ブログ

今年1月~6月 自宅で死亡した一人暮らしの人は、全国で3万8330人、山口県で618人

 3日、毎日新聞に、わが母校である日本福祉大学の斎藤雅茂健康社会研究センター長が「尊厳ある孤立死」へと題して、インタビューに次のように応じました。
 「死んでもだれにも気づかれない、孤立死はなにが問題なのか。無知からくる、悲惨なものだという決めつけも強くあるが、高齢化が進み、単身世帯も増えるなかでは、すでに当たり前のことになっている。防止策ばかりに偏るべきではない、と言う日本福祉大学教授で、同大健康社会研究センター長の斎藤雅茂さんに聞いた。Q何が問題なのでしょう。A誰にもみとられることなく亡くなり、腐敗したり、白骨化したりしてから発見されるしは孤立死や孤独死と呼ばれます。孤立死が起きると、遺体の埋葬・火葬の手続き、遺品・残余財産の処理、起きた住宅や近隣の資産価値への悪影響といった社会的なコストはかかります。このため対策が必要だという意見も分かります。一方で、最期を迎えたい場所を尋ねると『自宅』と言う人が最も多いのです。住み慣れた場所で最期を迎えること自体は問題とは言えません。問題なのは、死後長期にわたって放置され、人としての尊厳が保たれた最期とは言いがたい形で発見されるに至る、生前の社会的な孤立状態です。Qセンセーショナルに報じられることもありました。A悪臭で発見された人は、平均死後15日程度経過しているという報告があります。センサーなどを使えばそれより早く、場合によっては死後すぐに発見することも可能でしょう。ただ、社会的コストを最小化するために、1日でも早く遺体を発見・通報さえできればいいというわけでもないと思います。生前に人付き合いがとぼしくなっていて、死んだ時ですら誰にも見つからず、しばらく放置されていることが問題の本質です。孤立死に伴う社会的コストだけではなく、孤立死につながる生前の孤立の問題を考えるべきです。Q防止策ばかりに偏っても、ということですね。A早期に発見・通報するシステムそのものは悪くありません。それによって助かる命もあります。高齢者向け住宅などでは、トイレの水が一定時間流れないと通報する仕組みもあります。しかし、社会的なコストの高さを理由とした一部のリスクの高い人たちの早期発見という発想は、ともすると社会的な排除につながりかねません。『見守りか監視か』という議論もあります。本人の尊厳や意向を第一にした慎重な議論が必要です。Q今年初めて、孤立死についての警察庁調査がありましたが、まだ全体像ははっきりしたわけではありません。A孤立死はデリケートな数値であることは確かですが、まず、実態を把握することは、政策を作るうえでも、国民の共通認識を作るうえでも必要です。まだ社会問題としては十分認識されていないのかもしれません。Q行政の対策は防止策になりがちです。A孤立死に至る人がとても少なければ、一部のリスクの高い人たちを重点的にサポートして発生を防ぐ方法も成り立ちます。しかし、孤立死はそれほどまれなケースではなさそうだということも分かってきています。ハイリスクな人はいますが、孤立死はハイリスクではない人にも起こります。孤立死を減らすためには、生前に孤立しにくい社会にすることが大切です。Q個別の対策以外ではどうすべきでしょうか。A難しい人たちをどう支えるかが大切ですが、私はそれだけでは孤立死の数は減らないと思っています。やはり環境を変えることが必要です。近年の日本は人とつながりにくい社会になっています。いろんな人がいろんな場所でいろいろ人と付き合える社会になるべきです。Qよく地域社会のつながりが失われたと言われます。Aたしかに、自治会の加入率などは低下しています。一方で、ボランティア活動やスポーツクラブなどに参加する高齢者、働いている高齢者は増えています。かつての地域社会に戻すことは難しいでしょうが、つながりが失われたかというと、必ずしもそうではありません。地縁でなくとも、みんなが孤立しにくい社会はありえます。そうした社会が、結果として孤立死の減少にもつながるのではないでしょうか。Q専門家の役割はどうでしょう。A政府の政策もそうですが、ともすると孤立対策は一部の深刻なケースに焦点があたりがちです。それはそれで大切なのですが、孤立死のように発生の規模が大きい場合は、個別のケースに対応するだけでは不十分です。政策がリスクの高い人だけ把握すればいい、という方向に傾かないように注意喚起するのが専門家の役割かもしれません。」
 警察庁捜査第一課が今年8月に発表した「警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者~令和6年上半期(1~6月)~暫定値」によると、警察取扱死対数が、10万2965人で、その内、自宅において死亡した一人暮らしの者が3万7227人、その内、65歳以上が2万8330人でした。
 山口県は、警察取扱死対数が1253人で、その内、自宅において死亡した一人暮らしの者が、618人、うち65歳以上が485人でした。
 県内で、これほどの数の一人暮らしの方々が自宅において死亡しておられる事実を初めて知りました。
 斉藤教授が指摘するように「尊厳ある孤立死」が実現する社会にするためには、リスクが高い人だけの対策ではなくリスクの低い人に対する対策も同時に行っていく必要があると感じました。
 県警に対して、これだけの数の一人暮らしの人が自宅で亡くなっておられることにどう対応していこうとしているのか質していきたいと思います。
 孤立死に対する皆さんのご意見をお聞かせください。

トラックバック

コメントはまだありません

No comments yet.

コメント

コメント公開は承認制になっています。公開までに時間がかかることがあります。
内容によっては公開されないこともあります。

メールアドレスなどの個人情報は、お問い合せへの返信や、臨時のお知らせ・ご案内などにのみ使用いたします。また、ご意見・ご相談の内容は、HPや宣伝物において匿名でご紹介することがあります。あらかじめご了承ください。