京都大学総長の山際壽一さんと旭川市立旭山動物園前園長の小菅正夫さんの対談集「ゴリラは戦わない」を読みました。
山際さんは、ゴリラ研究の世界的権威で、時々メディアに登場されます。
風貌や発言の内容に憧れた一人で、是非、著書を読んで見たいと思っていたところ、新書で対談集が出版され、一気に読みました。
山際さんは、こう語ります。
「ゴリラが、ニホンザルやチンパンジーと違うところというのは、相手の出方を待つところなんですよ。その間の取り方が、人間よりも長い。頭の中でもの凄く考えていると思うんですよ。だからすぐ行動に出ない。相手がどうするかということを予測しながら考えている節がある。こっちが仕掛けをして、何かをやらせようとしても、最初はやらないわけです。」
「人間とゴリラの違い、例えば相撲は力士はぶつかりますね。でも、ゴリラはドラミング(ゴリラが両腕で胸を叩くこと。)をしてもぶつからない。ドラミングは、ぶつからないための『架空の闘争』なんですよ。」
「そもそも負けるという観念、あるいは社会的なルールというものがない。それはつまり、勝つという観念や社会的ルールもないわけですよ。負けるという観念があれば、勝つという観念があるわけですよ。でもゴリラはそれはない。我々人間は負けまいとする行為を見て、こいつは勝とうとしていると思ってしまう。でも『負けまいとする姿勢がとても立派だと感じる心』は『勝とうとする、あるいは勝った者を称賛する心』よりも強いんじゃないかと。」
「勝つ構えと、負けない構えというのがある。勝つ構えというのは、パワーで回りを威圧しなくてはいけない。そうして相手を屈服させる。すると、相手との間に距離ができるわけですよ。さらに勝ち続けるためには、いつも自分の力を見せつけて、相手を屈服させる構えを続けていなければならない。そうすると、相手はどこかで抑圧や恨みを感じて、自分を負かそうするかもしれないし、去っていくかもしれない。その不安がいつも付きまとうわけですよ。だから勝者は孤独になるわかです。」
「でも負けないとする気持ちというのは、相手を押しのけることにならないわけです。相手と同等になるということだから、逆に友達を作ることになる。相手に構えさせない。それがゴリラなんです。『対等』ということが重要で、いずれかのゴリラが自分の上に立とうとすると、それを抑えようとする。『お前はそんなに飛び出してはいけないよ』と。」
「人間がそれを見て、『カッコいい』と思うのは、我々人間の社会もそういう道を歩んできたからだと思うんです。」
日本共産党の第26回党大会決議は「20世紀におこった世界の最大の変化は、植民地体制が完全に崩壊し、民族自決権が公認の世界的な原理となり、100を超える国ぐにが新たに政治的独立をかちとって主権国家になったことにあった」「これは、まさに『世界の構造変化』だと強調し「今日の世界の特徴は、この構造変化が、世界の平和と社会進歩を推進する力として、生きた力を発揮しだしたところにある」ことを解明しました。
更に、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序」の担い手として、南アジア諸国連合(ASEAN)と中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)という平和の共同体が形成され、発展していることに注目しています。
これら二つの地域共同体に共通しているのは、「あらゆる紛争を平和的に解決するという立場を堅持していること」「大国の介入を許さず自主性を貫いていること」などです。
山際先生はおしゃるように、「あらゆる紛争を平和的に解決する立場」が世界に広がっていることは、ゴリラの世界での「勝か構えではなく、負けない構えの広がりが人間の社会にも広がっていることを意味していると思います。
トランプ米大統領がアメリカ第一を言い、安倍総理が日米同盟第一と言う。
これらの動きは、山際先生が指摘をする「勝か構え」で回りを威圧することを意味するものだと私は危惧します。
「勝つ構え」を際立たせる世界から「負けない構え」で相手を「対等」に捉える世界への流れが更に加速されるよう私も力を尽くしたいと思いました。
山際先生は、ゴリラに接して「体の大きさもそうだけれども、精神的にも人間を超えているなと実感した。」と述べておられます。
「ゴリラは戦わない」とうゴリラの平和主義について、山際先生の著作から更に学んでいきたいと思いました。
「負けない構え」深い言葉です。
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