議員日誌

本物の教養

 先日、参加した講演会で、ある講師の方が、出口治明さんの事を話題にされました。

 その内容が心に残り、数多い出口さんの著作の中から、講師の方が取り上げた内容が含まれている「人生を面白くする本物の教養」という本を購入し、読みました。

 現在の政治課題に対し見解が違う部分も数カ所ありましたが、共感する部分が多数でした。

 共感した部分の一つ目は、「ナショナリズムと愛国心」についてです。出口さんは、本書で次のように書いています。

 「著名な歴史学者ルカーナは『歴史学の将来』の中で、『ナショナリズムとは、劣等感と不義の関係を結んだ愛国心である」という連合王国の外交官の名言を紹介しています。愛国心は誰にでもあるごく自然な感情です。自分の生まれた国、育った土地に愛着を抱く、本源的と言ってもいい精神の働きです。これは本来、自分が生まれた大切な場所を守っていきたいという防御的な心理のはずで、ほかのところをどうこうするものではありません。ところが、『劣等感と不義の関係』を結ぶと、他者に対して攻撃的になります。それがナショナリズムです。したがって、愛国心とナショナリズムはまったく別のものだと考えるべきです。ヘイトスピーチを声高に叫んでいる人やいたずらに嫌中・嫌韓を煽り立てている人は、その弁えがないと言うほかありません。『世界中から嫌われる隣国』『世界中から好かれる日本』などという言説に遭遇するたびに悲しくなります。こういう人たちは普段から『A君B君は会社中から嫌われている』『僕は会社中から好かれている』などと平気で話しているのでしょうか。」

 今日の「週刊ポスト」の言論問題にも当てはめて考えることの出来る出口さんの論証です。

 二つ目は、女性に対する視点です。出口さんは、「日本にはまだかなり伸びしろがある」という章の中で次のように書いています。

 「冷戦構造のもとで『キャッチアップモデル、人口増加、高度成長』の三点セットの時代が終わり、日本が遅れていたり、意識が低かったりする分野が、露わになってきました。しかし、そのことは逆に、日本の成長の余地がたくさんあることを教えてくれます。たとえば、世界経済フォーラム(WEF)が発表した『国際男女格差レポート2014』によれば、日本の男女平等達成レベルは世界142カ所中104位とランクされました。日本は男女平等の実現においてきわめて未熟だという、厳しい結果です。けれども、もし日本でOECD諸国の平均並みに女性の社会進出が進んだら、GDPが10~20%伸びるという試算もあります。まだ大した努力をしていないので、伸びしろがかなりあります。」

 女性活躍社会が叫ばれていますが、「まだ大した努力をしていない」状況は、この本が書かれた2015年とあまり変わっていないのかも知れません。

 さて、出口流・教養を高める極意です。この点は、冒頭紹介した講演会の講師の方が引用された部分です。

 一変に私の心を鷲掴みしました。

 第一は、「本を読む」。第二は、「人に会う」。第三は、「旅に出る」。

 この点について出口さんはこう書いています。

 「私は自分自身を教養人だと思ったことは、一度もありません(実態はむしろ野蛮人に近いと思っています)。ですが、私にいくばくか教養のようなものがあるとすれば、それを培ってくれたのは『本・人・旅』の三つです。私はこれまでの人生で、『本・人・旅』から多くのことを学んできました。あえて割合を示せば、本から50%、人から25%、そして旅から25%ぐらいを学んできたといったところでしょうか。」

 私に当てはめると、「本が25%、映画が25%、人が25%、旅が25%」でしょうか。

 「本・人・旅」は、これからも私の指針の一つになることでしょう。

 出口さんは、「政府を批判することは市民の重要な権利」の章の中でこう書いています。

 「現在の政治が気に入らなければ、私たちが投票によって政治を変えればいいのです。政府は市民の対立物ではありません。政府は私たちがつくるものです。政治におけるリテラシーの核になるのは、『政府は私たち市民がつくるもの』という健全な当事者意識にほかならないと思います。」

 世界をまたにかけ活躍した経済人であり、今は大学のトップを務める出口さんならではのグローバルな視点での一言一言が心に響きます。

 上の言葉は、政治家としての自分を大いに励ましてくれます。

 若干の見解の相違はありながら、出口さんの論証をリスペクトし、出口さんの著作から今後も大いに学んでいきたいと思います。

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