伊岡瞬さんのミステリー小説「代償」を読みました。
この作品は、犯罪ミステリーであり、通称「嫌ミス」に分類される作品なのかも知れません。
しかし、「嫌ミス」の通称を越え、主人公の圭輔に感情移入して一気に読ませる作品でした。
読後に、真っ直ぐな圭輔の更なる成長を願い、爽やかな気持ちになったのは私だけではないと思います。
簡単なストーリーを文庫の裏表紙を引用することで紹介します。
「平凡な家庭で育った小学生の圭輔は、ある不幸な事故をきっかけに、遠縁で同学年の達也と暮らすことに。運命は一転、過酷な青春期を送った圭輔は、長じて弁護士となるが、逮捕された達也から依頼が舞い込む。『私は無実の罪で逮捕されました。どうか、お願いです。私の弁護をしていただけないでしょうか』。裁判を弄ぶ達也、巧妙に仕組まれた罠。追い詰められた圭輔は、この悪に対峙できるのか?衝撃と断罪のサスペンスミステリ。」
文庫の解説に、伊岡さんが集英社のサイトに書いたインタビューが引用されています。
「まず、今までの自分の書いたものを振り返ってみました。ミステリなので犯人・悪人が出てきますが、その人たちにも事情があって、弱みゆえに罪を犯したり道を踏み外したりする人が多かったんですね。今度はそうではなく、全く人を顧みない、全く反省しない根っからの悪を書いてみたいと思い始めたのは『代償』です」
「凶悪犯罪ものの映画だと、このまま警察に捕まって終わりじゃ俺の気が済まないよ?って思いながら見るわけですよ。終盤までイライラしても、最後はスッキリ終わって欲しい。『代償』で最も大変だったのも、達也にどう代償を支払わせるのか、そのラストでした。ここまで悪いことをやっている人物だと、捕まる異常のことを予言した終わりじゃないといけないなぁと。今回は満足のいくラストにできました。」
最後の数ページまで手に汗握る小説はそうあるものではありません。
達也の真実が後半の残り最後のページで少しづつ明らかになってくる場面は、圧巻でした。
サスペンスミステリでありながら、最後に暖かい気持ちになれるのは、伊岡さんの市井の人々を描く確かな筆致があるからだと思いました。
「代償」は、Huluオリジナルドラマとして現在放映されています。
主人公の圭輔を小栗旬が演じます。どんな映像になっているのか楽しみです。
伊岡作品に魅せられて、今、「教室に雨は降らない」を読んでいます。
主人公は、公立小学校の非常勤の音楽教師である森島巧です。
公立小学校をめぐる様々な問題がテーマとなっています。
公立小学校のPTA会長を約10年努めている私にとっては興味深々です。
この作品も読み始めたら止まりません。この冬は、伊岡作品と共に過ごそうと思います。
伊岡ファンの皆さん、お勧めの作品をお教え下さい。
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