島本理生著「ファースト ラヴ」を読了しました。
本作は、第159回直木賞受賞作品です。そして、2月11日から堤幸彦監督により映画「ファースト ラヴ」が公開される予定です。宇部市内の映画館でも上映される予定なので今から楽しみです。
文庫版の裏表紙から本作の概要を引用したいと思います。
「父親殺害の容疑で逮捕された女子大生・環菜。アナウンサー志望という経歴も相まって事件は大きな話題となるが、動機は不明だった。臨床心理士の由紀は、ノンフィクション執筆のため環菜や、周囲の人々へ取材をする。そこで明らかになった少女の過去とは。そして裁判は意外な結末を迎える。」
小説「ファーストラブ」は、父親殺害容疑の女子大生の問題をサスペンスとして描きながら、今日の女性が抱える問題を丁寧に描いた社会派作品として読むことができます。
原作者の島本理生さんは、映画「ファースト ラヴ」のホームページにこう寄稿しています。
「近年、女性が理不尽に対して声をあげる、という流れが少しづつ生まれている中で、映画『ファースト ラブ』を鑑賞し、そのスリリングな面白さはもちろんのこと、今の日本においてこの映画は社会的にも非常に重要な作品だと確信しました。原作者として関わることができたことを心の底から嬉しく思いました。」
環菜は事件後、臨床心理士の由紀と語り合う中で、自分がこれまで受けてきた事実に向き合い「ひどすぎる」と初めて声をあげました。
私は、お寺の法話で、山口県出身の小児科医熊谷晋一郎さんを知り、我が家の書棚にある雨宮処凛編著「この国の不寛容の果てに 相模原事件と私たちの時代」の中で、熊谷さんの発言部分を読みました。この中にこのような部分があります。
「平井秀幸さんという社会学者が『慎慮主義』という言葉で言っていましたが、社会の秩序に順応的であることを過剰に求める傾向が、先進国で強まっているといいます。それが進みすぎた結果、秩序に対する異議申し立てや『和を乱す』ような振る舞いをする人が排除の対象になる傾向が増していると。LGBTQや障害といった多様性に対する理解が進む一方で、それが尊重されるのはあくまでも秩序に反しない限りで、少しでも問題を起こせば共同体から追いやられるというわけです。」
新型コロナウイルス感染拡大の中で、女性のパート・アルバイトで、仕事が半分以下に減り、休業手当も支払われない「実質的失業者」が90万人にのぼると、昨年12月末、野村総合研究所の調査で明らかになりました。
東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言に日本スポーツとジェンダー学会執行部は4日、「緊急声明」を出しました。声明は森会長の発言は「客観的な証拠に基づかず、女性の特性を恣意的に作り上げ貶めるものであり、女性の社会進出を否定するもの」とし、五輪憲章や五輪アジェンダ2020、国際オリンピック委員会のジェンダー平等報告書、国連のSDGsの理念や方針、条項のいずれにも反すると批判しています。
国連広報センター(UNIC TOKYO)は「沈黙を打ち破ろう。誰かが一線を超えたら、声を上げよう。家父長制への無言の迎合は、受け入れてはいけません」とツイートしています。
今、私たち一人一人が理不尽さに対して声をあげることが重要な時代です。「和を乱す」ことを排除する家父長制を超えて、私たちが声をあげることの大切さを私は、島本理生著「ファースト ラヴ」から読み解くことが出来ました。
島本理生さんの作品を読んだのは「ファースト ラヴ」が初めてです。島本さんの作品としては、2017年に「ナラタージュ」、2020年に「Red」が映画化され、島本理生さんは若手を代表する作家の一人だと思います。
島本作品の第二作目は、「ナラタージュ」を読み始めようとしています。
島本ファンの皆さん、お勧めの作品をお教え下さい。
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