お盆休みは、大好きな映画を観て過ごしています。
マイク・リー監督の映画「ピータールー マンチェスターの悲劇」を観ました。
1819年8月16日、マンチェスターの聖ピーターズ広場で市民への選挙権を求める抗議集会が行われ、約6万人が集まりました。
この民衆の中へ、義勇軍と銃で武装した軍隊が突入しました。
これが、「ピータールーの虐殺」であり、この史実を克明に描いた作品が「ピータールー マンチェスターの悲劇」です。
この事件の背景には、摂政王太子の馬車に芋が投げつけられたことを受け、時の政府が、1679年に制定された人身保護法を一時停止したことがあります。
この時代を象徴した人物が、ジョセフ青年です。1815年のウォータールーの戦いで生き残ったジョセフは、軍服のままマンチェスターに帰ってきます。母親の腕の中で泣き崩れるジョセフ青年の姿が印象的です。
ジョセフは、何日も何日も仕事を探すが、全くみつかりません。
そして、ジョセフは洗いざらしの軍服を着て参加します。
真新しい軍服を着た兵士にジョセフは刺されて倒れます。
もう一人の主役たちが、マンチェスター・オブザーバー紙です。
真実を書こうと、聖ピーターズ広場の集会を取材し、記事を書くことを話し合います。
映画で描かれていたのはここまでですが、パンフレットのその後の物語がこう書かれてありました。
「政府はこの新聞に関連した人々を繰り返し起訴した。そのため継続が困難になり、1821年に出版停止。最後の号にはマンチェスター・ガーディアン紙(のちのガーディアン紙)を読むことを読者に勧める社説が掲載された。」
今のガーディアン紙の前身がマンチェスター・オブザーバー紙だったのです。
この映画に、織物機を何台も据えた巨大な繊維工場が出てきます。
この日、聖ピーターズ広場に集まった人たちの多くが繊維工場で働く労働者だったと映画のパンフレットに新井潤美東京大学文学部教授が書いています。
新井教授は、現代イギリスと通じるところがあると次のように書いています。
「上流階級や中産階級を中心とした支配階級は、『大衆』を『無知で、マスコミに簡単に操られる存在』と軽視しながらも、脅威ともみなしている。教育、生活レベル、衣食住のすべてにわたって、階級意識と格差はなくなることがない。マイノリティに対する無知と偏見も未だになくなっていない。それどころか、多文化国家として自らを認めたイギリスは、一方ではますますノスタルジックな『古き良きイギリス』を追求していき、その一つの結果である『ブレグジット』をめぐって、国の権力者は何一つ適切な対応をとっていない。イギリスで今何が起きているかを歴史的にとらえるためにも『ピタタールー』は広く知られるべきだとリーは主張するのである。」
マイク・リー監督は、映画のパンフレットで、次のように語っています。
「私の住むイギリスではブレグジットがあったり、(アメリカではドナルド・)トランプが大統領になったり、世界各地で極右が台頭したり、香港では民衆が抑圧されたり、世界中の正気の沙汰ではないことが起こっています。この映画は民主主義についての映画なのです。民主主義について、権力を持っている人、いない人についての疑問を、この映画を通じて考えてもらえばと願っています。」
日本でも格差と貧困が拡大しています。今こそ、民主主義が花開く時代が求められています。
民主主義の前進のために力を尽くそうと決意を新たにしました。
その事を考えていく上でも、約200年前にイギリスのマンチェスターで起きた史実を基に創られた映画「ピータールー マンチェスターの悲劇」は、日本でも多くの皆さんに観ていただきたい映画です。
皆さんのご覧になった映画の感想をお聞かせ下さい。
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