相場英雄さんの「震える牛」を読んでいます。
この小説を分類するとミステリーになるのでしょうが、現在社会の描写は、ルポルタージュ小説のようです。
特に、「商業」や「食品」を取り巻く状況分析には私自身舌を巻きました。
商業の現状認識に感服しました。
鶴田というフリーの経済記者と「アルプス・スポーツ東京支社長」の高森が語り合う場面です。
少し長いですが引用します。
「高森は2000年に大きな出来事があったと告げた。通称・大店法が廃止されたことが地方都市を本格的に破壊し始めたと言った。
従来の大規模店舗法、通称・大店法、500平米以上の店を出す際には地元商工会との協議を経るよう義務づけ、小規模の商店を守ってきた法律だった。しかし、日米通商摩擦の激化、その後に米国大手小売業の日本進出という黒船級の出来事が起こったと高森は言った。また小売業の発言力が強まりつつあった日本の財界主導で規制緩和を要求した。錦の御旗のもとに規制が撤廃されると、堰を切ったように出店が加速したと高森は自嘲気味に言った。」
また、06年にまちづくり三法が改正導入されたことにもふれ、高森は、次のように語ります。
「改正したからといっても、1万平米以下なら出店に縛りはない。それに既存物件なら規制にのらなかったから、新法導入前には掛け込みで開店ラッシュが起こった。」
私は、1999年に県議会議員に初当選し、2期目の前半に商工労働委員会に所属していました。
2003年3月から2005年5月までです。大規模店舗法が廃止され、まちづくり3法が成立する直前です。
委員会の中で、大規模店廃止の影響と、まちづくり3法で中小小売店は救えるのかと大いに議論したことを思い出します。
そして、4期目の前半の昨年5月から再び地域商工委員会に所属しました。
原発問題などもあり、商業問題を委員会で取り上げることはなかったのですが、昨日の委員会で取り上げました。
山口県で大規模店舗法廃止の影響は顕著です。山口県の小売売場面積に占める大規模店舗面積の割合は、1999年47.2%だったものが、2007年58.8%となりました。
私の住む宇部市でも東西に大規模店が出店し、中心商店街の衰退は凄まじいものでした。
宇部市の商店街のシャッター通りは有名でしたが、今は、そのシャッターも少なくなり、空き地が目立ってきました。
まちの形成が変わり、中小小売業の廃業が相次ぎ、「買い物難民」という課題が行政に突きつけられています。
私は、現行一万平米以上となった出店規制を三千平米以上に厳しくしていくことが中小商業を立て直していく上で、取り組むべき根本の問題だと考えます。
食品の現状描写は圧巻でした。
工業製品と化した成形肉などの食品について、このような食品を製造する会社にいた小松が次のように語ります。
「スーパーでもファストフード店でも、価格競争が激化の一途を辿っています。しかし、企業は利益を出さねばなりません。その皺寄せが、こうした食品に向けられているのです。食品添加物や化学調味料で演出されたクズ肉を使い、利益を生んでいるのが企業の本当の姿です。」
商業における弱肉強食が、中小小売業を衰退させ、国民の健康を後回しにしている状況です。
相場英雄さんは、元新聞記者。現在も経済ジャーナリストとしてもレポートを書いておられる方です。
経済の本当の姿を映す目の確かさに感心しました。
相場さんの他の作品にも注目していきたいと思います。
「震える牛」は、今年読んだ本の中で、衝撃度はNo1でした。
相場さんに関してや、商業や食品に関して、皆さんのご意見をお寄せ下さい。
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