書店で、「映画化企画進行中」の帯を見て思わず買った二宮敦人著「最後の医師は桜を見上げて君を想う」でした。
今日までに、第一章「とある会社員の死」第二章「とある大学生の死」を読みました。
この本を読みながら、「西本願寺医師の会」の田畑正久さんの「医師が仏教に出逢ったら」という本を思い出しました。
田畑さんは、この本の中で次のように書いています。
「現在の医療文化の状況、そして今後の発展があったとしても人間の不老不死は実現できないということです。最先端の医療といえども、最終的な治療をめざす限りは、最後は『敗北』になるということです。」
先日読んだ、医師でもある南杏子著「サイレントブレス」の冒頭にこう書かれてあります。
「人間の最終章を大切にするための医療は、ひとりひとりのサイレント・ブレスを守る医療だと思うんです。」
第一章で、死を目前としたとある会社員に対して、死神とも噂される医師の桐子は、次のように語りかけます。
「死を敗北にするもしないも、自分次第なんです。」
「例えば、バルトコンベアから降りればいいのではないでしょうか。死に向かって漫然と運ばれているだけの生を、やめるのです。そして、自分の足で歩きましょう。」
「自ら死を受け入れることができた時、人は死に勝利したと言えませんか」
2016年2月28日に発表された日本臨床宗教師会設立趣意書にはこう書かれてあります。
「『臨床宗教師』は、布教・伝道を目的とせずに、相手の価値観、人生観、信仰を尊重しながら、宗教者としての経験を活かして、苦悩や悲嘆を抱える人びとに寄り添います。さまざまあ専門職とチームを組み、宗教者として全存在をかけて、人々の苦悩や悲嘆に向きあい、かけがえのない物語をあるがまま受けとめ、そこから感じ取られるケア対象者の宗教性を尊重し、『スピリチェルケア』と『宗教的ケア』を行います。」
今こそ、先端技術を進める医療と同時に、患者の苦悩や悲嘆によりそう、桐子のような医療スタッフが必要だと、この本を読んで思いました。
「臨床宗教師」を各病院や各地域に配置していくことも必要ではないかとこの本を読んで考えました。
各章の患者さんは最後には亡くなります。先端技術で患者の「生」を諦めない福原医師の苦悩もこの小説の醍醐味です。
人間の生とは何か、死とは何かを考えさせる大作がこの小説です。
作者の二宮敦人さんは、私より20歳若い33歳の方です。
生と死という重いテーマに真摯に向き合いながら素晴らしい作品に仕上げる力量に感服しました。
久しぶりに小説を読みながら涙を流しました。
「死は敗北ではない」と感じました。
映画化されるということで大いに期待しています。
関係者の皆さん企画を早急に進めていただきたいと思います。
二宮敦人ファンの皆さん、他のお勧めの作品をお教え下さい。
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