議員日誌

事実は、小説より奇なり

 数ヶ月前に、私に1本の電話がありました。「息子のE夫が亡くなったが、遺産が受け取れない」という相談です。電話の相手は、市内に住む70代のA子さんでした。A子さんは、B夫さんと結婚しました。B夫さんと前の妻のC子さんには、D子さんとE夫さんという二人の子どもがいました。D子さんは、C子さんが育て、A子さんは、B夫さんが亡くなった後も、E夫さんが亡くなるまで一緒に暮らしました。E夫さんは結婚しないまま亡くなりました。E夫さんが勤めていた会社の共済組合から死亡一時金が出たのですが、A子さんは受け取れません。それは、A子さんが、B夫さんが亡くなった後、E夫さんと養子縁組をしていなかったからです。

 B夫さんも、C子さんも亡くなり、E夫さんの遺産を相続できるのは、D子さんだけとなりました。E夫さんに遺産があることを知っているのは、A子さんだけです。A子さんは、このことをどうしてもD子さんに伝えなければなりません。しかし、D子さんの居場所が分かりません。A子さんが、唯一持っていた戸籍書類に、A子さんが、広島県のある市でF夫さんと結婚したことが書かれてありました。私は、広島県のその市の役場に電話し、事情をお話しました。そしてようやく、昨年末に、A子さんの所に、D子さんのその後の戸籍書類が届きました。その書類には、D子さんは、その後山口市に住んでいたと書かれてあります。

 そして、今日、私は、A子さんと一緒に、D子さんの足跡を残す山口市のある総合支所を訪ねました。私も懸命に、役場の職員の方に、A子さんの事情を話しました。そしてやっとD子さんの住まいが分かりました。D子さんは、G夫さんと再婚され、山口市内に住んでいました。

 私は、思い切ってA子さんと一緒にD子さんの家を訪ねてみることにしました。もしD子さんが居ない場合は、A子さんが後日、D子さんに連絡を取るしか方法はありません。

 家に到着しました。チャイムを鳴らすと何とD子さんらしき方の声です。D子さんもA子さんにとても会いたかった様子でした。

 私は、A子さんに同行した事情だけをD子さんにお話し、家を後にしました。

 私は、帰り道、「A子さんとD子さんは約半世紀を埋めるどんな話しているのだろうか」との想いを巡らしました。

 私は議員生活18年。この間、様々な相談を受け、様々なドラマに遭遇しましたが、これほど劇的な場面に出逢ったことはありません。事実は、小説より奇なりです。この話を浅田次郎や重松清なら、鮮やかに涙涙の大河小説を綴るでしょう。

 まさに、事実は小説より奇なりを実感した一日でした。

 私は、A子さんの積年の想いを解決する手伝いが少しばかり出来て嬉しく思います。今日は、本当に、いい一日でした。

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