ブログ

エレン・クラス監督の映画「リー・ミラー 彼女の瞳に映す世界」を観ました。

 盆休みに、エレン・クラス監督の映画「リー・ミラー 彼女の瞳に映す世界」を観ました。
 映画のパンフレットの『イントロダクション」を引用します。
 「リー・ミラーが映し出す写真には、人間が持つ脆さと残酷さの両方が刻みこまれ、今もなお人々を惹きつける歴史的記録として真実を伝えている。第二次世界大戦の激化を最前線で取材し、ノルマンディー上陸作戦やブーヘンヴァルトとダッハウ強制収容所の残虐行為を目撃し、ヒットラーが自死した1945年4月30日当日、ミュンヘンにあるヒトラーのアパートの浴室でポートレートを撮り戦争の終わりを伝えた。映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』は、現在における偉大な戦争報道写真家の一人としてその名を歴史に刻んだ、リー・ミラーの人生の10年間に焦点をあてた物語だ。」
 映画のパンフレットで、翻訳者・映画評論家の篠儀直子は、女性写真家としての葛藤を次のように書いています。
 「まだ、女性写真家が珍しかった時代に、彼女は男社会へと勇敢に突入していく。それを視覚化するかのように、映画のなかでリー・ミラーは繰り返し戸口に立つ。あるときは中に入ることを拒まれ、あるときはやすやすと入っていく。(中略
やがて、彼女の突破の試みは、最も強烈なかたちで成功する。タバコで警備兵を買収し、相棒のディヴィット・シャーマンとともに、ヒトラーのバスルームでの入浴写真をものにするのだ。彼女の最もアイコニックな戦争写真が、結局『撮られる側』としての写真だというのは皮肉にも思えるが、ブーツにこびりついた収容所の泥をバスマットに荒々しくなすりつけるリーの仕草は、信じる方向へと突き進む彼女の性格と、激しい怒りを表現して余りある。」
 ヒットラーのバスルームで写真を撮影するシーンは、圧巻でした。彼女の仕事の集約点がここにあることを実感しました。
 インターネットのアート・アジェンダに、映画評論家の長野辰次さんは、「そしてヒットラーのバスタブ以上の衝撃写真となったのが、ダッハウ強制収容所の内情をとらえたスクープ写真だった。貨車の中のユダヤ人たちの死体が薪のように積み重ねられ、収容所にはやせ細った女性や子どもたちが辛うじて生き残っていた。シュールという言葉ではもはや表現できない、人間の残酷さを極めて絶滅収容所の惨状を、リーは世界で初めて演じることとなった。」
 私は、ヒトラーの蛮行を取り上げた映画を何本か観てきたが、この映画は、心の奥底に「怒り」を湧き起こさせるものでした。
 主演を演じたケイト・ウィンスレットがこの映画を企画し、主演を務めました。リー・ミラーを映画化は何度も企画されたようですが、この程、初めての映画化となった背景に、ケイト・ウィンスレットの存在があったことは間違いありません。彼女の生き方が、リー・ミラーと重なり、見事な映画となっています。
 自国ファーストの究極が、ナチス・ヒットラーの政治だと思います。極右勢力が台頭してきた日本の現状の中だからこそ、ヒットラーのバスタブで、自らを撮影したリー・ミラーの写真から学ぶものは多いと思います。
 山口市のワイカムシネマで、22日まで上映されています映画「リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界」を一人でも多くの皆さんに観ていただきたいと思います。
 もし、ご覧になった方がおられましたら、感想をお聞かせください。また、この夏、皆さんがご覧になられた映画の感想をお聞かせください。
 リー・ミラーの写真を実際に観てみたいと思いました。

トラックバック

コメントはまだありません

No comments yet.

コメント

コメント公開は承認制になっています。公開までに時間がかかることがあります。
内容によっては公開されないこともあります。

メールアドレスなどの個人情報は、お問い合せへの返信や、臨時のお知らせ・ご案内などにのみ使用いたします。また、ご意見・ご相談の内容は、HPや宣伝物において匿名でご紹介することがあります。あらかじめご了承ください。