海堂尊さんの小説「ジーン・ワルツ」を読んでいます。
海堂さんの小説は、映画にもなった「チームバチスタの栄光」や「ジェネラルルージュの凱旋」などを読んできました。
これらの作品は、エンターテイメントが全面という感じでしたが、「ジーン・ワルツ」は社会派小説と言った内容です。
生命倫理をテーマとした直球の現代医療を問う小説です。
「大学病院の勤務医の薄給では生活がままならないので、外部病院でのアルバイトは黙認されていた。だが、大学が独立行政法人化した時、こうした不文律はあっさり破壊された。(中略)それは、医師の個人的な経済状況を悪化させるだけに留まらず、地域医療の崩壊にも寄与することにもなった」
「医療崩壊のきっかけは、新医師臨床研修制度の導入だった。良質な臨床研修医を育成するという大義名分の下には、医局の力を削ぐという腥い目的が隠されていた」
などなど、海堂さんの現在医療の現状への怒りが迸るくだりが随所に見られます。
海堂さんは、医師として現場に立ち続けながら執筆をつづけています。ですから文章はリアリティーと迫力に満ちています。
この小説は、生命の尊さにも気づかされるものです。
「皆さんは、お母さんの中から五百分の一、お父さんからは五億分の一の狭き門を突破してきた遺伝子のエリートたち、なんです」
「そうした理解の積み重ねこそが、授かったいのちを大切にするということにつながっていくのだから」
このくだりも海堂さんが最もこの小説を訴えたいことだと思いました。
小説は、いよいよ後半に入ります。海堂さんの小説ですから、社会派だけでは終わらないエンターテイメントを読者に与えることでしょう。
これからが楽しみです。
私がなぜこの小説を選んだのか。そうです。この小説は、来春公開で映画化が決まっているからです。主人公の曽根崎理恵を菅野美穂が演じます。
映画化が待ちきれません。また、この小説には、「マドンナ・ヴェルデ」というもう一つの物語が準備されているのです。これも楽しみです。
海堂作品は、確実に進化していることを実感しながら読んでいます。久々にズシンとくる小説に満足しています。
全国の海堂ファンの皆さん、感想をお聞かせください。
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