議員日誌

おーい でてこーい

 ユーモア力アップを目指して星新一さんのショート・ショート集「ボッコちゃん」を読んでいます。

 この中に「おーい でてこーい」というショート・ショートがあります。

 ある村に台風が襲来した後、深い穴が出現します。

 村の若者は、「おーい でてこーい」と叫び、石ころを投げましたが底からの反応はありません。

 一人の利権屋が村に集会所を作ることを約束し、穴を買収します。

 こんな下りがあります。

 「利権屋は、仲間に都会で猛運動させた。すばらしい穴がありますよ。学者たちも、少なくとも五千メートルはあると言っています。原子炉のカスなんか捨てるのに、絶好でしょう。官庁は、許可を与えた。原子力発電会社は、争って契約した。村人たちはちょこっと心配したが、何千年は絶対に地上に害は出ないと説明され、また、利益の分配をもらうことで、なっとくした。しかも、まもなく都会から村まで立派な道路が作られたのだ。トラックは道路を走り、鉛の箱を運んできた。穴の上でふたはあけられ、原子炉のカスは穴のなかに落ちた。」

 「穴は都会の住民たちに、安心感を与えた。つぎつぎと生産することばかりに熱心で、あとしまつに頭を使うのは、だれもいやがっていたのだ。この問題も、穴によって、少しずつ解決してだろうと思われた。」

 このショート・ショートのラストがシュールです。

 ある日、都会の空から村の若者「おーい でてこーい」という叫び声と小さな石ころが落ちてきたのです。

 これからは私の解釈ですが、村の穴と都会の空は繋がっていたのです。

 ということは、もうじき、村の穴に捨てた「原子炉のカス」が都会の空から降ってくるでしょう。

 中国電力は、上関原発予定地で、先月30日、ボーリング調査を始めました。

 7月1日の中国新聞は中国電力がボーリング調査を開始したことについて「政府が年内にも原発新増設を容認する可能性を見越し、早期着工へ向けた地ならしをしたい、との思惑ものぞく」と報じました。

 国のエネルギー計画の見直しについて同記事は「政府が示す30年の電源構成で、原発の比率は20~22%。原発の運転を原則40年とするルールを厳格に適用すれば達成できない。このため電力業界には『新たな基本計画で原発の新増設が明記される可能性がある』との見方がある。」と報じています。

 この記事の中で、九州大学の吉岡斉教授は「(ほぼ完成している)島根3号機もあり、中電は電力の供給力に困っていない。なぜ上関の計画を進める必要があるのか説明がいる」とコメントしています。

 原発を再稼働すれば、計算上わずか6年で、全ての原発の使用済み核燃料の貯蔵プールは満杯となりあふれ出します。

 処理方法のない「核のゴミ」という点から、原発の再稼働、新増設の行き詰まりは明瞭です。

 星新一さんの「ボッコちゃん」の文庫版の初版が発行されたのは昭和46年です。

 全国の原発が建設ラッシュの頃でしょう。

 地方に建設された原発に貯蔵された「核のゴミ」の問題は何一つ解決されていません。

 その上、6年前に東京電力福島第一原発の事故が起こり、「収束」はほど遠く、8万1千人もの人々が避難生活を強いられいます。

 「核のごみ」は都会の空からいずれ降ってくるという星新一さんの46年前に書かれたショート・ショートは、SFではなく、私たちの現実社会に突きつけられた棘なのではないでしょうか。

 原発再稼働・新増設はすべきではありません。上関原発は作るべきではありません。

 これ以上「核のゴミ」を増やさないことが大切です。

 そして、「原発ゼロの日本」を作り、今ある「核のゴミ」問題を国民の総意で解決していきましょう。

 星新一さんが亡くなって今年で20年です。しかし、星新一さんの作品の今日的意義は益々高まっていると言えます。

 星新一ファンの皆さん好きな作品をお教え下さい。

 原発再稼働、原発新増設について皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

 

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