、「この憲法をかえるときに、この前文に記された考え方と、ちがうようかえかたとしてはならないということです。」とあります。

 資料3は、自民党改正草案前文です。

 まず、「天皇を戴く国家である」とあります。これは、国民主権を後退させるものです。現行憲法が「日本国民は」で始まっているのを、草案大一段落は、「日本国は」に、第二段落は「我が国は」に変わっています。これは、「国民」より「国家」を尊重し、国民主権を後退させたものです。第三段落で、「国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り」とあります。これは、抽象的ながら国を自ら守ることを義務化しています。立憲主義・平和主義に反することです。

 更に、現行憲法にある平和的生存権が、草案にはありません。平和主義・民主主義の否定と言えます。

 自民党の改憲案は、前文の神髄を根本から変えるものであり、日本国憲法前文の規定からも認められるものではありません。

 憲法97条「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練を堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」とあります。

 憲法12条「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」とあります。

 与えられるものとしての権利ではなく、憲法を守り発展させていく運動によって基本的人権は実際の暮らしの中に活かされるのです。

 9条と25条を始め憲法を守り子どもたち未来を拓いていきましょう。

・・・

 今回の学習会の講師をお引き受けし、準備するに当たり、浅井春夫著「戦争をする国・しない国」は大変参考になりました。

 私が歩んできた道を整理していただいたような本です。

 そして、私の未来を照らしていただいたような本です。

 この本に出合えたことが、この学習会の講師を務めてとてもよかった事でした。

 浅井先生のお話しを直接お聞きしたとの想いを改めて深めています。

 戦争と福祉について皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

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