川村元気さんの「百花」、ラスト30ページまで読みました。
「億男」「四月になれば彼女」を読みましたが、川村さんが作家として深化していることを実感する最新作「百花」でした。
本の帯に吉永小百合さんが「息子と母の切ない思いに、胸が熱くなりました。」とあります。
母百合子と息子葛西泉との物語。
本の帯から引用します。
「大晦日、実家に帰ると母がいなかった。息子の泉は、夜の公園でブランコに乗った母・百合子を見つける。それは母が息子を忘れていく、始まりの日だった。認知症と診断され、徐々に息子を忘れていく母を介護しながら、泉は母との思い出を蘇らせていく。」
百合子が入所した施設は、古民家を改造したグループホーム。
所長の観月が、泉にこう施設を紹介します。
「葛西さんは、スターバックスとかドトールコーヒーに行かれます。」「じゃそこに、七時間とか八時間とかいられます?」「施設それぞれの考え方があると思うんです。コストや効率のこともあります。それを否定するつもりはありません。でも私は、そういう環境に半日も耐えられないと思います。きっと逃げ出したくなるでしょう。見舞いに来る家族も帰りたくなるなるような場所に、認知症の方々が住みたいと思うはずがありませんよね。だから外に出ようとする。それを閉じ込めるためにドアを何重にもする。もっと逃げたくなる。言葉も荒くなるし、暴力を振るったりする。それは当然のことに感じます」「ここは手や足で触れるものや目に入るもののほとんどを木材や布など自然の素材で作るようにしています。冷たい情報がなるべく体に伝わらないように。窓やドアに鍵はかかっていませんが、逃げ出す方はほとんどいません。ひとり歩きや暴力などは症状です。認知症そのものを治すことは難しくても、ストレス要因を減らすことで、症状を抑えることはできると私たちは考えています。」
7月7日付のしんぶん赤旗日曜版のインタビューで川村元気さんは、「介護施設を取材したりしたうえで、僕なりの理想のかたちを書いてみました」と語っているように、この施設は川村さんの理想のかたちなのだと感じました。
この理想が現実に広がることをこの小説を読んで感じました。
帯の文字の続きを引用します。
「ふたりで生きてきた親子には、どうしても消し去ることができない『事件』があった。母の記憶が失われていくなかで、泉は思い出す。あのとき『一度、母を失った』ことを。泉は封印されていた過去に、手をのばす-。」
泉の封印された過去の一部分は理解してきましたが、現時点で、全容は分かりません。
ラスト30ページに、点と点を結び線と面を作る言葉が綴られています。
「百花」は、映画になることでしょう。
泉は、松坂桃李さん、百合子は、やはり吉永小百合さんでしょうか。
メガホンを握るのは、川村元気さんご本人でしょうか。
小説のラスト30ページを堪能しつつ、近い将来に映画化されることを大いに期待しています。
川村元気さんの「百花」は、良質のエンターティメント小説として多くの皆さんに読んでいただきたい作品だと感じました。
「百花」を読まれた皆さん、感想をお聞かせ下さい。
さあ、「百花」の次は、いよいよ「世界から猫が消えたら」です。
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