私の本棚に、山秋真著「原発をつくらせない人びとー祝島から未来へ」(岩波新書)があります。
著者の山秋さんに8月18日、上関町役場でお会いしました。
上関原発に関わる集会などで過去お会いしたことがあったかも知れませんが、改めて、山秋さんの「原発をつくらせない人びと」を再読しています。
秋山さんの冒頭の次の指摘に驚きを覚えます。
「この50年のあいだに、日本列島の17カ所に原発ができた。日本の原発は。1966年に茨木県東海村で日本原子力発電(日本原電)が初めて営業運転を開始してから、1970年代に20基、80年代に16基、90年代に15基が稼働をはじめ、2010年末現在で全国に54基まで増えた(2012年11月現在50基)。だが、運転にいたった原発は、実は1970年までに計画が浮上したものに限られる。71年以降に浮上した計画はすべて、運転に至っていない。運転どころか着工にもいたらないまま、なくなった計画がほとんどだ。」
上関町では、1982年頃から原発誘致の話が持ち上がっていますので、今年で41年目です。
今も反対運動の中心である祝島では、1982年に「愛郷一心会」を結成し同年11月17日、町長に以下の申し入れを行っています。
「千弐百年の誇り高き伝統に歴史と文化を秘めた祝島とその住民が今日まで平和にそして豊かに生きてこれたことは、この美しい大自然があったからに外ならないのです。その生命とも言うべきかけがえのない自然がいま、中電の原発誘致問題により根底よりくつがえされようとしております。世界で唯一の被爆国である日本人は、核の恐怖を肌で体験し、実感としてそれを知っております。貴殿もその一人だと思います。確かに原発は平和産業の一環かも知れませんが、反面、原爆製造と直結していることも否定できない事実です。そのような難問題がまつわる原発には、重大な関心を持たざるを得ません。我々は現在と未来に向けて平和に安全に生きていく権利を、すべての日本国民と平等に持っています。(中略)原発の安全性が確認されていない現在、いかなる理由があっても、住民の生活を脅かし生命までも蝕む危険と可能性を多分に持っている原発建設に、我々祝島住民はいま、強い憤りさえ覚えます。原発建設はもちろん立地調査も断固反対いたします。」
東京電力福島第一原発の事故後にこの文書を読むと事の切実さを実感します。
「住民の生活を脅かし生命までも蝕む危険と可能性を多分に持っている原発建設」の言葉の重さをいまさらながら噛みしめたいと思います。
そして、その危険な原発建設を最前線で、40年以上食い止めてきた祝島島民の皆さんに感謝したいと思います。
その上で、今般の核燃料廃棄物中間貯蔵施設問題です。
山秋さんは、8月31日に公開された「祝島緊急レポート夏#1:8月が吹っ飛んだ」で次のようにレポートしています。
(8月2日)「9時ころ、中国電力担当者3人があらわれた。人びとは駆け寄って口々に思いを訴える。それに対して『中間貯蔵施設は安全だ』と理解を求める中電へ。『原発も安全だと言われて(いたけれど)東電の福島第一原発の事故が起きた』『事故が起きたら(安全だ、とは言っていません、五重の壁で守られている、と言っただけ)とか(安全だ、と思います)とか、私らに言うたよねぇ?』『こんどは中間貯蔵施設を(安全だ)と言われても、信じられるはずがない』『もともと中国電力は、新聞に載ってるか知らんが、今までどんだけ事故事故事故、細かい欠陥とか入れたら、どんだけの数か、信用なるわけない。それが(安全です、建てます)と言うても(ご理解)できるわけがない』と言葉が次々に投げられた。核の危険を自分たちに押しつけようとしながら、頭をさげるなど一見すると低姿勢なふりをして見せる、40年来の中電のやり方への憤りも滲む声だ。」
10年以上、祝島島民の皆さんと歩んできた山秋さんのレポートに新たな段階でのたたかいの始まりを実感します。
そして、山秋さんの「1971年以降に浮上した計画はすべて、運転に至っていない。運転どころか着工にもいたらないまま、なくなった計画がほとんどだ。」の文章を噛みしめています。
中間貯蔵施設も「住民の生活を脅かし声明までも蝕む危険と可能性を多分に持っている」ものであることは明白です。だから、使用済み核燃料も何重もの容器(キャスク)に入れられているのです。
中間貯蔵施設であっても、設置に至らない、着工に至らないという歴史を続けなければとの気持ちが、山秋さんの文章を読んで湧き上がってきました。
山秋さん、素晴らしい文書をありがとうございます。またお会いしましょう。
私は、県民の一人として、県議会議員の一人として、使用済み核燃料中間貯蔵施設が上関町に設置及び着工されないよう、祝島を始め、同じ気持ちの県民の皆さんと連帯して力を尽くしたいと思います。
中間貯蔵施設に関する皆さんのご意見をお聞かせください。
https://wan.or.jp/article/show/10803?fbclid=IwAR0nZFpRLu-I22dj2zjgAmp-tzwWE-Jx1QpnqBPTwPmB1TKvcW8D_1o7VPE
山秋さんの「祝島緊急レポート#1」は上記のアドレスで視聴できます。
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