10日付しんぶん赤旗日刊紙は自由法曹団が安倍晋三元首相の葬儀に際して学校などに半旗の掲揚を一部教育委員会が要請したことに抗議する声明を発表したと次のように報じました。
「自由法曹団(吉田健一団長)は8日、一部の教育委員会が安倍晋三元首相の葬儀(7月12日)に際して学校などに半旗の掲揚を要請したことに抗議する声明を発表しました。声明は、東京都・山口県・仙台市・川崎市・福岡市などで教育委員会が学校に半旗の掲揚を求める要請・通知を出したとし、『学校が半旗を形容し弔意を示す行動をとれば、本来自由であるべき弔意を抱くか否かという判断について、(弔意を示すべきである)という価値観を規定化する効果を及ぼ」し、公教育として許されないとしています。安倍元首相への国民の評価が大きく分かれている中で教育委員会が半旗の掲揚を要請することは、児童・生徒に一方的な政治的価値観を押し付けかねないもので、教育基本法に抵触すると批判。今回の事態を踏まえれば、国葬の際に各地の教育委員会が各学校に半旗掲揚などの弔意表明を事実上強要する恐れが強いと指摘しています。」
自由法曹団の声明の全文は以下の通りです。
・・・
教育委員会による半旗掲揚要請等に対して抗議するとともに、
改めて岸田内閣による安倍晋三元首相の国葬に反対する声明
第1 教育委員会による半旗掲揚要請等に抗議する
1 報道によれば、仙台市教育委員会は、市立小学校・中学校(合計180校余り)に対し、安倍晋三元首相の葬儀(7月12日開催)に際して半旗掲揚を依頼していたことが判明した。教育委員会による同様の要請・通知は、東京都、山口県、北海道帯広市、川崎市、大阪府吹田市、兵庫県三田市、山口市、福岡市などでも行われたとのことである。半旗掲揚について、「配慮」を求めるという文言等を用いたり、現場判断を求めたに過ぎないなどという説明もあるようだが、そもそも半旗掲揚について何らかの要請・通達を行う教育上の必要性自体がなく、わざわざ要請・通知を行ったことは教育現場に半旗掲揚を求めたものであると言わざるを得ない。
2 半旗の掲揚は弔意の表示そのものであるところ、特定の故人に対して弔意を示すかどうかということはまさに個々人の思想信条によるべきものであり非常にセンシティブな問題である。学校とは教育の場であり、学校自体がとった行動というのはすべてにおいて生徒児童に教育的な効果を与える。学校が半旗を掲揚し弔意を示す行動をとれば、本来自由であるべき弔意を抱くか否かという判断について、「弔意を示すべきである」という価値観を既定化する効果を及ぼし(実際に半旗の意味を質問されれば教員は弔意の表示やその意義について説明せざるを得ない)、日本国憲法が立脚する自由主義のもとにおける公教育として、許されるものではない。
3 そもそも、教育基本法14条2項は、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」と定めている。これは、学校自体が戦前の軍国主義教育の反省のもとに教育の政治的中立を維持することで、生徒児童の学習権の保障を趣旨とした規定である。
安倍元首相については、集団的自衛権行使を閣議決定で容認したことなどへの批判も多く、国民の評価は大きく分かれている。このような中で、教育委員会が半旗の掲揚を学校に要請することは生徒児童へ一方的な政治的価値観を押しつけかねないものであり、生徒児童への学習権を侵害する恐れのあるものである(1976年旭川学力テスト事件最高裁判決参照)。したがって、本件の要請自体が、上記教育基本法に抵触するものと言わざるを得ず、自由法曹団は、上記要請等について強く抗議する。
第2 岸田内閣による安倍元首相の国葬の強行に反対する
1 自由法曹団は、岸田内閣が予定する安倍元首相の国葬については「法令上の根拠がなく財政立憲主義に反するおそれ」「国民の思想・良心の自由に反するおそれ」「安倍元首相への批判を封じ、市民の中に分断をもたらすおそれ」があることからその実施に強く反対しているところであるが(2022年7月21日、「岸田内閣による安倍晋三元首相の国葬に反対する声明」)、今回の事態を踏まえれば、安倍元首相の国葬の強行に対する懸念はますます深まったといわざるを得ない。
2 今回半旗掲揚を要請した安倍元首相の葬儀は、あくまでも私的な葬儀であった。このような私的な葬儀に対してさえ、各地の教育委員会が、各学校に対して半旗掲揚の要請等を行っていることに鑑みれば、教育委員会が国葬開催の際に半旗掲揚その他の弔意表明を要請し事実上強制する恐れは強く、国葬が国民の思想・良心の自由(特に教育現場における思想・良心の自由)に反するおそれは現実化していると言わざるを得ない。したがって、自由法曹団は、改めて、岸田内閣による安倍晋三元首相の国葬に反対するものである。
以上
・・・
自由法曹団の声明を安倍晋三元首相の葬儀の際に、学校などに半旗の掲揚を要請した山口県教育委員会・山口市教育委員会などは、重く受け止めるべきです。
そして、今後計画されている安倍晋三元首相の国葬及び県民葬において、山口県教育委員会は、学校などに半旗の掲揚を要請しないよう、強く求めたいと思います。
自由法曹団が、安倍晋三元首相の葬儀の際の半旗掲揚要請に抗議する声明を発表しました。
この問題に対する皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
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