今日も、山崎雅弘さんが書かれた「沈黙の子どもたち 軍はなぜ市民を大量殺害したか」から引用したいと思います。
今日は、「リディツェ」に関してです。
映画「ピータールー」を観て、歴史をテーマにした映画が観たくなり、レンタルDVD店で「ナチス第三の男」を観ました。
その直後に、山崎さんの本の「リディツェ」の章を読み、映画を観た直後だったので、「リディツェ」の事件発生の背景を詳しく知ることができました。
同じ時代の同じ事件を扱った映画と本に同時に出会う経験は稀有ですが、意味深いものを感じました。
映画「ナチス第三の男」の主人公は、ラインハルト・ハイドリヒSS大将。
彼について山崎さんは次のように書いています。
「ナチス・ドイツの主要幹部の一人として、あるいはヒムラーに次ぐSSのナンバー2として冷酷に権威を振るい、ナチスの人種政策で理想とされる『アーリア人的』な外見の特徴を備えていたことから『金髪の野獣』との異名を取ったハイドリヒだが、年齢はこの時まだ38歳だった。」
映画もこの本でもハイドリヒ暗殺事件が詳細に描かれています。
山崎さんは、本の中で、次のようにハイドリヒ暗殺事件とその後のリディツェでの事件を概括しています。
「主権国家の地位を失ったとはいえ、チェコは第二次世界大戦の最中も、枢軸国のドイツと連合国のイギリスが激しく火花を散らす『戦場』であり続けた。ロンドンに樹立されたチェコスロバキアの亡命政府は、イギリスの助けを得て国内の反独レジスタンスを支援する一方、国外に逃れた自国軍人を義勇兵としてイギリス軍に提供し、ヨーロッパの戦争で連合国を勝たせるための政治的謀略にも関与していた。その結果として引き起こされたのが、1942年5月27日にプラハで起きたラインハルト・ハイドリヒSS大将の暗殺事件と、その報復として各地で実行された市民の大量殺害だった。その中でも、プラハ郊外のリディツェ村で同年6月10日に始まった一連の出来事は、第二次世界大戦におけるナチスの蛮行の一つとして特筆されている。」
山崎さんは、リディツェ村で大量殺戮が行われた理由を次のように書いています。
「ハイドリヒ殺害の捜索中に発見されたいくつかの手紙にその地名が出ていたというだけで、具体的にリディツェ村がハイドリヒ暗殺の実行犯と繋がる証拠は何もなかった。」
山崎さんは、リディツェ村での殺戮の様子を次のように書いています。
「6月10日の午前中に、リディツェ村の成人男子は一人残らず、SSの射撃隊によって殺害された。多くの射撃隊員は、大量虐殺の精神的ストレスから逃れるために酒をがぶ飲みして泥酔状態にあった。男性が次々と射殺されている間に、村の女性と子供はドイツ側が用意したトラックの荷台に載せられ、リディツェから5キロほど西にあるクラドノと言う村へと連れて行かれたあと、ドイツ国内の強制収容所に送られた。」
現在、リディツェ村があった場所に、記念公園が設置され、公園内に「戦争で犠牲となった子どもの記念碑」が設置されています。
山崎さんは、本書の「あとがき」で、執筆中「大勢の子どもが理不尽に殺されるという陰鬱な主題が、巨大な鉛の塊のように私の心を圧迫した」と述べた上で、次のように書いています。
「それでも、執筆を途中で放棄しようと思わなかったのは、リディツェで見た子供たちの像が、頭からずっと離れなかったからである。私が同地を訪問した時はちょうど雨上がりで、雲の間から青空が見えていたが、台座に並ぶ子どもたちのほほには涙のような水の筋が見えた。沈黙の中で、何かを訴えているとしか思えなかった。」
この本の表紙は、「戦争で犠牲となった子どもたちの記念碑」の写真です。この本の表題が「沈黙する子どもたち」となったのも、山崎さんの「リディツェ」での想いがあったからだと思います。
私も、この本を読んでいて、「陰鬱な主題が、巨大な鉛の塊のように私の心を圧迫」します。
しかし、「この本を読み進めて」と表紙の「沈黙の子どもたち」に訴えられているように感じます。
そして「軍はなぜ市民を大量殺害したか」考え、二度とこのように悲劇を起こさないためにはどうしたらいいのか考え続けたいと思います。
是非、リディツェの記念公園で「戦争で犠牲となった子どもの記念碑」を訪ねたいと思います。私の細やかな夢の一つとなりました。
私にとっての盆休み最後となる明日もこの本から引用したいと思います。
内容については、こうご期待です。明日もお付き合いください。
山崎雅弘著「沈黙の子どもたち 軍はなぜ市民を大量殺害したか」はこの夏、私にとって忘れられない一冊となりました。
映画「ナチス第三の男」も是非、DVDでご覧下さい。
皆さんにとってこの夏、お勧めの映画や小説についてお教え下さい。
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